グローバル化が進む中、外国人が日本で会社設立を目指すケースも多々あります。
日本側も、外国人の会社設立を歓迎しています。
実際に、2015年に法律の改正が行われており、外国人の会社設立要件が緩和されています。
日本での会社設立を検討している外国人の方に、知っておいていただきたいのが会社設立のための条件や申請の流れです。
これらを理解しておけば、スムーズに会社設立をすることができます。
そこで今回は、外国人が日本で会社設立の条件や申請の流れなどを詳しく紹介していきます。
目次
日本人と外国人で会社設立の申請手続きは変わる?
日本で会社を設立する場合、会社法という法律に従って会社を設立することになります。
会社法における、日本人と外国人の会社設立の申請手続きは、ほとんど変わりません。
日本人とほぼ同じ条件で会社設立ができ、手続きも違いはありません。
その一方で、在留資格が問題になります。
在留資格によっては、日本で経営活動ができないケースもあります。
・日本人と外国人の会社設立の申請手続きは、ほとんど変わらない。
日本で会社を設立するための在留資格
外国人が日本で会社設立をして経営に加わる場合、重要な問題になってくるのが在留資格です。
会社設立ができることと、在留資格が認められるのかは別問題です。
そのため、必要な在留資格を取得せずに会社を設立し、取締役としてビジネスをすれば不法就労にあたってしまいます。
外国人が日本国内で「経営・管理活動ができる在留資格」と「経営管理活動ができない在留資格」があるので、注意する必要があります。
また、活動制限のある在留資格であったとしても、経営管理ビザを取得することで経営・管理活動をすることが可能です。
そこでここからは、外国人が日本で経営・管理活動をする際の在留資格のまとめと経営管理ビザについて詳しく紹介していきます。
設立できる在留資格
外国人が会社を設立し、経営・管理活動ができる在留資格は以下の3つが挙げられます。
- 日本人の配偶者
- 定住者
- 永住者
- 永住者の配偶者
上記の在留資格をお持ちの場合、活動に制限がありません。
そのため、日本で会社を設立し、取締役などに就任して経営・管理活動をすることができます。
設立できない在留資格
外国人で日本の企業に勤めている場合、「技術」「人文知識・国際業務」「企業内転勤」「技能」などの就労ビザの交付を受け、日本に入国していることでしょう。
また、留学生も「留学」というビザの交付を受けているはずです。
これらのビザによる在留資格だけでは活動に制限があり、残念ながら取締役などの経営・管理活動を行うことができません。
そこで、経営・管理活動を行うには、経営・管理ビザを取得することで、日本での経営活動を合法的に行うことができるようになります。
経営管理ビザを取得するには
経営管理ビザを取得する場合、以下の条件をクリアする必要があります。
- 日本国内に事業所を確保していること(住居との兼用はNG)
- 日本に永住権を有する者を2名以上雇用する、又は日本で年間経費500万円以上支払う
- 申請人が資本金500万円以上出資している
- 事業の安定性・継続性を立証することができる
基本的には、これらの条件をクリアしなければ経営管理ビザを取得することは難しいです。
条件からわかるように、ある程度の規模での起業計画でなければ経営管理ビザの取得はできません。
事業の安定性や継続性を考えれば、自然の流れではありますが、なかなか厳しいものでもあるでしょう。
ちなみに、経営管理ビザの前身にあたる「投資経営ビザ」は、法人の設立登記後しか申請することができませんでした。
そのため、会社設立をするも、ビザ取得ができず経営活動ができなかったというケースもありました。
しかし、2015年の法律改正で経営管理ビザとなったことで、会社設立前でも申請が可能となったのです。
・外国人が日本で会社設立をして経営に加わる場合、在留資格が必要。
・就労ビザや留学ビザでは起業はできない。
このため、経営・管理ビザの取得が必要である。
・経営管理ビザの獲得には、かなり大規模な事業計画でないと難しい。
外国人による会社設立の特徴と注意点
外国人が日本で会社を設立するにあたって、注意すべき点はどのようなものがあるのでしょうか。
外国人の起業ならではの障壁もあわせて、各データを参考にしながら以下、3つのポイントに分けて解説していきます。
地域別で見た外国人起業家の割合
日本における外国人起業家の現状を把握するにあたって、在留資格をもつ人、外国人起業家の総数と出身地域の割合を見ていきましょう。
外国人起業家の数は、在留資格の「経営、管理」でカウントします。
