「プライベートカンパニー」という言葉を聞いたことがありますか?
プライベートカンパニーとは、普通の会社と違い、個人の財産管理を目的とした会社のことです。
節税対策にもなるため、近年プライベートカンパニーの設立に興味を持たれる方が多くなっています。
しかし、個人会社の設立というワードは、一見すると複雑そうに聞こえます。
そこで、今回はプライベートカンパニーのメリットやデメリット、設立方法について解説していきます。
プライベートカンパニーとは
近年プライベートカンパニーの設立を考えるサラリーマンが多いですが、プライベートカンパニーについてもう少し詳しく見ていきましょう。
プライベートカンパニーは、事業ではなく、主に個人の資産管理を目的として設立された会社です。
一般の企業と、法的な区別があるわけではありません。
普通の会社と同じ形態を取りながら、不動産投資や小規模事業を行い、企業主の節税や資産獲得を目指します。
会社には、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社と、4種類がありますが、プライベートカンパニーは合同会社の形を取ることが多いです。
小規模での運営に向いており、設立コストも少なく済み、ある程度の信用性も確保できるからでしょう。
プライベートカンパニーを設立するメリット
では、プライベートカンパニーが注目を集めている理由は何なのでしょうか。
プライベートカンパニーを設立することには、主に財政面で大きなメリットがあるのです。
プライベートカンパニーを作ることで期待できる利点を解説していきます。
節税できる
プライベートカンパニーの設立で望める最大のメリットは、節税ができることです。
所得税と法人税の税率の差を利用する
所得税は累進課税制をとっており、収入が多ければ多いほど納めなければならない所得税も多くなります。
また、所得税の税率は、年収額によって明確に定められています。
最も税率が低いのは、年収195万円未満で5%、最も税率が高いのは、年収が4000万円以上で45%です。
年収4000万以上になると、45%以上も所得税を支払わなくてはならないのです。
しかし、近年個人にかかる所得税が上昇の傾向にある一方で、法人税は税率が低くなっています。
所得税の最大税率は45%と、収入の半分近くを納めなければならないことになりますが、法人税の税率は最大でも23.2%です。
これに法人住民税を加えても上限は33.8%と、所得税と比べて大きな差があるのが分かります。
この差を利用し、会社を通すことで所得税の対象となる金額を減らし、法人税の対象にしてしまえば、同じ金額でも払う税金を減らすことができるのです。
家族がいる場合は、家族を役員にすると良い場合も
例えば、プライベートカンパニーでの社長1人の収入が720万円だったと仮定します。
この場合、単純計算すると、所得税の税率は16%となり、所得税の額は約115万円です。
しかし、家族をプライベートカンパニーの役員にすることで、1人分の収入を減らすことができます。
配偶者を役員にし、収入を分けると、1人あたり360万円の収入になります。
すると、1人分の税率は約9.6%、つまり所得税は約34万円です。
2人分でも約68万円と、1人で同じ額をもらった時よりも約50万円も所得税を抑えることができます。
役員にした家族にも、給与相応の仕事をしてもらう必要がありますが、所得税を大幅に抑えることができるというのは大きな強みです。
また、贈与税、相続税の対策にもなる場合もあります。
他にも、支出を会社の経費として計上できるといった利点もあります。
このように、プライベートカンパニーは、財政面で強みを発揮してくれます。
プライベートカンパニーを設立するデメリット
プライベートカンパニーを設立することで期待できるメリットを見てきましたが、もちろんいい点だけではありません。
プライベートカンパニーを設立することによるデメリットもあります。
手間がかかる
プライベートカンパニーを作るときの最大の難点が、設立の手続きです。
合同会社を選べば株式会社よりも手間がかからないとはいえ、設立に法人登記が必要なことに変わりはありません。
法人設立届、給与支払事務所の開始届をはじめとした様々な書類を国に提出する必要があります。
高額ではありませんが、法人登記の費用もかかります。
その他、設立後、運営していくための税理士への報酬、法人住民税など諸経費も必要です。
手間や諸経費を考えると、プライベートカンパニーの設立は全てのサラリーマンが気軽に手を出せるようなものではないことが分かります。
プライベートカンパニーの設立方法
プライベートカンパニーの設立方法を確認する前に、注意点を説明していきます。
プライベートカンパニーを設立する上で、一番気をつけなければいけないことは、本来働いている会社の副業規定にひっかからないようにすることです。
公務員を除いて、一般企業の副業禁止規定には法的な効力はありませんが、今後もその会社での業務を本業としていきたいなら、破らないようにするべきです。
副業禁止規定を回避する方法として、出資者の名義を自分ではなく家族にすることが挙げられます。
特に出資者と経営者が同一である合同会社の場合は、実際に出資したのは自分でも、書類上は家族を出資者にしておくことが大切です。
また、副業禁止規定は会社によって様々ですので、設立前に確認しておくといいでしょう。
では、いよいよプライベートカンパニーの設立方法について見ていきましょう。
1 商号、本店決定
商号とは、いわゆる会社名のことです。
漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、アラビア数字、決められた符号を使って会社名を決めます。
他の会社の権利を侵害することのないような名前にしましょう。
また、実際に法人として登記される住所を決めます。
2 目的を決める
登記簿謄本に登録する事業内容を決めます。
他の会社を参考にしながら、どんな会社なのかがすぐに分かる内容を盛り込みます。
業種により、入れておかなければ認可がもらえない、という条項がある場合がありますので、必ず所轄官庁に問い合わせるなどして確認しておきましょう。
3 資本金、決算日を決める
資本金は、法律上は1円以上あれば会社設立が可能です。
しかし、資本金が1円の会社は信用問題にも関わる上、運営にも心配が残りますので、最低でも事業が軌道に乗り始めるまで持ちこたえるくらいの額にするべきでしょう。
また、決算日を決定します。
資本金が1000万円未満の会社は、消費税の最長2期免除が見込めます。
免除期間が長いほど節税ができますので、免除期間を長くとるため、会社を設立する前月の末日を決算日にする会社が多いです。
なお、決算日は、会社設立後も変更が可能です。
4 書類の準備
発起設立の場合、
- 発行後3ヶ月以内の発起人、取締役の印鑑証明書
- 代表者印
- 定款
- 発起人の決議書
- 就任承諾書
- 払込みの証明書
- 印鑑届出書
- 印鑑カード交付申請書
が必要になります。
5 定款認証手続き(株式会社のみ)
株式会社の場合のみ、上記の書類を公証役場に認証してもらう必要があります。
いきなり行くのではなく、必ず事前に連絡し、日程などについて決めておきましょう。
約5万円ほどの費用がかかります。
6 登記申請
法務局に法人の登記申請を行います。
株式会社の場合は最低15万円、合同会社の場合は6万円の登録免許税が必要になります。
7 届出
登記申請を終えたら、速やかに各種の届出があります。
それぞれ期限がありますので、注意しましょう。
税務署
- 法人設立届書
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
都道府県・市区町村
- 法人設立届書
年金事務所
- 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
このように会社の設立には大きな手間がかかりますし、事情によっては必要な書類が増えることもあります。
法人設立が不安なときは、対応してくれる不動産会社や、プライベートカンパニー専門の税理士に相談しましょう。
株式会社か合同会社か
株式会社よりも、合同会社の方がおすすめだという話がありました。
では、株式会社と合同会社の違いとはなんなのでしょうか?
