民泊は、住宅やマンションの一部を宿泊施設として観光客に貸すサービスです。
温泉地や海辺の観光業が盛んな地域では、民泊が多く存在しています。
ホテルよりも身近に、日本人の暮らしが感じられることが好評で、外国人観光客の宿泊も増えているのが特徴です。
では、民泊を開業する場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。
営業形態の種類や、活動資金の目安、営業までの流れについてお伝えします。
Contents
民宿の定義
民宿は広辞苑にて次の定義がされています。
①民家に宿泊すること。民泊。
②一般民家が許可を得て営む簡易な宿泊施設。
港町や離島に多い民宿ですが、その名の通り宿泊できる民家のことを民宿といいます。
メリットとしては、
・宿泊する地域の温かさに触れることができる
・家主の手作りごはんが食べられる
という良さがあります。
デメリットとしては、
- アメニティなどのサービスが無い
- 食事や入浴などは家主や他の宿泊者との共有スペースとなる
などがあげられます。
感覚としては、実家に帰省したときが近いのではないでしょうか。
必要な手続きの種類は3つ
民宿を開業する場合、必要な手続きがあります。
3つの方法がありますが、いずれか1つを選択して手続きを行ってください。
- 旅館業法
- 民泊新法
- 特区民泊
それぞれ詳しく説明していきます。
旅館業法を取得する
旅館業法は、次のように定義されます。
旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされている。旅館業は「人を宿泊させる」ことであり、生活の本拠を置くような場合、例えばアパートや間借り部屋などは貸室業・貸家業であって旅館業には含まれない。 また、「宿泊料を受けること」が要件となっており、宿泊料を徴収しない場合は旅館業法の適用は受けない。 |
民宿は、営業のために場所を確保することはなく、自宅が営業場所。
しかし、お金を取って人を宿泊させる場合は、原則として旅館業に該当するので、旅館業であり申請が必要です。
旅館業法には4つの形態があります。
民宿は旅館営業にあてはまるので、手続きを進めましょう。
形態 | 詳細 |
---|---|
ホテル営業 | 洋式の構造や設備を設けて宿泊させる営業。 |
旅館営業 | 和式の構造や設備を設けて宿泊させる営業。 温泉旅館・割烹旅館・民宿などが該当する。 |
簡易宿所営業 | 複数の人で宿泊する建物を設けて宿泊させる営業。 山小屋・カプセルホテル・ペットホテルなどが該当する。 |
下宿営業 | 1ヶ月以上の単位で宿泊させる営業。 |
民泊新法を利用する
民泊新法とは、次のように説明されています。
住宅の空き部屋に旅行者を有料で宿泊させる民泊について一定のルールを定め、健全な民泊サービスを普及させて国民の生活向上や経済発展を図るための法律。 民泊新法では、民泊を「住宅宿泊事業」として位置付け、住宅の貸し手は都道府県知事に届け出ることで「住宅宿泊事業者」となり、年間180日を上限に民泊を営める。 |
旅館業法を改め、違法な宿泊業を取り締まる目的もある民泊新法では、民泊として営業できる日が年間180日までとなっています。
約6カ月営業できるという計算です。
長期休暇やリゾート地での営業であれば、日数に縛りがあっても十分営業は可能でしょう。
夏のみ、冬のみなど、営業する地域の気候に合わせて営業することで、民泊としての特色を持たせることもできます。
週末のみの営業など、180日を超えなければ通年で営業することもできるので、趣味や副業としても商売が可能です。
特区民泊として営業する
特区民泊とは、外国人を宿泊させるのに適した施設として運営することを前提に営業する民泊のことです。
正式名称は、国家戦略特別区域。
旅館業法の特例と位置づけられており、外国人向けの設備を整えるなど指定条件をクリアすることで、旅館業法の縛りなく民泊として営業できることを意味します。
国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例、いわゆる「特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)」とは、外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させるとともに、当該施設の使用方法に関する外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する事業として政令で定める要件に該当する事業とされています。 |
- 東京都大田区
- 大阪府大阪市
- 福岡県北九州市
などが指定地域として国から制定され、指定地域に該当する地域では、特区民泊として民泊を営業することが可能です。
特区民泊には、宿泊者の滞在期間に指定があり、最低でも3日は民泊を利用してもらうことです。
宿泊は2泊3日から受け入れるというもので、1泊2日の宿泊を受け入れる場合は旅館業法が適応されます。
開業資金はいくら必要?