在留資格とは、外国人が日本に在留するための入管法によって定められた資格で、「経営・管理」は在留資格のうちのカテゴリーの一つです。
在留資格には就労が認められないカテゴリーがありますが、就労が認められているもののうち、会社の経営を行うための在留資格が「経営・管理」です。
したがって、「経営・管理」の総数をみると、日本国内の外国人起業家の数が把握できる、ということになります。
法務省の2013年12月末版「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表」によると、在留外国人数は合計2,066,445人と記載されています。
在留資格保有者が多い出身地域、国のトップ3は以下の通りです。
- アジア1,676,343人(中国:649,078人、韓国・朝鮮:519,740人、フィリピン:209,183人)
- 南米243,246人(ブラジル:181,317人、ペルー:48,598人、ボリビア:5,315人)
- 北米62,749人(米国:49,981人、カナダ:9,025人、メキシコ:1,927人)
在留外国人の総数2,066,445人の半数をアジアが占めており、そのうち中国と韓国、朝鮮が半数以上となっています。
続いて、数が大きく開いて南米、北米と続きます。
南米では、ブラジルが圧倒的に多く北米ではアメリカの割外が半数以上を占めています。
外国人起業家である「経営、管理」の資格をもつ出身エリアと、国のトップ3は以下のとおりです。
- アジア11,297人(中国:5,057人、韓国・朝鮮:2,918人、パキスタン:759人)
- ヨーロッパ1,022人(英国:226人、フランス:223人、ロシア:144人)
- 北米786人(米国:654人、カナダ:118人、メキシコ:7人)
外国人起業家となると総数自体が大きく減少し、ヨーロッパエリアの割合が多くなっています。
外国人起業家の数は想像以上に少ないですね。
ここでも、多くの割合を占めるアジアエリアの中国、韓国、朝鮮。
飲食業を営むアジアの方が多くを占めているのではないでしょうか。
在留資格の緩和と今後の課題
外国人が日本で起業する場合に直面する障壁は在留資格の取得です。
在留資格を取得する難しさや、今後の課題について以下4つのポイントを抑えつつ解説します。
- 在留資格の「経営・管理」の取得が難しい
- 事務所と常勤職員2名以上の確保
- 在留期間に定めがある場合、融資判断に悪影響
- 資本金500万円の敷居が高い
在留資格の「経営・管理」の取得要件は厳しく設定されおり、取得要件の中の資本金500万円以上という設定をみても、日本人が起業するときの最低資本金1円となっていることから、かなり厳しく設定されていることがわかります。
事務所と常勤職員2名の確保も、言語の壁や人脈づくりなどが伴う障壁の一つです。
言語の問題は、書類作成や自治体、金融機関の窓口などでも障壁となり、日本での外国人の起業の難しさを表しています。
国内の外国人起業における今後の課題は、「経営・管理」の取得要件のハードルを少しでも下げること、言語の壁を無くすなど、異文化に対する理解を進めていくことが挙げられます。
外国人が会社設立をするときに注意すべきこと
会社の設立に欠かせない発起人ですが、発起人が外国人や外国法人である場合、資本金の入金先の金融機関に気をつけなければいけません。
発起人とは、会社設立の際に資本金の出資や定款の作成などの手続きを行う人のことです。
会社設立の手続きとして資本金の払込がありますが、会社の口座ができていない段階では出資金も含めて代表発起人の口座へ振り込むこととなります。
この場合の金融機関は、日本国内の金融機関でなければいけない点に注目です。
発起人が日本国内の金融機関に口座を持っていない場合、例外的に権限を委任し、代表取締役のもつ口座を使うことができます。
代表取締役も口座を持っていない場合は、新たに開設するよりほかに方法がありません。
会社設立の段階で気がつくと余計に手間がかかってしまいますので、発起人と金融機関についてはあらかじめ確認しておきましょう。
なお、外国人が日本の金融期間で口座を作る場合、日本に6ヶ月滞在していて住民票を取得していなければいけません。
外国人が日本で起業しやすい業種
日本では、外国人による起業に厳しい要件を設定していますが、その中でも起業しやすい業種はどのようなものがあるのでしょうか。
以下、4つのカテゴリーに分けて解説していきます。
飲食業
就労に問題のない資格を持っている方以外は、「経営・管理」の資格を取得し、開業しなければいけません。
