廃業しても税務調査は行われる?何をすればいい?注意点を解説!

廃業しても税務調査は行われる?何をすればいい?注意点を解説!

個人事業主は廃業後も、税務署が更正・決定できる期間(原則として各年分の法定申告期限から5年)であれば、税務調査を受ける可能性があります。

たとえ個人事業主や法人を廃業したとしても、税務調査が行われることはあります。

廃業しても、事業をしていた期間の申告内容を確認する必要があれば、税務署は調査を行えるためです。

そこで、廃業した後で税務調査を受ける際の対策や注意点について解説します。

この記事では主に個人事業主の廃業を想定し、法人の解散・清算については帳簿書類の保存を中心に補足します。

廃業しても税務調査は実施される

廃業しても税務調査が実施されるケースがあることについて詳しくみていきましょう。

事業をしていた期間について廃業後にも税務調査が実施される

廃業したとしても、過去の申告内容は、税務署が更正・決定できる期間内であれば調査の対象になり得ます。

対象になるのは廃業した日以後ではなく、事業を行っていた各年分の申告です。

廃業後に税務調査をするのは法律で認められている行為です。

廃業後も一定期間は調査を受ける可能性があることを意識し、書類を保存しておきましょう。

廃業後も帳簿や取引に関連する書類を一定年間保管する義務がある

廃業後も過去の帳簿や取引に関連する書類などは保存しなければいけません。

法律によって保管の義務が定められているからです。

法人(会社)の場合、法人税法では、帳簿書類をその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間保存する必要があります。

青色申告で欠損金が生じた事業年度は10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)です。

(出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」)

また、会社法では、株式会社の清算人は、清算結了の登記の時から10年間、会社の帳簿や事業・清算に関する重要な資料を保存しなければなりません。

(出典:e-Gov法令検索「会社法」第508条)

法人税法と会社法では、対象となる資料や期間の数え始め、保存する人が異なる点に注意しましょう。

個人事業主の場合は、次のとおりです。

個人事業主の場合、青色申告であれば帳簿・決算関係書類は原則7年間、請求書や見積書などその他の書類は5年間の保存が必要です。

白色申告の場合も、収入や必要経費を記載した法定帳簿は7年間、それ以外の帳簿・書類は5年間保存します。

(出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」/国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」)

また、消費税の課税事業者だった場合は、仕入税額控除の適用を受けるために帳簿と請求書等を原則7年間保存する必要があり、所得税では5年保存の書類でも保存が必要になることがあります。

紙の書類だけでなく、電子で受け取った請求書などの電子取引データも保存の対象です。

会計ソフトやクラウドサービスを解約する前に必要なデータを出力し、後から閲覧・提出できる状態にしておきましょう。

廃業後の税務調査で過去の申告内容の誤りが発覚するケースもある

廃業後に税務調査を受けた結果、過去の申告に誤りがあることが発覚するケースもあります。

申告に誤りがあった場合は、修正申告などにより、不足していた税金(本税)に加えて加算税や延滞税を納めることになります。

なお、罰金は刑事罰であり、申告の誤りだけで当然に科されるものではありません。

廃業した後も過去の申告の責任が問われるため油断をしてはいけないのです。

税務署が更正・決定できる期間は原則5年、不正があれば7年

税務署が申告内容を訂正(更正)したり税額を決定したりできる期間は、原則として、対象となる年分の法定申告期限から5年です。

廃業した日から数えるのではなく、各年分の確定申告期限から数える点に注意しましょう。

偽りその他不正の行為によって税額を免れた場合などは、この期間が7年になります。

また、法人税の欠損金額に関する更正は10年まで行えるなど、税目や内容によって期間が異なる点にも注意が必要です。

なお、確定した税金を徴収する権利の消滅時効(原則5年)は、更正・決定の期間制限とは別の制度で、督促などによって時効が更新されることがあります。

(出典:e-Gov法令検索「国税通則法」第70条・第72条)

廃業する際に注意しておきたいポイント

これから廃業するときに注意しておきたいポイントを解説します。

廃業した年分の確定申告が必要

年の途中で廃業した場合も、その年(1月1日から12月31日まで)の所得について、翌年に確定申告が必要になることがあります。

申告が必要かどうかは、廃業した事業の損益だけでなく、給与や不動産など他の所得も含めたその年の所得全体と、所得控除などを踏まえて判断するのが基本です。

事業が赤字でも他の所得があれば申告が必要になる場合があり、反対に事業が黒字でも、所得控除などを差し引くと申告義務がない場合もあります。

また、事業が赤字の場合は、申告することで他の所得と損益通算できるほか、要件を満たす青色申告者は純損失の繰越しや繰戻しによる還付を受けられることがあります。

(出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」)

申告が必要なのに期限までに申告しなかった場合は、無申告加算税や延滞税がかかるため注意しましょう。

消費税の課税事業者だった場合は、廃業した日が属する課税期間についても消費税の申告が必要です。

事業用の車両や商品などを廃業後に自分で使う場合は、家事消費としてみなし譲渡に当たり、消費税の課税対象になることがあります。

(出典:国税庁「No.6105 課税の対象」)