細かな違いは多数ありますが、出資者が誰かという点が主な違いです。
株式会社は、出資者から資金を調達します。
一方で、合同会社は企業主が出資をします。
株式会社は出資者と経営者が同一でないのに対し、合同会社は同一です。
出資者が複数いる株式会社に対して、経営者が出資する合同会社は小規模、低コストでの運営に向いています。
今後会社を大きくしていくつもりがないのであれば、合同会社の方がプライベートカンパニーに適しています。
しかし、合同会社は株式会社に比べ、社外的な信頼度の点で劣りますので、取引で不利になる場合があります。
自分の目的に合わせ、会社の形を選ぶようにするといいでしょう。
年間の維持費用や資本金の準備
もちろん、プライベートカンパニーで必要な経費は設立費用だけではありません。
会社を運営していくための費用、つまり税金や税理士などへの報酬が必要となります。
税理士の費用はカットすることはできませんが、税金に関しては安く済ませることができます。
法人税は累進課税制度です。
会社の利益が多ければ多いほど所得税は多くなります。
経費調整を行い、利益を低めに抑えれば、払わなければならない所得税も安くなり、年間の維持費用を抑えることにつながります。
税理士の報酬を別にすると、年間で必要なのは最低で法人住民税7万円です。
資本金は、基本的には300万円以下にしておくのがいいでしょう。
資本金が1000万円を超えてしまうと、下請法という法律の対象となり、様々な制約を受けたり、消費税の免除がなくなったりといったデメリットがあります。
また、資本金が300万円以上の企業は商工会への加入と法定台帳の提出の義務が発生し、年会費を払わなければならなくなってしまいます。
もちろん、商工会への加入は、他企業とのつながりができることや商工会主催のセミナーへ参加できることなど、利点もありますが、あくまでプライベートカンパニーとして小規模で運営していくつもりなら無視してもいい程度です。
自分でやるのは難しい?
プライベートカンパニーは個人で運営する会社であるとはいえ、経営についてや経費についてなど、考えなければいけないことはたくさんあります。
他に本業がある人も多いですので、全てを自分でどうにかする、というには無理があります。
そこで、代行会社にお願いする人も少なくありません。
代行会社に依頼するメリット
プライベートカンパニーを運営する上で、個人で全てを運営するのは難しい場合が多いため、それらを代行してくれる会社が存在します。
ここでは、代行会社のメリットを確認していきます。
代行会社の電子定款が使える場合、普通の定款で設立費用を4万円カットできる
会社設立にかかる費用は少なくありませんので、費用をカットできるのは大きなメリットになります。
しかし、全ての代行会社が対応可能というわけではありませんので、お願いする代行会社に確認しましょう。
自分でやる工数がカットできる
本業が忙しい、何をやればいいのか分からないといった方も少なくありません。
代行会社に依頼することによって時間や精神の余裕を保つことができます。
専門家の知見を入れられる
会社運営に慣れているという方は多くないでしょう。
何をどうすれば正解、という明確なルールもない中で会社運営をしていくのは精神的にも参ってしまいますが、すぐに専門家に相談できる環境ならば、困ることはありません。
素人だけでは難しいプライベートカンパニーの経営も、代行会社の力を借りれば負担を少なくすることができます。
少しでも不安な点があるなら、まずは問い合わせてみるのがいいでしょう。
まとめ
プライベートカンパニーとは、主に個人の資産管理のために設立された会社で、合同会社という形をとることが多いのが特徴です。
設立の際には、どれくらいの規模で経営していくのか、どれくらいのコストをかけるのかというようなビジョンを明確に決めた上で、株式会社と合同会社どちらにするかを選ぶといいでしょう。
設立の手続きは少し複雑ですが、専門家や代行会社に頼ることもできます。
設立した後も、素人1人で経営していくのが不安な場合には、大失敗する前に積極的に代行会社に相談し、プロの意見を取り入れるようにしましょう。
うまく運営していけば自分の利益を最大限に増幅させることができるプライベートカンパニーは、資産形成の新しい形として注目を集めています。
少しでも興味があれば、ぜひ専門家に相談してみてください。