近年は、フリーランスや個人事業主として独立する人が増えています。
個人事業主は、税金や経理関係の管理を自分で行う必要がありますが、実際にどのようば税金を納めるべきなのか分からない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、個人事業主の売上が1000万以下の際には、消費税を払うべきなのかという点を解説します。
目次
個人事業主が消費税を支払うケース
個人事業主には、消費税を支払う必要がある人と、支払う必要がない人がいます。
消費税を支払う必要のある人は消費税の「課税事業者」、消費税を支払う必要のない人は消費税の「免税事業者」になります。
個人事業主が順調に売り上げを伸ばしていくと、ある段階から税金の支払い額が増えてしまいます。
それは、売り上げを伸ばすと免税事業者から課税事業者になる、つまり消費税を支払う必要が出てくるからです。
以下の要件のどちらかを満たす場合には、消費税が課税されるようになります。
- 前々事業年度に売上1000万を越えた場合
- 前事業年度(年度)の上半期日の売上が1,000万円を超えるまたは給料総額が1,000万円を超える場合
もしも売り上げが1,000万円を超えても、すぐに消費税を納める義務が発生するわけではなく、2年後もしくは1年後から消費税を納める義務が生じます。
これは、消費税を納めるための準備期間を設けているからです。
・個人事業主の中には、消費税を支払う必要がある人とない人がいる。
・売上1000万を超えた場合、消費税が課税されるようになる。
・売り上げが1000万円を超えてから2年後もしくは1年後に課税義務が発生する。
売上が1000万円以下でも課税対象になる?
売上が1000万円以下の場合でも、消費税の課税義務が発生するケースがあります。ここでは、消費税の課税対象になるケースのついて解説します。
高額特定資産の取得している
高額特定資産を取得した場合は、免税の制度が適用されません。
売上が1000万円以下でも、高額特定資産の仕入れ等を行った方は注意しましょう。
高額特定資産とは、1000万円以上(税抜き)の棚卸資産や不動産、機械、車、器具備品などの固定資産のことです。
高額特定資産の仕入れを行った初日から3年間は、消費税を支払う必要があることを覚えておきましょう。
相続で事業を引き継いでいる
免税事業者が相続である場合に事業を引き継ぐ際は、注意が必要です。
自分の事業売上が1000万円を超えていなくても、引き継いだ被相続人の課税売上高が1,000万円を超える場合は、消費税を納める必要があります。
相続が行われた日の翌日から、その年の12月31日まで免税の制度が適用されません。
ただし、被相続人の課税売上高が1,000万円を下回る場合は、納税義務が免除されます。
特定期間で1000万を超えている
消費税の課税義務が発生する前々年度(基準期間)の売上が1000万円以下でも、特定期間の売上高が1000万を超えていると課税対象になります。
特定期間とは、前年度の1月〜6月の半年間のことです。
上半期の売上高が1000万を超えると、個人事業主として開業してから2年目であっても消費税を納める必要があることを覚えておきましょう。
・車や家などの高額特定資産を仕入れた場合、消費税の課税義務が発生する。
・引き継いだ被相続人の課税売上高が1,000万円を超える場合は、消費税を納める必要があるので注意する。
・特定期間の売上高が1000万を超えていると課税対象になる。
個人事業主が消費税を支払うまでの流れ
消費税の課税事業者になると、「届出書の提出」と「帳簿書類の整理」をする必要があります。
届出書を提出する
個人事業主が消費税の課税事業者になると、「消費税課税事業者届出書」を所轄の税務署に提出する必要があります。
消費税課税事業者届出書は、税務署に課税事業者になったことを申告するためのものです。
提出期限は決められておらず、「速やかに」とされています。
通常、売上が1,000万円を超えた年に届出書を提出しますが、提出がその年に間に合わなくても問題はありません。
帳簿書類の整理
消費税の課税事業者になると、課税仕入れ等を記載した帳簿および請求書等を、7年間保存する必要があります。
税務署に納める消費税は、売上として預かった消費税分から、仕入や経費としてかかった消費税分を差し引いた差額を支払います。
実際には、もう少し複雑な計算になります。
税務署に納付する消費税額を計算するためにも、帳簿書類を整理し保管する必要があります。
もしも帳簿や請求書などが保存されていない場合には、仕入や経費としてかかった消費税分を認められず、その分、納める消費税の金額が大きくなってしまうことがあります。
消費税の課税事業者になったなら、請求書などを紛失しないよう、しっかり管理しましょう。
・個人事業主が消費税を支払うまでの流れを押さえておくことが大切である。
・個人事業主が課税事業者になる際は「消費税課税事業者届出書」を提出する必要がある。
・帳簿書類を整理し保管する必要があるため、帳簿や請求書などを保存しておくようにしよう。
課税対象になった際の注意点
令和元年10月1日の消費税率の10%への引き上げに伴い、軽減税率の制度が導入されました。
消費税率は8%から10%へ引き上げられましたが、一部の対象品目は消費税率を8%とする、というのが消費税の軽減税率です。
軽減税率の導入によって、消費税の計算は複雑になりました。
消費税を納める義務がある課税事業者になると、軽減税率の導入によって複雑になった消費税を、しっかり管理・計算し、税務署に納付する義務があるのです。
軽減税率にはとくに注意しないといけません。
ここでは、消費税の課税事業者と軽減税率の関係について見ていきます。
軽減税率
消費税が8%から10%へ引き上げられましたが、一部の対象品目は消費税8%とするのが軽減税率です。
軽減税率の対象となるのは、飲食料品と新聞です。
飲食料品
原則、家で消費するものが軽減税率の対象となり、外食は軽減税率の対象外です。
また、お酒や医薬品、医薬部外品も対象外となります。
