既存の会社だけではさまざまな問題があり、それを解決するために別会社を設立するケースがあります。
しかし、別会社を設立するのは大変なことであり、躊躇する人もいるでしょう。
そこで、この記事では別会社を設立するメリットやリスク、作り方、注意点まで詳しく説明します。
別会社の定義
別会社とはそもそも何なのか定義について説明しましょう。
別会社の明確な定義はない
法律上、別会社という呼称は存在していません。
そのため、別会社という言葉は便宜上用いられているだけです。
実際に別会社という呼称を使う人によって、どのような意味で用いているのかは異なります。
明確な定義がないことを意識して別会社という言葉を使いましょう。
既存の会社とは別の名義で活動する会社という定義
基本的に別会社という言葉が使われる際には、既存の会社とは別の名義で活動している会社という意味で用いられていることが多いです。
すでに会社があり、それではさまざまな問題があるため、別の名義で会社を設立することになり、それを別会社と呼びます。
子会社を別会社と呼ぶこともある
子会社を別会社と呼ぶケースがあります。
子会社は法律で明確な定義がある言葉です。
会社法における子会社は、その他の会社が経営を支配している法人と定義されています。
たとえば、親会社が総株主の議決権の過半数を有している株式会社は子会社です。
別会社を設立するとは、子会社を設立するという意味であることが多いです。
別会社を設立する理由
なぜ別会社を設立するのか理由について説明しましょう。
節税できる
節税のために別会社を設立するケースがあります。
別会社を作り利益を分散させることで節税するのです。
年間の売上を分散させることで消費税の免税を受けることもできます。
別の事業を始めるため
別の事業を展開するために別会社を設立する場合があります。
事業ごとに会社を分けることで事業の成果や責任を明確にできるのがメリットです。
事業の管理がしやすくなり、経営の意思決定のスピードも上がるといった効果も期待できます。
ワンマン経営を抑制するため
会社が1つではワンマン経営になるケースがあります。
組織が大きくなると1人の代表がすべての意思決定をするのは困難になるでしょう。
そこで、別会社を設けることで権限を分配します。
たとえば、事業ごとに別会社を設立して適切な人材を各所に配置することで適正な意思決定が行われるようになるのです。
リスクを分散するため
会社経営においてさまざまなリスクが存在します。
そのリスクを分散するために別会社を設立するのです。
別会社で問題が起きても、既存の会社への影響を抑えられます。
たとえば、事業ごとに別会社を設立することで、特定の事業で大きな損失が生じたとしても他の事業が損失を被ることはなくなるのです。
別会社を設立するリスク
別会社設立のリスクについて説明します。
税務署から指摘される可能性がある
別会社設立で税務署に疑われる可能性があります。
故意に税金を逃れようとするために別会社を設立したと疑われるからです。
別会社を設立したことですぐに税務調査を受けるケースもあります。
別会社を設立するならば、税務署に疑われないように注意しましょう。
設立コストがかかる
別会社を設立するにはさまざまな費用がかかります。
まず設立登記の手続きを進めるための法定費用が発生するのです。
他にも新しい事務所を用意して設備を整える費用や人件費なども発生します。
別会社を設立することで資金的に大きな負担がかかるのはリスクです。
ランニングコストが増える
別会社は設立すれば終わりではなく、その後も経営を続ける必要があります。
会社を経営する際には多くのランニングコストが発生するのは大きな負担となるでしょう。
事務所や駐車場などの賃料、資材や材料などの費用、人件費、広告宣伝費など多くの費用がかかります。
別会社と損益通算することは難しい
別会社を設立したからといって節税のために損益通算することは難しいです。
別会社と損益通算するためには完全子会社でなければいけません。
親会社が子会社の株式を100%保有している場合は、全体をひとつの法人とみなすことができ、損益通算できるのです。
完全子会社でない別会社と損益通算することは不可能と考えましょう。
経営判断のスピードが鈍る可能性がある
別会社を設立すると経営判断のスピードが鈍る恐れがあります。
別会社の状況についてタイムリーに把握することが困難だからです。
全体の状況を把握してから意思決定する必要があるため、経営判断が遅れるリスクがあります。
別会社の作り方
別会社を設立する方法を紹介します。
事業の関連性がないまったく別の会社を設立する
既存会社とは事業の関連性がまったくない別の会社を設立するという方法があります。
事業の多角化を図る際に効果的です。
この場合は、取締役を兼ねたときのリスクも少なくなります。
互いの事業が競合する心配がないからです。
完全子会社を設立する
親会社が100%株式を持つ完全子会社を設立するという方法があります。
完全子会社ができれば損益通算することができ節税のメリットが大きいです。
完全子会社によりリスク分散ができ、意思の疎通もしやすくなり、責任の範囲が明確になるといったメリットがあります。
