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会社設立事例/不信感から電気工事会社を独立

※本人特定されないように一部変更している部分もあります。

  • 会社設立時の年齢:50代
  • 会社設立前はお勤めの方、個人事業主どちらか?:勤め
  • 会社設立前の仕事内容:電気工事
  • 会社設立時のメインの事業内容:電気工事
  • 自己資金はいくらあったか?:100万円
  • 合同会社と株式会社どちらにしたか?:合同会社

独立前に電気工事会社での不信感

私たちは様々な会社設立のサポートをしてきておりますが、大抵は「お金を稼ぐため」会社を作るという理由がほとんどです。

しかし、今回のお客様は少し事情が異なります。

私がお客様と初めてお会いした時、顔色がすぐれないようでした。

詳しくお話を伺いますと、役員として現在電気工事会社で働いているものの、社長からの圧力や経費精算の拒否、保有株数から閲覧する権利があるにも関わらず決算資料の開示拒否など、違法な労働環境の中で働かれていたのです。

お客様はそのような環境の中でも、精力的に電気工事会社を成長させるために仕事に打ち込み、たくさんの信頼を勝ち得てこられ、その成果があってこそ会社が回っている中、社長からの嫌がらせにより不信感が募ります。

このような状況を打破するため、今回お客様ご自身が独立して社長となり電気工事会社を設立して新たな労働環境を作って働いていきたいと決意され、この度弊社へご相談されました。

取引先の信頼獲得していたからこその電気工事の独立

前述のとおり、お客様はお勤めの会社で悪質な嫌がらせを受けており、電気工事にかかる材料や交通費などの費用の精算を拒否されておりました。

委託で仕事を請け負っているわけではないため、会社が負担すべき費用を肩代わりし、負担が次々と圧し掛かっておりました。

このままでは自分の貯金を食いつくしてしまう所まで追い込まれてしまい、正常な会社を立ち上げることとしました。

独立にあたり、現在の取引先との関係が続くか心配でありましたが、お客様の仕事ぶりを知っておられるので、それぞれの取引先にこっそり独立の相談をしたところ、そのままお客様と継続して取引ができることになったそうです。

電気工事の独立で必要な課題。それは社会保険

電気工事もですが、建設業の独立には様々な壁があります。

まず、社会保険の加入が無ければ下請けとして仕事を請ける事ができない場合があります。

設立時からすぐに仕事を始めるにあたり、社会保険の手続きを行わなければなりませんが、そのためには早急に役員報酬の決定が必要になってきます。

なぜなら社会保険は給料(今回の場合は役員報酬)が支払われたときに初めて保険加入が成立するものだからです。

保険に加入できないと下請けに入る事ができません。

急ピッチで試算表を作り、ご納得いける役員報酬額をはじき出し、急いで加入手続きを行いました。

緻密なスケジュールをお客様そして奥様協力の上、何とか下請けの仕事に入ることができました。

役員報酬は開業から3か月以内に決定しますが、設立月は役員報酬を決定しないことが多いです。

役員報酬は1度決めたら、次の会計年度まで基本的に変更しません。

いきなり役員報酬を決定してしまい、実際に事業をスタートしたら、思っていた以上に経費がかかった・かからなかった、または収入が少なかった・多かったという理由で役員報酬を変更すると、経費として認められない部分が出てきてしまい、余分に税金を払うことになってしまいます。

そのような事にならないように、一旦事業を走らせてから改めて試算表を作成してから決定する場合が多いです。

また、社員数が少ない中小企業に認められている「源泉所得税の納期の特例」という仕組みがあります。

源泉所得税は役員社員の報酬、給与を払う際に預かり金として一旦会社の会計に入ります。

支払った翌月10日までに納付する必要がありますが、中小企業の場合、この預かり金を手元に残して運転資金として使いたい所もあります。

この申請を行うと、給与支払の翌月に納付しなければならない預かり金を、1~6月分を7月10日まで、7~12月分を1月20日までにまとめて納付することができます。

納付の手続きを少なくできるほか、預かり金が1月5万円だとした場合、最大で30万円分を資金としてプールすることができます。

しかし注意いただきたいのは申請月はこの特例の適用外になってしまいます。

そのため、事業開始月に給与を支払うと、最初の1月分は納付が必要で、その分プールできる金額も減ってしまう事になります。

このように、事業開始月から役員報酬を決定するというのは、あまり得策ではないものの、業種によっては決めざるを得ない場合もございます。

建設業許可は取得せずに500万円未満の電気工事で貯蓄する方針

電気工事の建設業許可を得るための資産要件は、一つの壁です。

建設業として許可を得ると500万円以上の工事が可能となりますが、創業時に500万円以上の資本金があること、または許可申請時に純資産が500万円以上でなければなりません。

創業時から建設業を取得するのに、ここを忘れて資本金が不足し申請ができず、なんともう一度会社を作り直す、なんてこともあります。

お客様はこれまで会社から経費精算を拒否されて、お客様ご自身の貯金を使って立て替えており、500万円の資本金を用意することが難しい状況でした。

そのため、一旦500万円未満の少額の工事や他社の下請け、サポートを行い業務を行っていくこととし、資金が貯まり次第建設業許可を申請することとしました。

裁判等で請求することも検討いたしましたが、心理的に限界も近く、一刻も早く会社から離れたいとのことで、立替分については棄捐し、株式のみ社長へ売却することとしました。

お客様ご自身は、建設業許可を取得するために必要な各種資格は保有しており、あとは資金が貯まる日を待ちます。

独立数ケ月後に目標の500万円が貯まる見込みに!

会社の走り出しの時は、どうしても仕事が入ってこなくて資金難となりやすいですが、幸いな事に、お客様の前職の取引先と継続して関係が構築されているため、独立直後からどんどんお仕事が入り、以前よりもお客様は精力的に働き、数か月後には目標だった500万円貯まる見込みとなりました。

現在は電気工事の建設業許可取得手続きのための準備も並行して行っており、順調な滑り出しをしております。

弊社としても喜ばしいかぎりですが、なによりご自身で起業という道を開かれてからお客様の表情が明るくなった事にとても達成感を感じております。

電気工事で独立をお考えの方へ

このような会社設立の事例というのは珍しいものではありません。

心機一転、新たな環境を作り、理想の職場をつくることが切っ掛けで、売上が伸びていった会社もございます。

職場から脱出し、独立するか悩んでおられましたら、一度弊社までご相談ください。

記事監修者の情報

税理士法人
経営サポートプラスアルファ

代表税理士 高井亮成

保有資格:税理士・行政書士

税理士の専門学校を卒業後、会計事務所に入社。
その後、税理士法人に転職をして上場企業や売上高数十億円~数百億円規模の会計税務に携わる。

現在は税理士法人の代表税理士として起業・会社設立をする方の起業相談からその後の会計、決算、確定申告のサポートを行っている。