飲食店は、外国人に限らず日本人でも比較的開業しやすい業種です。
外国人が日本で飲食店を開業するメリットは、日本人に母国の味を提供でき、受け入れられると繁盛する可能性が高いという点です。
食の嗜好がグローバル化している昨今では、母国の味が案外すんなりと受け入れられることも多くあります。
母国の味を日本で楽しめることから、地域に住む同国出身者が集まる繁盛店となること。
日本では、中華料理、韓国料理、インドカレー店などが賑わいをみせており飲食店開業の成功例は多く見られます。
中華料理店やインドカレー店は、繁華街や住宅地などいたるところでお店を見かけますし、韓国料理店は東京の大久保エリアを中心に大賑わいです。
お店が繁盛した場合、店舗を増やしやすいのも飲食店の強みですが、本場の味を提供するため本国より料理人を呼ぶ場合、技能ビザを取得することで日本での就労が可能となります。
営業許可証の取得や、防火責任者、保健所への届出など飲食業ならではの手続きがありますが、日本で起業したい外国人にとって飲食業は魅力的な業種です。
輸出入業、貿易業
近年では母国と日本との間での輸出入業、貿易業として起業する外国人も多くなっています。
扱う商品は多岐にわたり、食料品、衣料品、家具、スポーツ用品のような日用品から金属・非鉄金属のスクラップ、鉱石、中古自動車、中古機械などとなっており、国籍別にみると中国の起業家が多くみられます。
雑多な商品が多く見られますが、外国人が母国と日本の間で輸出入業、貿易業を行うメリットは、母国の名産品を日本で販売できる、為替のレートによっては大きく儲かることができる、という点です。
あらゆる面でグローバル化が進む昨今では、外国の日用品や食品、雑貨など受け入れられる土壌は整っています。
輸出入業、貿易業として成功するためには、その商品に詳しいこと、母国での商品調達ルートを確保していること、が挙げられます。
市場の把握、ターゲットの選定も必要となり、ビジネスセンスが問われる業種ですがしっかりとしたコンセプトがあり、ターゲットの選定ができていれば成功しやすい業種ということができます。
小規模なら個人事業として商売することもできそうですが、個人、法人にしても必要な届出は行いましょう。
語学スクール
母国が英語圏の方で日本語の意思疎通ができ、言語を教える能力を備えている方は語学スクールの起業が適しています。
日本国内では、学生や社会人に限らず、幼児のころから語学学習を受けさせたいという需要が高まっており、語学スクールの起業はトレンドにもマッチしています。
スタンダードな語学は英語ですが、中国語、フランス語、スペイン語などのニーズもあります。
最近ではオンラインスクールが当たり前になりつつありますので、大掛かりな教室を用意する必要がありません。
アナログな紙のチラシに加え、インターネットでの集客もより効果的に使うことができ、運営のやりやすさは以前にまして、簡単になっています。
フランチャイズで教室を運営する手段もあり、この場合、契約内容によっては「経営・管理」ビザを取得も可能です。
語学スクールを起業する外国人が多く存在しますので、差別化を図ることも大事です。
同じ英語を教えるにしても、どのようにユーザーにマッチし、どのような需要に応えていくのか決めておくと軸がぶれない運用を行うことができます。
開業前に、マーケティングとターゲティングをしっかりとしておく必要があります。
不動産業
訪日外国人の増大により、在日外国人向けに不動産を紹介する外国人による不動産業の起業が増えています。
日本人でも、不動産の契約など煩わしく感じることが多々ありますが、外国人であれば尚更のことでしょう。
相手が日本人だと言語の壁があり、手続きは困難を極めますが、英語が通じる外国人なら煩わしさが減り、部屋を借りたい外国人からの需要が見込めます。
賃貸業以外にも、日本で不動産投資を行うために会社を設立したい、という需要も増えてきました。
不動産業を始めるためには、行政庁へ申請して宅建業免許を受けておかなければなりません。
手続きにそれなりの時間を要するため、先に「経営・管理」のビザを取得してその後宅建免許の申請を行うのが良いでしょう。
宅建業免許の申請は、10日ほどかかり、宅建業免許証を発行してもらうまでの審査期間に、おおよそ1ヶ月から2ヶ月程度かかります。
開業したい日が決まったら逆算して他の手続きをスムーズに進めたいところです。
外国人が会社を設立する際の流れと費用
外国人が会社を設立する際の流れ
外国人が日本で会社を設立する際は、以下のような流れになるのが一般的です。
