店舗の開設や移転の際に内装を作る工事を内装工事といいます。
この内装工事がさまざまな場所で行われているということをご存じでしょうか。
よく訪れるスーパーや勤務先のオフィス、かかりつけの病院まで内装工事のおかげで営業できているのです。
しかし、そんな身近な工事でありながら具体的な工事の内容や、費用の相場となると想像しづらい部分なのではないでしょうか。
そこで今回は、内装工事費用の相場について詳しく解説したいと思います。
店舗の開設や移転を考えている方にはもちろん、訪れる側の方にも「こんな工事をして、このくらいの費用がかかっているのか」と想像できる内容です。
内装工事とは?
内装工事とは、建物の内部で行う工事のことを言います。
建築工事と混同されがちですが、ゼロから建物を作る建築工事に対して、建築物の構造体が出来上がった状態で内部を工事するのが内装工事です。
建築工事が先にあって、続きの細かい作業を内装工事が行うといったイメージです。
床・壁・天井、間仕切り壁などを作成し、指定されたレイアウト・デザインに整え、必要な設備を設置していき、電気・水道などの設備工事を含む場合もあります。
内装工事の内容
同じ内装工事でも、それぞれの店舗によって工事の内容はさまざまです。
その中でも必ず行わなければいけない工程が以下の7つとなります。
- 軽鉄工事(鋼製下地組立)
- ボード工事(ボード張り)
- クロス工事(壁紙工事)
- 塗装工事
- 左官工事
- 床仕上げ工事
- 木製建具工事
身近なスーパーやコンビニも、このような工程を通過して、たくさんの顧客に利用されています。
軽鉄工事(鋼製下地組立)
壁や天井などの骨格部分を作る工事です。
軽天工事とも呼ばれ、名前の通り、厚さ0.5mmほどの薄い鉄板を使って骨格を作っていきます。
昔は木材が使われていましたが、火事に強く、使いやすいことから今では鉄骨が用いられています。
ボード工事(ボード張り)
軽量鉄骨でできた下地の上に石膏素材などで作られたボードを張り付けていく工事です。
ボードはパテで隙間を埋めて壁や天井を作っていきます。
クロス工事の下地を作り、断熱・防音・耐火性を高めるための工事です。
クロス工事(壁紙工事)
ボード工事で張ったボードの上に、布、ビニール、和紙などの内装材張り付けていく工事です。
壁紙を貼り付ける作業と考えてください。
この工程ではクロス(壁紙)にかかわる工事全般を行います。
塗装工事
壁・天井・外壁などに専用の塗料で塗装していきます。
見た目をよくする意味合いもありますが、劣化を防いで保護するという建物を長持ちさせる効果があります。
左官工事
壁や床に壁土・モルタル・漆くいなどの素材を使ってコテで貼り付けていく仕上げ工事です。
仕上げとなる塗工事全般を指します。
こて塗り、突きつけ、貼り付けなどの方法があります。
床仕上げ工事
床に床材を張り付ける工事で、出来上がりを左右する重要な部分です。
フローリング・タイル・クッションフロアなどから素材を選び、「根太工法」、「直貼り工法」などの方法で仕上げていきます。
木製建具工事
室内ドア、ふすまなど、開閉機能を持つ木製の建具を取り付ける工事です。
室内のイメージにかかわる重要な工程です。
内装工事費用の相場
続けて内装工事費用の相場を「設計、デザイン費」、「施工費」の2つに分けて相場を説明します。
工事の規模、店舗のタイプによっても大幅に異なるので注意してください。
設計、デザイン費
まずは、設計、デザイン費です。
内装工事関連の中でも業者によって費用が変わりやすく相場を出しにくい部分ですが、費用の算出方法として2つの方法があります。
総工事費
総工事費から算出する方法では、相場が10~15%と言われています。
すべての工事費(内装工事費+設備工事費)を計算した後、その10~15%が設計、デザイン費となります。
坪単価
坪単価から計算する方法です。
一坪は約3.3㎡(約2畳)ですが、坪数×3万円~10万円程度が相場と言われています。
総工事費が出る前の費用の目安としても用いられています。
施工費
施工費は、オフィス、飲食店、サロンなど、店舗がどのタイプになるかによって大きく変わります。
また、店舗物件には、スケルトン物件と居抜き物件の2通りがあり、原状回復工事後そのままのスケルトン物件は1から好きなように作ることができる、居抜き物件は割安で工事期間を短縮することができるというのがメリットです。
一般的な相場は、スケルトン物件:1坪 約30万~60万円、居抜き物件:1坪約25万~45万円です。
価格の幅が広く分かりづらいかもしれませんが、全ての希望をかなえたいとなると坪単価50万以上は必要で、50万円未満だとあきらる部分も多いと思っていただくと分かりやすいでしょう。
一般的な相場と比較して、オフィス物件はより安価に、調理設備・排水設備・空調など専用設備の多い飲食店は高額になります。
また、内装工事では工事の規模が大きくなるほど坪単価が低くなるというスケールメリットという仕組みがあります。
そのため、坪単価で相場を計れるのは20坪程度まで、坪数が多ければ坪単価が安くなるという点も頭に入れておいてください。
