会社を設立して開業する前には、「開業費」について知っておくべきです。
開業費は、上手く処理をすることで節税ができます。
税金対策をするためにも、会社設立の前に開業費について理解しておくべきなのです。
そこで今回は、税金対策につながる開業費のポイントについて紹介していきます。
開業費とは
開業費とは、「開業前の準備活動に要した費用」のことです。
業種によって違いますが、事業をスタートするためには出費が発生するものであり、その費用が開業費となります。
開業費と聞くと、経費というイメージが強いです。
しかし、開業費は経費ではなく、「繰延資産」という資産の科目となります。
開業費が節税になる理由
開業費が節税になるのは、先ほど紹介したように繰延資産になるからです。
繰延資産とは、「会社または個人事業主が支出する費用のうち、支出効果が1年以上に及ぶ資産」のことを指しています。
そのため、開業費は一旦資産の科目で処理し、その後は決算の時に任意の金額を償却して経費にします。
任意の金額を償却できるため、上手く経費計上することで税金対策に利用することができるのです。
開業日後に戻ってくる
繰越資産という資産科目として処理された開業費は、開業日後に毎年の決算の度に任意の金額を償却することができます。
そうすれば、経費として計上されて税金を減らすことができるのです。
これは、開業費が開業日後に戻ってくると考えられます。
開業したばかりで資金の乏しい企業にとって費用負担は少しでも軽減したいものです。
そこで、開業費を活用して節税対策をするのは有効な手段となります。
節税できれば、開業の際の費用が開業日後に戻ってくることになるのです。
開業費の仕分けについて
開業費を計上する場合
開業費は繰越資産として計上できます。
開業日の日付で記帳しましょう。
その際には支出した項目ごとにわけて記入すると良いです。
ただし、開業費の項目がたくさんある場合は、まとめて記入することもできます。
いずれの場合も、帳簿の日付は支出のあった日ではなく開業日にすることが大切です。
記帳する際には、借方を「開業費」、貸方を「元入金」にします。
開業費を償却する場合
決算日になれば、その年の分だけ開業費を経費として計上します。
均等償却と任意償却という2つの方法があります。
均等償却とは、開業費を5年(60ヶ月)で均等に償却していく方法です。
たとえば、開業費30万円で1月に開業して12月末日が決算日の場合には、6ヶ月分の開業費を償却費として計上します。
任意償却は好きなタイミングで好きな金額を償却できる方法です。
任意償却の場合は、最初の年に開業費をすべて一括で償却することもできます。
開業費の償却の日付は決算日です。
借方は開業費償却、貸方を開業費として仕訳します。
・開業費を繰越資産という資産の科目として処理することができる。
・開業費は決算の際に任意の金額を償却していくことができる。
・開業費を上手く経費計上することで節税対策につながる。
開業費に含まれるもの・範囲
開業するための費用が開業費ではありますが、具体的にどの範囲までが開業費に含まれるのかが重要です。
含まれる範囲がわからないままでは、正確に開業費を計上することができません。
そこでここからは、開業費に含まれるもの・範囲について紹介していきます。
開業のための調査
開業費に含まれる範囲としては、開業のための調査も含まれています。
例えば、「市場調査の名目で購入した書籍」や「専門家やコンサルタントなどに依頼した調査費」などは開業費に含まれるのです。
開業するにあたり、必要な調査であれば開業費の範囲内となります。
名刺やデザイン料
開業に必要なものである名刺の作成費用は、開業費に含まれます。
名刺の印刷代だけでなく、名刺のデザインを依頼した場合、デザイン料も開業費です。
開業すれば外部の人と会う機会が増えて名刺が必須となるため、開業費として計上することができるのです。
打ち合わせ費用
開業するための打ち合わせにかかった費用も、開業費の範囲に含まれています。
会議室のレンタルダイヤ打ち合わせの飲食代などは、開業費として計上することが可能です。
ただし、営業をすでに始めている場合には、交際費や会議費などで計上することになります。
あくまでも、開業前の打ち合わせ費用が開業費になるため注意してください。
広告費
チラシや広告などの制作費・広告宣伝費は、開業費に含まれます。
ただし、法人設立後でなおかつ営業開始前であることが条件となります。
営業を開始している場合には、広告宣伝費などになってしまうので注意してください。
接待費や贈答品費
開業するまでの接待費や贈答品費も、開業費の範囲内となります。
開業準備の期間中は、様々な人にあって食事をする機会があります。
また、挨拶するための手土産が必要なケースもあるため、これらの飲食代や贈答品費は開業費に含むことができるのです。
営業を開始してからは、接待費などになってしまうので注意してください。
・開業のための調査にかかった費用は開業費に含まれる。
・開業のために作成した名刺やデザイン料なども開業費として計上できる。
・開業のための打ち合わせ費用や広告費、接待費、贈答品日なども開業費として計上できる。
開業費に含まれないもの
開業費に含まれるものだけでなく、含まれないものも知っておくべきです。
一見すると開業費に思えるのですが、経理上は開業費に含まれないというものもあるのです。
そこで、勘違いしやすい開業費ならないものについて紹介していきます。
10万円以上する機械や設備
1つあたり10万以上するものは固定資産になります。
そのため、機械や設備で1つあたり10万円以上するものは、開業準備に購入したものでも開業費には含まれません。
固定資産は、種類や使い方によって何年で経費にするのかなどが決まっているので注意してください。
事務所・店舗の敷金や礼金
開業するために事務所・店舗を借りる場合、敷金や礼金が必要になります。
敷金・礼金どちらも開業費にはなりません。
まず敷金ですが、資金は撤退時に返却されるものです。
そのため経費にはならず、開業費に含めることができないのです。
礼金は返金されませんが、開業費とは取り扱いが異なります。
礼金が20万円以下の場合は支払手数料となり、20万円以上の場合は繰延資産となります。
仕入代金
販売を目的に購入した商品・材料の代金は、開業費に含めることができません。
販売するための仕入代金については、「売上原価」になってしまうのです。
開業するために仕入れたとしても、開業費には含まれないので注意してください。
・10万円以上する機械や設備は固定資産となるため開業費として計上できない。
・事務所や店舗を借りるための敷金や礼金はどちらも開業費にならない。
・販売のために購入した商品や材料の仕入れ代金は開業費にできない。
開業費の領収書は残しておく
開業費を経費にできる
開業費は経費として計上することができます。
開業のためのさまざまな費用は、事業を始めるために必要な経費とみなせるからです。
領収書を無くしても経費にできる?