新聞
週2回以上定期購読される新聞が軽減税率の対象になります。
軽減税率の導入によって課税事業者がしなければならなくなったことは、区分請求書等の発行と、区分経理による記帳です。
区分請求書等の発行
区分請求書等とは、一般税率と軽減税率、複数の税率を記載した請求書のことです。
軽減税率品目の取り扱いがある場合には、従来の請求書に「軽減税率の対象品目である旨」と「税率ごとに合計した税込対価の額」を記載する必要があります。
区分経理による記帳
区分経理による記帳とは、請求書等を基に、売上や仕入を税率ごとに分けて記帳することです。
区分請求書等の発行、区分経理による記帳によって、これまで以上に経理処理が複雑になり、時間がかかってしまいます。
消費税引き上げ
軽減税率以外にも、消費税率の引き上げにともない気を付ける必要があることがあります。
それは「経過措置」があるものです。
原則、令和元年10月1日以降に行われる取引は、軽減税率のものを除き、消費税率10%が適用されます。
ただし、一定のものについては、改正前の税率を適用する経過措置が講じられています。
経過措置が講じられるものは、令和元年10月1日以降に行われる取引であっても消費税率が8%となります。
消費税の経過措置が適用される取引がある場合には、帳簿の記帳や納める消費税額の計算で、税率を間違えないように注意する必要があります。
消費税の経過措置は、以下のようなものに適用されます。
旅客運賃等
令和元年10月1日以降に行われる、電車代や航空運賃代などの旅客運賃や、映画館や美術館の入場料などのうち、令和元年9月30日までに領収しているものは8%が適用されます。
請負工事等
平成25年10月1日から平成31年3月31日までに締結した請負工事契約で、令和元年10月1日以降に、完成や引き渡しが行われるものについては、8%が適用されます。
その他
一定の資産の貸付や指定役務の提供などにも経過措置があります。
・軽減税率の導入によって消費税の計算が複雑になったため、注意が必要である。
・消費税が8%から10%へ引き上げられたが、一部の対象品目は消費税8%のままである。
・飲食料品と新聞は、軽減税率の対象、旅客運賃等と請負工事等は、経過措置の対象になる。
個人事業主が売上1000万を超えたら法人化するべき?
個人事業主が売上1000万円を超えると、消費税の課税事業者となり、消費税納付の義務が発生し、納税額が大きく上がります。
個人事業主の場合、売上1000万円を超えるあたりから、法人化を考える方が多いです。
法人化をするべきタイミング
前述のように、個人事業主は前々年度の売上1000万円以上から、消費税支払いの義務が発生します。
消費税支払いは、金銭的な負担以外にも、経理業務上でのさまざまな負担が増えることになります。
もし消費税の課税事業者となるタイミングで法人化するなら、個人事業主の時と、新しく設立した法人は別として扱われるため、法人には消費税支払いの義務がありません。
新しく設立した法人はゼロからのスタートになるので、消費税の支払い義務が発生するのは、売上1000万円を超えた次々年度からです。
少なくとも2年は消費税の支払いが免除されることになりますので、その間に経理業務や消費税支払いのための準備をしておくことができるでしょう。
また、この時に所得が500万円程度に達しているのなら、所得税は累進課税なので税率が上がり、個人事業主でいることが不利な状況にある可能性もあります。
個人事業主として1000万円を超えるタイミングは、個人事業主でいるデメリットが大きくなるタイミングです。
そこで法人化することで、デメリットを最小限にし、法人化のメリットも得ることができるでしょう。
1000万円以下でも法人化をした方が良い?
売上が1000万円を超えない場合でも、法人化をした方が良いのでしょうか。
ここでは、法人化するべきパターンについて、解説します。
免税期間が終わるケース
免税期間が終わり、翌年から消費税の課税義務が発生する場合、法人成りすることで、免税期間を伸ばすことができます。
法人設立後の2期目まで基準期間がないので、課税売上高が0円になります。
例えば、個人事業主の売上高が1000万円を超えてから2年後に課税義務が発生しますが、1000万円を超えてから1年後に法人化することで、免税が適用されます。
しかし、法人化をしても免税できないこともあるため、事前に専門家に相談すると良いでしょう。
事業に有利になるケース
法人化することで事業が成功しやすくなるパターンもあります。
個人事業主よりも法人の方が社会的信頼度が高く、契約や取引が行いやすいケースです。
例えば、信頼度が顧客獲得に直結する講師業や、コンサルティング業、マネージメント業などは、消費税の節約よりも事業方針を優先した方が良いこともあります。
しかし、法人設立の手続きに時間をかけてしまうと、事業の運営に割く時間が少なくなってしまう可能性があるため、会社設立の代行サービスを有効に活用することが大切です。
・免税期間が終わるタイミングで法人化すると2期目まで課税売上高が0円になる。
・法人化することで事業が成功しやすくなることがある。
・法人化をしても免税が適用されないこともあるため、専門家に相談・確認することが大切である。
法人化を検討している方は
個人事業主の売上が1000万以下の時に、消費税を払うべきかどうか解説しました。
個人事業主の売り上げが1000万円を超える場合は、消費税の課税事業者となるタイミングで法人化する方が多いです。
ただし、個人事業主の売り上げが1000万円以下の場合でも、課税対象になることもあるので注意しましょう。
また、所得が500万円程度に達している方は、所得税の計算方法に累進課税が採用されるため、税率が上がる可能性があります。
このため、適切なタイミングで法人化をすることが大切です。
法人化を検討している方や迷っている方は、会社設立の専門家である経営サポートプラスアルファを活用することが有効です。
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