「20坪以上を予定している」「もっと詳しく確認したい」という場合は、直接業者へ見積り依頼をしてください。
見積りサイトの活用もおすすめです。
店舗種類別の内装工事費用の相場
ここからは、店舗種類別に内装工事費用の相場を見ていきましょう。
基本的な工事内容は変わりませんが、どのような設備が必要かによって相場は変わってきます。
以下はスケルトン物件20坪程度を想定した相場です。
居抜き物件をそのまま使う場合は、これよりも割安と考えてください。
店舗種類別内装工事の相場
飲食店
飲食店では、提供するものによって工事費用が変わってきます。
フランス料理、バーなど雰囲気を大事にする店舗であれば、デザイン費を重視する必要がありますし、焼肉店のように専用の調理機や空調が必要であれば設備費、設備工事費が高額になります。
店内をスムーズに動けるように動線の確保も重要ですのでデザイン・設計の際にはご注意ください。
◆スケルトン:約20~50万円
◆居抜き:約15~30万円
美容室・サロン
デザイン性が重要な美容室・サロンは、デザイン費が高くなりがちです。
さらに、美容院ではシャンプー台やスタンディングチェアー、エステサロンならエステ用のベッドやエステ用機器といった専用の設備が必要となります。
なるべく高額にならないようにデザインのこだわりどころをポイントに絞るなどの対策が必要です。
◆スケルトン:30万~60万円
◆居抜き:約20万~40万円
オフィス・事務所
他業種に比べて安価に抑えやすいのがオフィスの内装工事の特徴です。
こだわりがなければデザイン費を抑えることができ、内装工事が最小限で済みます。
ただし、デザインやレイアウト、壁・床・塗装などの素材などにこだわってしまうと高額になりますので注意してください。
◆スケルトン物件の坪単価 20万円~40万円
◆居抜き物件の坪単価 約10万~30万
内装工事見積り例
工事の見積りを具体的な例で見ていきましょう。
実際に行った内装工事の例ではありませんが、一般的な相場から坪数に合わせて算出するとこのようになります。
レストラン(スケルトン 20坪)
レストランは、特に厨房器具・空調・給排水工が高額になりやすい部分です。
以下は、一般的な洋食レストランの場合の例ですが、これをベースに和食店であればコールドテーブル、焼き台、焼き肉店であれば専用コンロ・空調など必要な専用設備、設備工事費を加えて計算すると大体の予想をつけることができます。
◇仮設・解体工事:33万円
◇軽量鉄骨・ボード工事:19万円
◇内装仕上げ工事(クロス、床仕上げ、塗装工事含む):34万円
◇左官工事:28万円
◇木工・建具工事:30万円
◇ガラス工事:8万円
◇空調工事:73万円
◇ガス工事:8万円
◇給排水工事:58万円
◇電気・電話工事:109万円
◇厨房器具工事:109万円
◇看板工事:28万
◇設計・デザイン費:84万
◇その他諸経費:21万
◇総額:約642万円(坪単価32万1千円)
ネイルサロン(スケルトン 20坪)
ネイルサロンは、サロン系の中でも最低限の設備で開設することができ、内装工事が安価になりやすいという特徴があります。
表の総額にプラスして、ネイルチェア・テーブルなどの専用設備、設備工事費が加わります。
エステサロン、ヘアサロンなどの場合はそれぞれの専用設備、設備工事費をプラスして計算してみてください。
◇仮設・解体工事:25万
◇軽量鉄骨・ボード工事:74万
◇左官工事:10万7000
◇内装仕上げ工事(クロス、床仕上げ、塗装工事含む):92万
◇木製建具工事:49万
◇看板工事:20万
◇空調工事:25万
◇電気工事:28万
◇給排水工事:15万4000
◇デザイン・設計費(総工事費の15%):55万
◇その他諸経費:27万
◇総額:約421万円(坪単価21万5千円)
オフィス・事務所(スケルトン 20坪)
一般的なオフィスの内装工事は、他の業種と比べると割安で内装工事を行うことができます。
しかし、デザインにこだわる、高度なインフラ機器を予定しているなどの場合は、デザイン費や設備工事・配線工事などに思ったよりも費用が掛かってしまう可能性があります。
◇仮設・解体工事:22万円
◇軽量鉄骨・ボード工事:74万
◇左官工事:11万
◇内装仕上げ工事(クロス、床仕上げ、塗装工事含む):113万円
◇木製建具工事:47万円
◇看板工事:28万円
◇空調工事:34万円
◇パーティション工事:51万円
◇電気設備工事:32万円
◇消防設備工事:30万円
◇設計・デザイン費:73万
◇その他諸経費:42万円
◇総額:約557万円(坪単価27万8500円)
まとめ
今回は、内装工事費用の相場について解説しました。
内装工事の内容や大体の相場がわかっていただけたのではないでしょうか。
内装工事は理想を多く盛り込んでしまうと、すぐに予算を超えてしまいます。
そのため、理想を追い過ぎず、予算と理想のちょうどいい落としどころを見つけることが大切です。
無料で見積りを行ってくれる業者もたくさんありますので、しっかりと計画を立て、予算にあう理想の内装を実現してください。