①会社設立の基本事項を決める
②定款の作成と認証
③資本金の振り込み
④登記の必要書類を作成後に会社設立登記の申請
それぞれ、詳しく紹介していきます。
1.会社設立の基本事項を決める
会社設立の基本事項は、主に以下を決める必要があります。
- 会社のタイプ(株式会社や合同会社など)
- 会社名(商号)
- 事業目的
- 出資者や取締役、任期など
- 本店所在地
日本で会社設立をする場合、会社は、会社法によって「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4つのタイプに分類されています。
そのため、どのタイプで会社を設立するのか決める必要があります。
商号は、日本語以外にもローマ字やアラビア数字なども使用OKです。
事業目的や出資者・取締役・任期なども事前に決める必要があります。
本店所在地は、オフィス以外でもいいのですが、経営管理ビザを取得する際の審査に関わるポイントになります。
経営管理ビザを取得するためには、国内に事業所を確保する必要があるので注意してください。
また、同一住所と同一法人名をチェックしておくことも大切です。
同一住所で同じ称号で登録されている場合、登記することができません。
くわしくは下の記事で確認してください。
2.定款の作成と認証
定款は、会社の根本規則のことです。
事前に決めた基本事項が記載されます。
そのため、まずは基本事項を真っ先に決める必要があります。
定款の認証は、公証人と呼ばれる専門職の認証を受けなければいけません。
公証役場にて、認証を受けることができます。
3.資本金の振り込み
定款の承認が済んだら、発起人が定めた銀行口座に資本金を振り込む必要があります。
発起人が個人であれば個人の銀行口座、法人であれば法人名義の口座に払い込みます。
4.登記の必要書類を作成後に会社設立登記の申請
あとは、登記に必要な書類を作成して、会社設立登記の申請をするだけです。
必要な書類については、下記で詳しく紹介します。
また、会社設立登記の申請は、法務局で行います。
設立登記の完了で法的に会社が成立します。
会社設立日は、設立登記申請日です。
会社を起業する際の必要書類
日本で会社を設立するなら、以下の書類が必要です。
- 定款
- 印鑑証明書またはサイン証明書
- 登記申請書類
定款はローマ字を使用しても問題ありません。
印鑑証明書が必要ですが、海外に在住していたり、短期で日本に滞在したりしている方だと印鑑証明書がありません。
その場合、代わりにサイン証明書でもOKです。
サイン証明書は、大使館や領事館で申請することが可能です。
登記申請書類は、機関の構成によって必要な書類が異なります。
この際、外国語で書かれた書類を法務局に提出しても問題ありません。
しかし、日本語訳を必ずつけるようにしましょう。
必要な銀行口座
資本金の振り込みでは、発起人が定めた銀行口座に資本金を振り込む必要があります。
発起人が個人なら個人の銀行口座、法人なら法人名義の口座に振り込みます。
ここで問題になりやすいのが、海外居住者や短期滞在では個人口座の開設が難しいことです。
しかし、2017年の法律改正により、海外居住者でも資本金の払い込みができるようになっています。
以下の3つの方法で払い込みができるのです。
- 設立時の取締役・代表取締役の日本口座に振り込む
- 発起人や取締役が日本在住でないなら、第三者の個人の銀行口座への振込みもOK
- 日本国内にある海外銀行の支店もしくは、海外にある日本銀行の支店の口座
このような振り込み方法があるため、方法を選んで必要な銀行口座を用意するようにしましょう。
日本における会社の形態
日本における会社の形態は大まかにわけて4つに分類され、内容の違いを挙げると「設立費用」「出資者責任」「内部自治」になります。起業するにあたって知っておきたい会社の形態をまとめてみました。
株式会社
日本や諸外国でもっとも見られる会社形態です。日本では、設立にあたって資本金が最低1,000万円必要でしたが、今では1円から設立できるようになりました。
出資者責任が有限なので、万が一の時でも出資者のリスクを軽減することができます。
株式会社は社外の人たちから出資を募ることができ、会社は出資を受けたときに株を発行。
株は、数量に応じて配当金をもらう、経営に参加する権利の証拠となり、多くの株をもっていればそれだけ影響力を行使できます。
会社の規模が大きくなれば株式上場をすることができ、より大規模な資金調達を行うことができる仕組みがあります。
上場ができるのは株式会社だけです。