分社化する
既存の会社から事業を切り離して別会社化することを分社化といいます。
分社化の方法は会社分割や事業譲渡の2種類です。
会社分割は新設会社に事業を継承させる新設分割と、既存の会社へ事業を継承させる吸収分割の2種類があります。
事業譲渡は他の会社に事業の全部または一部を譲渡することです。
会社分割の方が事業譲渡よりも手続きは簡素です。
他社を買収する
他者を買収して別会社とする方法があります。
買収には敵対的買収と友好的買収の2種類があります。
敵対的買収は相手の同意を得ずに買収することです。
友好的買収は事前に同意を得て条件を交渉した後で買収します。
買収の場合は既存の会社と制度設計が大きく異なるため混乱が生じやすいのがデメリットです。
買収したことで優秀な人材が離職するケースもあります。
別会社を新しく設立する際のポイント
別会社を新しく設立するためのポイントを紹介します。
法人が発起人となり会社設立できる
会社設立では法人が発起人となることが可能です。
そのため、既存会社が法人として発起人となり別会社を設立できます。
この場合は新しくできた会社は完全子会社になるのです。
親会社と子会社は事業目的の同一性が求められる
発起人が法人となり子会社を設立する際には事業の同一性が求められます。
事業の目的がまったく異なっているのに親会社と子会社の関係になるのは不適当であるとみなされるからです。
親会社と子会社の事業目的が異なっていると定款の認証を受ける際に公証人から否認されるケースもあります。
親会社の監査役が子会社の役員になれない
子会社を設立する場合は、2つの会社で取締役を兼ねるケースがあります。
その際に注意するべき点は、親会社の監査役が子会社の役員を兼務できないことです。
監査役は子会社の事業を監査する立場でもあります。
そのため、親会社の監査役が子会社の役員を兼ねるのは、監査役としての職務を果たすために支障が生じるため兼任が禁止されているのです。
別会社の設立方法は通常の会社設立と手続きが同じ
別会社を設立するための手続きは、通常の会社設立と同じです。
発起人を決めて、定款を作成して、資本金の払込みを行い、登記申請の書類を提出します。
別会社の設立で特別な手続きを求められることは特にありません。
別会社を設立する場合の注意点
これから別会社を設立する際の注意点を説明します。
競業避止義務に気をつける
別会社の設立では競業避止義務に注意しなければいけません。
競業避止義務とは、会社の取締役が自己や第三者のために事業の取引をしてはいけないという義務です。
完全子会社の場合は、親会社と利害の対立がないため競業避止義務の適用はありません。
しかし、別会社に第三者の株主が存在するようなケースでは競業避止義務の適用があります。
別会社の事業が既存会社と競合する場合には、競業避止義務に注意しましょう。
租税回避目的の設立ではないと立証できるようにする
別会社の設立が租税回避目的であると疑われると税務調査を受けます。
租税回避行為そのものは脱税とは異なるため、直ちに罰則があるわけではありません。
しかし、租税回避行為は取引が否認されるケースがあり、その結果として多額の税金が発生することがあります。
節税と租税回避行為には明確な区別があるわけではありません。
意図的な仮装や隠蔽、悪意のある行為などが租税回避行為とみなされるのです。
そのため、租税回避目的で別会社を設立したわけではないときちんと立証できる準備をしておきましょう。
別会社の設立が租税回避ではない合理的な理由を用意することが大切です。
別会社の資本金を抑えれば税金が安くなる
別会社の設立では資本金に注意しましょう。
資本金が1000万円を超えると1期目から消費税の課税事業者とみなされます。
また、資本金が1000万円を超えると法人住民税の均等割の金額が高くなります。
特に理由がないならば、資本金を1000万円未満に抑えましょう。
別会社設立で不安な点は専門家のアドバイスを受けるべき
別会社設立にはいろいろな方法があります。
メリットばかりではなくリスクもあり、注意しておくべき点は多いです。
そのため、自分たちだけで別会社設立を決めることはおすすめしません。
あらかじめ専門家に相談をして助言を受けた方が良いです。
そうすればリスクに備えることができ、それぞれのケースに適した別会社の設立方法についてアドバイスを受けられます。
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別会社の設立は専門家に相談しよう
別会社を設立することでリスク分散や節税などのメリットを得られます。
しかし、ランニングコストの増加や経営判断スピードの低下などのデメリットもあるのです。
そんな別会社の設立を考える際には専門家の意見を求めると良いでしょう。
専門家の力を借りて別会社を設立することで、リスクを回避して大きなメリットを得られます。
別会社設立で専門家に相談したいならば経営サポートプラスアルファをチェックしてください。
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