領収書やレシートがなくても開業費の経費が認められる事例はあります。
原則としては、すべての経費について領収書やレシートを保管するのが義務です。
それでも、税務署に経費について論理的に説明して認めてもらうことができれば、領収書がなくても経費として計上することはできます。
たとえば、毎月かかっている費用については、直近の経費を基準として過去に発生した経費を推計するという方法は有効です。
クレジットカード明細から経費としてかかった金額を拾い出すという方法もあります。
税理士に相談をすれば、領収書なしで経費計上を認めてもらうためのアドバイスをもらえるでしょう。
ただし、領収書がなく経費として認められるのはあくまでも例外といえます。
1回であれば特例として認められても、毎回領収書のない経費の計上が認められる可能性は低いです。
また、領収書なしで経費の計上をする際には、実際よりも大きな費用を経費にするのは避けましょう。
それでは脱税になるからです。
少し保守的に計上することで脱税を避けられます。
・開業費を経費として計上するためには原則として領収書やレシートが求められる。
・領収書をなくしたとしても税務署にきちんと説明することで経費として認められる事例がある。
・領収書なしで計上する際に実際にかかった費用を上回る金額を経費として計上すると脱税とみなされる。
開業費の決算方法
開業費の決算方法ですが、繰延資産なので「5年で均等償却」もしくは「任意償却」のどちらかとなります。
会計上は5年で均等償却なのですが、税法上は任意償却です。
節税のことを考えるなら、任意償却を選択するのが得策です。
毎年の償却額の下限が設けられておらず、しかも「5年経過後に未償却残高を必要経費に算入できない」などの規定がありません。
そのため、償却しない年や全額償却する年があっても問題ないのです。
ですから、利益と相談しながら上手に償却していくことで、有効的な節税対策を行うことができます。
開業前に支払った経費の仕訳例
開業前に支払った経費の仕訳ですが、帳簿付けは明細ごとに入力するのが基本です。
また、領収書などは保管しておくようにしましょう。
開業前に支払った経費の仕訳は、以下の通りです。
▲開業する前に事務用品を10,000円、机20.000円、椅子20,000円を購入の場合
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
開業費 | 40,000円 | 元入金 | 40,000円 | 文房具、机、椅子購入 |
開業前であるため、事業用の資金がありません。
そのため、貸方勘定科目では「現金」ではなく、「元入金」という項目を使って仕訳をする必要があるので注意してください。
ちなみに、決算で開業費を計上する仕訳は以下の通りです。
▲決算で開業費を全額計上した場合
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
繰延資産償却 | 40,000円 | 開業費 | 40,000円 | 償却額 |
任意償却を選ぶことで、開業費は自由な金額で経費計上することができます。
上手に経費計上して、節税に活かしましょう。
開業費として認められるのはいつまでか?
開業費として認められるのは何年前までの支出なのかですが、実は決まっていません。
「開業までにかかった費用」となっているだけであり、何年前の費用まで認められるのかは決まっていないのです。
そのため、数年前の費用でも開業に使った費用だと証明できるのであれば、開業費に含むことができます。
ただ、実務的には何年も前のものを開業費にすることは少ないです。
少し前の費用を開業費として処理するなら、開業のためにかかった費用であることを説明できるようにしておくべきです。
・開業費は「5年で均等償却」あるいは任意償却という方法で償却できる。
・節税を目的とするのであれば開業費を任意償却した方が得策。
・何年前までの支出が開業費として認められるのか明確なルールは存在しない。s
経営サポートプラスアルファで会社設立
会社設立の前に、開業費について知っておくことで節税に役立てることができます。
会社を運営していくのは資金が必要であり、できるだけ税金対策をしていくことが重要です。
節税のコツやテクニックを駆使することで、会社にとってプラスになります。
弊社・経営サポートプラスアルファでは、会社設立のサポートに加えて税金対策についても提案・アドバイスをすることができます。
これまでの経験・ノウハウから、会社の設立から税金対策についてもサポートしているのです。
会社設立や税金対策などにについて不安・疑問がある場合、お気軽にご相談ください。