大規模な資金調達ができ、大きな会社運営ができる株式会社ですがデメリットもあります。
一つに、設立費用が他の会社形態と比べると高いという点です。
そして、株式上場をすると公に会社の状況を公開する義務が生じ、外部からの監視にさらされるということです。
健全な経営を公にできればいいのですが、悪いときも嘘偽りなく公開しなければならず、外部からの声にも応えなければいけません。
公益性と社会的信用を得るためには避けては通れない道となっています。
合同会社
合同会社は設立にかかる費用が6万円と、株式会社と比べて低コストで設立することができ、資本金何円以上という決まりはありません。アメリカではLLCと呼ばれることが多く、日本は日本型LLCという呼ばれ方をされることもあります。
株式会社のように外部から出資を募ることがありませんので、情報の開示を行う必要がなく、「内部自治」をすすめることができます。
出資者が集い、会社を運営していることから全員が「有限責任社員」となり、経営の自由度が高くなっている点が特徴です。
株式会社の株主は株数に応じて議決権を与えられる形で、経営に参画しますが、合同会社の出資者は経営全般に参画できます。
会社から離れる場合は、出資した金額を払い戻ししてもらうことも可能です。
経営者が複数存在するような形態のため、権利関係を定めた定款にて細かく取り決めをしておきましょう。
合同会社は2006年に会社法の法改正によって誕生し、設立が可能となりましたが、知名度と信用度が低く、会社間の取引においては支障をきたすこともあるようです。
このことから、一般ユーザー向けのビジネスを展開している起業に向いているということができます。
合名会社・合資会社
合名合資会社は合同会社の登場によりあまり見かけることがなくなった、会社の形態です。合名会社は株式会社よりも規制が少なく、柔軟な経営ができますが、出資者には無限責任を負うという重い責任があります。
合名会社の社員は債権者から直接請求を受け、責任の範囲は無限です。
一方合資会社は、無限責任を負う出資者と有限責任を負う出資者で成り立つ会社です。
最低2人の出資者が必要となっています。
無限責任社員と有限責任社員が存在しますが、有限責任社員の責任範囲は出資金額の範囲です。
合資会社の無限責任社員は経営の全般に携わることができるのに、有限責任社員は全てに携わることはできないという決まりになっていましたが、新しい会社法により業務執行権限の区別は撤廃されました。
社員の立場の譲渡については、無限責任社員と業務を執行する有限責任社員は他の社員全員の承諾、業務を執行しない有限責任社員については業務を執行する社員の承諾が必要です 合同会社の登場により、あえて合名合資会社の形態を選択することはより少なくなるであろうと見られています。
社団法人・財団法人・NPO法人
3つの法人形態の特徴は、営利を目的としない団体で、株式会社のように株主に収益を分配する目的がない点です。理事の報酬に関しては定款で決められます。
社団法人は理事が報酬を貰いすぎていると、「特別の利益の供与」が該当し、非営利団体としての条件を満たさず優遇措置が剥奪されます。
剥奪されると、非営利団体としての優遇を受けられず株式会社と同じ課税システムが適用される仕組みです。
基本的に営利目的ではないため、報酬を貰いすぎると優遇措置が受けられなくなります。
3つの法人形態には公益性の有無が大事な条件となり、毎年公益認定委員会からチェックを受けます。
チェックポイントは、公正な運営、社会的認知度などです。
NPO法人は行政の許可を得て設立され、社員は10人以上、報酬を受けられる役員の数も決められています。
NPO法人に関しては、より公益性の強さが求められ、ボランティア要素を多く含んだ形態です。
設立に関しては、長い期間がかかり許可を得られるまで、4ヶ月程度を見ておく必要があります。
書類の作成がとても大変なので、行政書士などの専門家へ依頼するのが良いでしょう。
登記申請書類の書き方
登記申請には12種類の提出書類があり、そのうち8種類の書類は必ず提出しなければいけません。提出書類について以下、8項目に分けて解説します。
登記申請書
社名、本店所在地、登録免許税額や添付書類の一覧などを記載する書類です。書式が定められており、記載は簡単です。
登録免許税の額は資本金の0,7%と定められていますが、最低額は株式会社で15万円、合同会社では6万円とされています。
登録免許税は収入印紙で納めます。
資本金の払込証明書
