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商工会議所を使い倒す!~商工会議所と、商工会議所の開業融資を銀行員が解説

商工会議所を使い倒す!~商工会議所と、商工会議所の開業融資を銀行員が解説

「商工会議所で開業融資を受けるにはどうすればいいか?」

「商工会議所に相談するのと、直接自分で申し込む場合ではどちらが有利?」

「そもそも商工会議所ってなに?」

開業に必要な資金を調達するとき、商工会議所を利用することができます。

そこで今回は、商工会議所と開業融資について、融資を審査する銀行員が解説します。

開業や、そのための資金調達を検討している人はぜひ参考にしてください。

商工会議所とは?

商工会議所は民間の経済団体ですが、商工会議所法に基づき設立された認可法人として、公的な側面も持ち合わせています。

主に中小企業の法人、個人事業主が会員として加盟し、商工会議所は会員のためにさまざまなサービス(後述)を提供しています。

古くは鎌倉時代の「座」や江戸時代の「株仲間」にはじまり、その後の明治時代に伊藤博文、大隈重信が主導し、渋沢栄一が設立した「東京商法会議所」が現在に続く商工会議所の起源となります。

商工会議所と商工会

商工会議所と似た組織に「商工会」があります。

商工会議所は「市」などの都市部、いっぽうの商工会は「町村」に置かれています。

ほかにも根拠となる法律の違い(商工会議所は商工会議所法、商工会は商工会法)などもありますが、その基本は同じです。

最近の市町村合併などの関係で、一部の例外はありますが、市なら商工会議所・町村なら商工会という棲み分けです。

この記事では、商工会議所について様々な解説をしていきますが、基本的には商工会にも通じると考えて結構です。

商工会議所のサービス

商工会議所は事業者のために様々なサービスを提供していますが、主な2つを解説します。

1.経営支援活動

事業経営に関する相談や、融資制度の案内、また各種の交流会などで、企業をサポートしています。

特に創業者に対しては、多角的な支援を行っています。

【例】創業に必要な知識を学ぶ「創業・起業セミナー」「創業ゼミナール」「創業塾」や創業者同士の「創業者交流会」の開催(東京商工会議所の場合)

2.地域振興活動

観光やビジネスなど、その地域に適した行事や催事などを主催するなどで、事業者の支援にとどまらず地域経済の活性化に向けた活動をしています。

商工会議所の開業融資とは?

次に、商工会議所の開業融資について解説します。

商工会議所は融資をしない

「商工会議所の開業融資」とありますが、金融機関ではない商工会議所は融資をしません

しかしながら、商工会議所の会員事業所などから融資の相談を受けた場合に、特定の融資商品への申込みをサポートしてくれます。

これらは「提携」や「斡旋(あっせん)」と呼ばれます。

「斡旋」と聞くと、融資あっせん詐欺や、悪徳政治家の違法な口利きなどの報道で悪いイメージを持つ人がいるかもしれませんが、商工会議所の斡旋は適法で問題ありません。

もちろん融資のあっせんなどで費用や手数料などは必要ありませんので安心してください。

商工会議所の開業融資~主な融資制度

一例として、東京商工会議所の融資制度を紹介します。

<商工会議所の開業融資~東京商工会議所の場合>

◆融資の名称:創業支援融資保証制度
◆東京商工会議所と東京信用保証協会の提携融資(信用保証協会融資)
◆融資額は最大2,500万円
◆無担保(原則)
◆東京商工会議所が計画書作成から起業後まで支援
◆東京商工会議所が実施する『創業計画審査会』で創業計画の「認定書」を3ヶ月以内に授与された事業者
◆『創業ゼミナール』を受講し、「修了証」の授与から1年以内の事業所

このように、商工会議所の経営支援サービス(前述)を利用することで創業融資の申し込み資格を得ることができる形態が特徴の一つです。
創業支援融資保証制度

商工会議所の開業融資~審査のポイント

商工会議所の開業融資における審査のポイントは、「商工会議所がどれだけ背中を押してくれるか?」という点です。

繰り返しになりますが、商工会議所自体が融資をするわけではなく、あくまで融資を斡旋するだけです。

しかしながら、斡旋する以上は商工会議所にも一定の責任が生じます。

万一その企業が破綻した場合には商工会議所にも影響はあるわけで、斡旋とは「この会社は大丈夫だと(商工会議所が)太鼓判を押すから、融資してやってもらいたい」とお墨付きを与えているとも言えます。

私も銀行員として、商工会議所から斡旋を受けた融資を審査した経験があります。

もちろん審査は銀行の基準で行うので、ダメなものはダメなのですが、やはり商工会議所の斡旋がある点は重く、審査に影響を及ぼすことは否めません。

商工会議所を利用するメリット

上述のように、融資の審査にも影響力があるので、この点は商工会議所を利用するメリットの一つだといえるでしょう。

サイトの記事や見出しでは

「商工会議所はいらない」

「商工会議所は資金調達で使えない」

といった内容も見受けられますが、銀行員としてはあまり賛同できません。

その他にも商工会議所を利用するメリットとして

  • 全国の商工会議所会員事業者を結ぶネットワークをビジネスに活用できる
  • 多彩なセミナー、商談会やビジネスイベントを利用できる
  • リゾート施設やスポーツクラブなどの施設を福利厚生に利用できる
  • 共済制度などを団体扱いで利用可能

などがあげられます。

「マル経融資」も利用できるようになる

商工会議所の会員となれば、中小企業にとって有利な「マル経融資」も利用できるようになります。

マル経融資は、商工会議所が推薦することで無担保・保証人不要で融資を受けられる、日本政策金融公庫の融資制度です。

<マル経融資の概要・条件>

◆無担保、保証人不要、信用保証協会の保証も不要
◆融資限度額は最高2,000万円
◆返済期間は運転資金7年以内(据置1年)設備資金10年以内(据置2年)
◆融資利率は1.23%(2022年4月1日現在)
◆税金を延滞なく納めている
◆商工会議所の経営指導を受けて事業改善に取り組んでいる

 

商工会議所を利用するデメリット

商工会議所を利用するには、商工会議所に加入し、加入するための費用が必要になります。

法人の場合、入会金3,000円(初年度のみ)と年会費(資本金500万円未満は15,000円・資本金10億円以上は24万円と、資本金等により異なる)が必要になります。(東京商工会議所の場合)

年会費などの費用に対し、どこまで商工会議所を活用できるか?が重要です。

ビジネス上の必要性や、地域のつきあいなどで商工会議所の会員になる場合などでは、費用が無駄になるデメリットもあります。

また、各種行事や催事、会議などへの出席が必要になるなら、時間にゃビジネスの機会損失といったデメリットも生じる可能性があります。

商工会議所を使い倒す~まとめ

商工会議所の定義、メリットやデメリットまで解説してきましたが、中小企業や創業者にとっての強い味方なのは間違いありません。

自社にとって商工会議所を「使いこなす 使い倒す」という心構えで、融資制度はもちろん、各種支援やサービスを常に自社の役に立てるよう上手に利用してください。