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役員報酬の変更って可能?会社設立前に確認しておくべき5つのこと

会社登記後に役員報酬の変更は可能?

会社を設立する際に、決めなくてはいけないことは沢山ありますが、そのなかでも利益に大きく関係してくるのが「役員報酬」です。

そのため、役員報酬を決定するときには、事業計画書などを基に慎重に検討を行います。

熟慮の上、決定した役員報酬ですが、いろいろな事情により後から変更したくなることあるでしょう。

しかし、役員報酬を自由に変更できると、利益調整をして税金を減らすことが可能になってしまいます。

役員報酬の変更にはルールがありますので、今回は役員報酬の変更について解説をいたします。

事業年度開始時に変更するとき

役員報酬は、会社を設立した時、もしくは事業年度開始から3か月以内であれば、一度だけ変更することができます。

例えば、新しく会社を設立した場合、1,2か月目は役員報酬が0円、3か月目から支給を開始するということも可能。

会社を設立した時というのは、税務署に提出する会社設立届の「設立年月日」が基準となります。

役員報酬の変更が3か月を過ぎてしまったら、全額が損金(経費)に計上できなくなるので注意しましょう

それ以降に変更するとき

会社設立時もしくは、事業年度開始から3か月が経過した後は、原則的には役員報酬の変更はできません。

しかし、例外的に変更が認められる事由があります。

増額をする場合

取締役部長から取締役専務など役職が変更になり仕事の責務が増えた時

役員の職務の内容に重大な変更があった時

減額をする場合

経営の状況が著しく悪化した時

*一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったなどは含まれない

こちらについては次の項目で詳しく解説していきます。

役員報酬を増額したいときの対応

それでは、実際に役員報酬を増額すると決定した場合、どのように手続きを行っていけばいいのでしょうか。

まず、増額できるケースとしては、会社設立時もしくは事業年度開始から3か月以内であることが条件です。

3か月を経過していても、役員の立場(役職)や業務内容・責務が大幅に変わった場合も変更可能です。

税務調査でも必ずチェックされる点ですので、条件に当てはまっているか必ず確認してください

役員報酬を変更する場合は、株主総会での承認が必要となります。

株主総会で議論されたということを証明するために、役員報酬変更の議事録を作成しましょう。

議事録のフォーマットは、インターネット上で配布しているサイトもあるので、参考にしてください。

この議事録を面倒くさがって、作成していないケースがよくあります。

税務調査が入るとなってから、慌てて作成することもあるようですが、議事録を印刷した紙が新しいのでそこからバレてしまうこともあります

少しの手間を惜しんで、役員報酬が経費と認められなかったら、多額の税金を支払うことになりますので、議事録は必ず作成するようにしましょう。

役員報酬を減額するときの対応

役員報酬を減額する場合も、会社設立時もしくは事業年度開始から3か月以内であることが条件です。

3か月が過ぎてしまっても、経営の状況が著しく悪化した場合は、減額が認められることがあります。

*一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったなどは含まれないので注意!

なぜ、せっかく貰える役員報酬を、減額する必要があるのか疑問に思うかもしれません。

法人は赤字になってしまうと、いろいろな不都合が出てきます。

例えば、銀行に融資の相談をした際に、少しでも利益が出ている会社と、赤字の会社では融資の可否に大きな差が出ます。

設備投資などで今後融資が必要となる場合は、必ず黒字にしておきましょう

新たに事務所や店舗を借りる場合にも、信頼ができる会社か確認するために、保証会社から決算書の提出を求められる場合があります。

このような時にも、赤字だと物件を借りられない可能性が高まります。

これを防ぐために、役員報酬を減額してでも赤字にならないように、手を尽くす必要があります

減額するときの手続きは基本的に増額の時と同じです。

株主総会を開催して、必ず議事録を作成しましょう。

役員報酬はできるだけ変更しない方がいい?会社設立前に確認するポイント

役員報酬は事業計画書に基づき慎重に決定をします。

そのため、基本的に支給額の変更はしない、と考えていた方がいいでしょう。

しかし、会社を経営していると予測通りにはいかないことが常です。

また、3か月目までに利益が多く出ている場合、役員報酬を増額して一層の奮起を期待することもできます。

このようにポジティブな面もあるので、役員報酬の変更は一概にしない方がいいとはいえません。

役員報酬を変更する場合に、重要な5つのポイントがあるのでチェックしてください。

事業年度の途中で変更する際は注意する

事業年度の開始から3か月を過ぎてしまった場合は、特定の理由がないと役員報酬を変更することができません。

特定の理由は、先ほど「役員報酬を増額・減額する時の対応」でご説明した通りです。

必ず、株主総会を開催して、議事録を残すようにしてください。

役員が一人の場合でも、形式上 株主総会を開く必要があります。

一人で会議をしている姿を想像すると面白いですが、実際は頭の中で考えた内容で議事録を作成する作業となります。

社会保険の月額が変更される場合も出てくる

役員報酬を変更して、「標準報酬月額」が2等級以上変わる場合は、日本年金機構へ「被保険者報酬月額変更届」を提出する必要があります。

「標準報酬月額が2等級以上変わる場合」ですが、これは役員報酬が変動してから、3か月間の平均額で判断します。

標準報酬月額が変更になるかどうかは、全国健康保険協会のホームページに掲載されている「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」で確認をしてください。