資本金の払込が終わったあとで、登記所にて提出する証明書を作成します。必要な記載項目は、発起人全員の払込が終わった日以降の日付の記載、代表取締役の名前と会社の実印の捺印、払込が終わりましたという文言です。
実際に支払いを行った通帳のコピーを添付しますので、通帳の表紙、裏表紙、通帳の明細の3ページ分のコピーをとっておきましょう。
通帳がない場合は、インターネットバンキングの履歴でも、問題ありません。
定款
紙の定款の場合、公証人による認証済みの定款を添付します。電子定款の場合は、CDRなどの磁気ディスクを提出しましょう。
合同会社の場合、公証人による認証は必要ありません。
定款には、絶対的記載事項と相対的記載事項、任意的記載事項の3つの項目があります。
ルールに則り間違いなく提出しましょう。
登録免許税納付用台紙
登録免許税は登記申請に合わせて収入印紙で納めます。収入印紙を貼り付ける台紙はA4のコピー用紙で問題ありません。
見やすく貼り付けておきましょう。
収入印紙は消印すると無効になりますので、注意が必要です。
収入印紙は郵便局で購入し、価格とおりであれば組み合わせは自由です。
発起人の決定書
発起人の決定書は、本店所在地がすべての発起人の同意の上で決められたことを証明するものです。紙の定款で本店所在地の番地まで含めて記載している場合、発起人の決定書は必要ありません。
代表取締役の就任承諾書
会社の設立、登記の際は代表取締役、設立時取締役、設立時監査役に就く人から「就任承諾書」をもらう必要があります。取締役が1名の場合、取締役が代表も兼ねることになりますので、代表取締役の就任承諾書はなくても問題ありません。
取締役が複数存在し、その内の1名を代表取締役とする場合には、その1名は取締役としての就任承諾書と、代表取締役としての就任承諾書の2枚が必要です。
監査役を置く場合は、監査役の就任承諾書も必要です。
印鑑証明書またはサイン証明書
会社の登記申請の際は、役員全員の印鑑証明書が必要です。取締役会設置会社の場合、代表取締役の印鑑証明書のみ必要です。
印鑑証明書は定款の認証を受ける際にも必要になりますので、事前に取得しておきましょう。
登記すべき事項を記録したCD-RまたはFD
登記すべき事項を記載したファイルを保存したCDR,または書式のテキストを申請書と合わせて、提出しなければいけません。申請書は申請内容の概要を記載する書面ですが、登記すべき事項は実際に登記される内容を記載します。
定款や印鑑証明書に記載されている内容を、間違えず同じように記載しなければなりません。
外国人が会社設立する様々なケース
外国人が個人事業主になりたい場合
外国人が個人事業主になることは可能です。
ただ、日本人が個人事業主になることは容易ですが、外国人が個人事業主になる際は、会社を設立する際と同じ基準を満たし、経営・管理ビザを取得する必要があります。
具体的に、下記の2つの条件を満たしておかなくてはなりません。
- 資金額が500万円以上であること
- 経営者以外に2人以上の日本人の社員が常駐していること
ただ、外国人が個人事業主になる場合は、手続きがあまりに煩雑であるために、実務上会社を設立してしまったほうが良い場合などもあります。
専門家や会社設立代行サービスに依頼し、相談してみるのがオススメです。
取締役が日本人だが、発起人が外国人の場合
発起人が外国人である場合には、銀行口座に注意する必要があります。
資本金の払い込みは、発起人の代表の口座へ入金しなければなりませんが、その際、海外の銀行では認めらない場合があるからです。
このため、外国人が日本の口座を開設するか、発起人を複数人にし日本人の口座に振り込むかの対応をしなくてはなりません。
外国人の会社設立なら代行サービスを
外国人が日本で会社設立をする場合、何かと迷いが多いでしょう。
日本でいう印鑑証明書のような書類や、会社の登記簿謄本になる母国の書類を必要とするからです。
このため、これらの書類が手元にない場合は、母国に取りに戻らなければなりません。
外国人が日本で会社設立する際は、代行会社に頼るのがオススメです。
会社設立の手続きはただでさえ煩雑で、日本人が日本で会社設立するとなっても戸惑うものです。
事業の内容や会社規模によって、登記の方法も変われば、融資の方法も変わります。
確実にトラブルなく会社設立をしたいのであれば、代行会社の利用を検討しましょう。
電子定款の作成ができるためコストも安く、さらに融資のサポートなどまで幅広く受けることができます。
不明点の相談のみも大歓迎ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。