民泊を開業するために必要な資金は、数十万円〜と安価に始められます。
他の商業に比べて安く始められますが、人によっては100万円以上になることもあるので注意が必要です。
一般的な内訳や、どの場合に費用がかさむのかをお伝えします。
数十万~100万円程度が相場
民泊を開業する場合にかかる開業資金は、数十万円〜100万円ほどが相場です。
- 家具家電の整備
- 消防設備の準備
- 清掃道具の準備
- 開業に必要な手続きの手数料
以上の項目が主な内訳です。
持ち家や不動産を所有している前提で開業する場合を想定しています。
すでに家具家電や清掃道具などが準備できている場合や、自宅にあるものを使う場合はそれ以外で足りないものを用意します。
足りないものは個人差が大きく、家具家電の有無によって準備金の差が開きます。
コンセプトや、どのように自宅を使うのかによって開業資金が大幅に変わるので、見積もりで金額を把握しておきましょう。
不動産を持っていなければ高くなる
民宿として使う家を持っていない場合はさらに高くなります。
民宿は、住宅を有料で貸し出す商売です。
マイホームや別荘をこれから購入し、民宿として使おうとしている人は、不動産を買う金額が加算されます。
合計金額は、住宅建設費+100万円ほどです。
住宅を建てる際にかかる費用は平均で3,500万円と言われています。
地域によって多少の変動はありますが、4,000万円弱は用意しておくのが良いでしょう。
物件を決めることから始める場合は、持ち家を利用する場合と桁が違うほど金額が変わるので注意が必要です。
営業を始めるまでの流れ
民宿を営業するまでの流れについて説明します。
順当な手続きの流れとしては、
◆役所の手続き
◆営業申請
◆保健所からの返答を待つ
となっています。
特区民泊として営業する場合は、外国人が過ごしやすい環境づくりをするための内装工事が必要な場合もあります。
営業形態を選ぶ
営業形態とは、どの制度を利用して民泊を営業するか、ということです。
申請の種類 | 営業日数 | 申請から営業までの期間 |
---|---|---|
旅館業法 | 指定なし | 30日~数週間 |
民泊新法 | 年間180日まで | 届け出を行えば営業可能 |
特区民泊 | 指定なし | 約1~3カ月 |
今すぐ営業を始めたいのであれば、民泊新法を利用して営業を開始することをおすすめします。
営業日数にしばりなく、民泊を主な生業としたい場合は、旅館業法や特区民泊で申請を行うのが良いでしょう。
外国人を主なターゲットとしている特区民泊は、申請する前に満たさなければならない基準があります。
コンセプトや宿泊客の層もあわせて営業形態を考えるのが最適です。
自分の作りたい民泊のスタイルに合った営業形態を見つけましょう。
保健所からの許可を待つ
旅館業法を使って民泊を営業する場合、保健所の立入検査が必要です。
環境衛生監視員が立入検査を行い、旅館業を経営するのにふさわしい物件、施設であるかを確認します。
検査項目は、構造や設備が主ですが、自治体によって定められている項目もあります。
詳しい項目や検査の流れについては、開業する自治体の役所に行き、確認しましょう。
すべての項目を満たすよう準備を整えるのにも費用が必要です。
工事や家具家電の配送時期などからも時間がかかることがわかります。
申請してから許可が下りるまでにも時間がかかるため、余裕を持って準備を進められるようスケジュールを確保しましょう。
スケジュールにゆとりがあれば、保健所からの修正や指摘にも対応できます。
担当者とのやりとりも円滑に進められることでしょう。
外国人向けの内装は必須
特区民泊として運営する場合、自宅を外国人向けに内装工事が必要になる場合があります。
代表的な例が、土足でも過ごせる部屋をつくることです。
欧米や北欧では、家に入っても靴を脱ぐ文化がありません。
土足で過ごすことが多く、靴を脱ぐのは限られたときです。
靴を脱ぐ文化を持つのは、日本やアジアの地域に限られるため、外国人向けの宿泊施設には土足で過ごせる空間が必須なのです。
・絨毯をフローリングにする
・防音素材の床
・床暖房
・傷がつきにくい
・インテリアを和に振りすぎない
・スタイリッシュやシンプルな家具も取り入れる
以上のような内装を取り入れると良いのですが、特に床は工事が必要であることが多いです。
床暖房は、まだ日本で導入している家庭が多くありません。
アメリカやカナダの全館空調ほどポピュラーではないからです。
しかし、外国人を招くのであれば、くつろげる環境として自国に似た環境で過ごしたいと思うでしょう。
日本人が日本食を見つけると嬉しくなるように、外国人旅行客も自国の風習や文化が取り入れられていると、配慮されていると感じられます。
日本ならではのおもてなしとの評価もされ、リピートにつながるはずです。
そのため、外国人向けの営業をする場合は、内装を変える必要があります。
内装工事は手元に資金を残してできる
内装工事となると、かなり金額がかさみそうですが、実は意外とお金をかけずにできる方法はあります。
それは、内装工事をリースで行うことです。
内装工事にかかる費用は、開業資金の蓄えを大きく圧迫します。
工事をしてから追加する工程があると、さらに費用がかかってしまい、資金が手元に残らないことも十分考えられます。
しかし、リースで必要な分だけを分割して支払うことで、手元に資金を残して内装工事が行なえます。
かかった金額が同じでも、毎月分割して支払うほうが金銭的にダメージが少なく、毎月の収入で補填がしやすいです。
開業して間もない時期や、オフシーズンのときは集客ができない場合もあるので、収入が少ないときでも運営できる資金を確保できます。
審査も通りやすく、手続きに時間がかからないのもメリットです。
まとめ
民泊を開業する場合は、3つの形態から営業する形を選ぶことができます。
方法 | 特徴 | 許可が下りるまでの期間 |
---|---|---|
旅館業法 | ホテルや旅館と同じように、宿泊業を生業とする人におすすめの形態。 保健所の立入検査がある。 検査項目は自治体によって違うため確認が必要。 | 30日~数週間早ければ1カ月で営業が可能。 |
民泊新法 | 年間180日までの営業とする期限付き。 リゾート地や別荘での営業に向いている営業形態。 | 書類を申請するだけで営業が可能。 3つの中でいちばん手続きが簡単で早い。 |
特区民泊 | 外国人をターゲットにした制度。自治体ごとに指定されており、許可が下りれば、旅館業法の条件に満たなくても営業できる。 | 1~3カ月3つの中でいちばん期間が長い。 |
開業資金は、物件がすでにある場合で数十万~100万円程度が相場です。
これから物件や不動産を持つ人は、物件の土地・建物代+初期費用代と、金額がかさみます。
余裕のある範囲で物件を決めましょう。
特区民泊でターゲットとなる外国人のために、内装工事が必要な場合があります。
手元に資金を残したまま、外国人観光客にくつろげる内装を作ることができるので、内装工事リースで賢く準備を整えましょう。