副業で会社をつくる場合は特に注意する

副業で会社をつくる場合は、勤め先にバレないか心配ですよね。

副業で会社をつくる人は、個人事業主として事業を営んでいて、売上が増えたため法人成りをすることがほとんどです。

そのため、確定申告の際に住民税から副業が会社にバレないようにする方法は既にご存じかと思います。

しかし、会社を作った場合は、確定申告以外にも会社に副業がバレるリスクが増えます。

それは、登記簿(履歴事項全部証明書)に代表者名が記載されるのと、設立した会社で社会保険に加入する必要があるからです。

登記簿(履歴事項全部証明書)

会社を設立すると登記簿に代表取締役の氏名・住所が記載されます。

これは見ようと思えば、誰でも閲覧可能です。

ただ、副業をしているなどの情報が会社に伝わらなければ、通常は登記簿など見ることはないので、あまり心配する必要はないでしょう。

社会保険に加入

基本的に会社の役員は社会保険に加入しなくてはなりません。

勤め先と自分の会社の2ヵ所で加入することになります。

2ヵ所で社会保険に加入している人は、<「二以上事業所勤務届」をそれぞれの会社から提出しなくてはならないので、ここで会社にバレてしまいます。

これを防ぐには、自身は役員にはならずに株主という立場で、配偶者を役員とする方法です。

配偶者に役員報酬を支払う場合は、扶養から外れてしまうので注意しましょう。

利益を優先して決めるか、希望額から決定するか明らかにしておく

役員報酬額を決めるには下記の2パターンがあります。

どのように決めるにしても、事業計画書が必要となりますので、どれくらいの利益が出るかを分析しておきましょう。

役員報酬を利益優先で決める

事業計画書で予測した利益を上限として、役員報酬額を決める方法です。

例えば、役員報酬を加味しない利益が1200万円だとしたら、毎月100万円を上限に役員報酬を決定します。

こうすることで、利益は0円に近づくので納める法人税を少なくすることができます。

赤字になってしまうのはまずいので、実際はここまでぎりぎりの金額は狙わないようにしましょう。

国に納める法人税は発生しなかったとしても、県と市に支払う法人県民税と法人市民税は均等割りというものがあり、赤字でも必ず納めなくてはいけない税金が発生します。

これで赤字になってしまうと、銀行からの融資が受けられなかったり、いろいろな不都合が生じてしまいます。

役員報酬を希望額から決める

利益優先で役員報酬を検討した場合、希望の役員報酬額に届かないこともあります。

絶対に希望の役員報酬額は欲しいという場合、まずは役員報酬額を決定してしまい、利益がその金額に届くように事業計画書を改善していきます。

具体的には売上を増やす施策を考える、粗利率を上げる、経費を削減するなどです。

このようにして、当初の利益予想を修正したら、期中はその予想を達成できるように計画を実行していきましょう。

役員報酬が増えると赤字になってしまうリスクも増えるので、そこを考慮して役員報酬額を決めるようにしてください。

税額負担を気にする場合は予めベストな額を調べておく

会社にかかる税金は、利益が少なくなればなるほど税額が減っていきます。

しかし、利益を減らそうと思って役員報酬を増やしすぎると、今度は個人にかかる所得税・住民税・社会保険料が増えてしまいます。

このバランスを考えて、役員報酬を決めなくてはなりません。

税額負担の観点から役員報酬を決定する場合、法人税・所得税・社会保険料など多くの要素が関係してくるので、複雑な計算をしなくてはなりません。

この辺りは、顧問税理士がいるようでしたら相談してみるのが一番間違いないでしょう

また、会社の利益と役員報酬のバランスをシミュレーションしているサイトもあるので参考にしましょう

まとめ

役員報酬の変更は条件次第で可能です。

しかし、基本的には変更するものではないということを、意識しておきましょう

事業計画書で予測した利益から役員報酬額を慎重に検討して、期中は変更しないで支払うことができれば、事業計画の精密さも上がっていきます。

やむを得ない事情や、ポジティブな理由があって役員報酬を変更する場合は、損金不算入とならないように、条件に合っているか慎重に検討することが必要です。

役員報酬額を決定するのは難しいですが、自分の行った事業でどれくらいの利益が出せるかを考える面白いところでもあります。

自社に最適な金額を設定して、会社も役員報酬額も成長・増額していけるようにしましょう

記事監修者の情報

税理士法人
経営サポートプラスアルファ

代表税理士 高井亮成

保有資格:税理士・行政書士

税理士の専門学校を卒業後、会計事務所に入社。
その後、税理士法人に転職をして上場企業や売上高数十億円~数百億円規模の会計税務に携わる。

現在は税理士法人の代表税理士として起業・会社設立をする方の起業相談からその後の会計、決算、確定申告のサポートを行っている。