廃業届を提出することと、最後の申告・納税を済ませることは別の手続きです。

廃業後の経費の取り扱いに注意する

廃業する際にもさまざまな費用がかかるため、経費の取り扱いに悩むケースがあります。

基本的には廃業する際に生じた費用も必要経費として計上可能です。

たとえば、事務所の清掃費用や設備の処分費用などは事業に関連した費用として認められます。

ただし、事業に関連のないものを経費にしてはいけないため注意しましょう。

また、廃業後に生じた費用や損失のうち、事業を続けていれば必要経費になったものは、廃業した年分(またはその前年分)の必要経費に算入できる特例があります。

すでに申告を済ませている場合は更正の請求が必要になることもあるため、費用の内容や発生時期、申告の状況を確認しましょう。

(出典:国税庁「事業廃止後に生じた費用・損失の所得税法63条の規定に関する取扱いについての留意事項(通知)」)

廃業するために必要な手続きはたくさんある

廃業するためにはさまざまな手続きが必要です。

個人事業主の場合は廃業届を提出します。

それ以外にも青色申告や消費税、給与支払いなどの廃止の届け出も必要です。

消費税の課税事業者は「事業廃止届出書」を提出し、インボイス発行事業者の場合も、登録の取消しを求める届出書ではなく事業廃止届出書を提出します。

(出典:国税庁「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出手続」)

それぞれの状況によって必要な手続きは異なるため注意しましょう。

会社を廃業する場合は個人事業主よりも手続きは複雑です。

株式会社であれば、株主総会で解散決議を行い清算人の選定をします。

そして、解散登記と清算人選任登記を行い、解散届を提出して、さらに官報で解散広告する必要もあるのです。

法人税や住民税、事業税、雇用保険、社会保険などについてもそれぞれ手続きが必要になります。

廃業のために必要な手続きは複雑なため専門家に相談すると良いでしょう。

廃業後も税務調査に備えて帳簿などの書類をしっかりと保管整理しておく

廃業した後も税務調査の可能性があるため、きちんと帳簿などの書類を保管しましょう。

紛失すると保存義務に違反するおそれがあります。

事前にきちんと書類を整理して、絶対に紛失しない場所に厳重に保管しましょう。

廃業後に帳簿や書類が紛失した場合

万が一、廃業した後で帳簿や書類が紛失した場合は大変です。

この場合にどのような対応を取るべきなのか説明しましょう。

書類の紛失について正直に伝えることが大切

もし税務調査を受けることになり、過去の書類の紛失に気がついた場合は、税務署に正直に伝えることが大切です。

再発行や別の書類で代用できるケースもあるのですが、どうしようもない状況の場合には、正直に申告するしかありません。

事実と異なる説明をすると、かえって調査が長引いたり、信頼を損ねたりするおそれがあります。

調査官への心象を悪くしないためにも、書類の紛失については正直に打ち明けましょう。

領収書は取引先に再発行してもらう

領収書や請求書などの書類については、以前の取引先に再発行してもらえるケースがあります。

ただし、取引先が領収書などの再発行に応じる義務はありません。

また、書類の紛失は取引先には無関係のことであり、再発行の依頼は相手に迷惑をかけます。

もし再発行を依頼するならば、丁寧な態度で頼みましょう。

過去の取引のメールやLINEのやり取りなどをできるだけ集める

過去の経費の根拠を証明できる書類を紛失した場合は、メールやLINEなどのデータを調べてみましょう。

取引の詳細を確認できるやり取りの記録が残っていれば、取引を説明する補助資料として役立ちます。

経費の根拠を示すための情報として日付や金額、取引先、商品名などの情報が必要です。

クレジットカードの明細なども補助資料になりますが、それだけで常に領収書等の代わりになるとは限りません。

特に消費税の仕入税額控除(原則課税)では、原則として帳簿と適格請求書等の保存が必要で、所得税の経費の立証とは分けて考える必要があります。

帳簿書類を紛失すると加算税が重くなる場合がある

帳簿書類を紛失した場合の影響は、紛失した量で決まるわけではありません。

どの帳簿が欠けているか、取引を他の資料で立証できるか、申告漏れがあるか、紛失した事情などによって判断が分かれるといえます。

取引を立証できず所得を把握できない場合は、税務署が推計によって所得を算定することもあります。

また、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する申告所得税・法人税・消費税では、調査で帳簿の提示を求められても提示しなかった場合や、帳簿の売上金額の記載が本来の額に比べて著しく不足している場合に、過少申告加算税や無申告加算税の割合が5%または10%加重されます。

(出典:国税庁「帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置に関するQ&A」)

廃業後に税務調査を受ける際の注意点

廃業後に税務調査を受けた場合の注意点を説明します。

過去に無申告の期間があれば申告しておく

税務調査を受ける際に過去に無申告の期間があることがわかったならば、自主的に申告しましょう。

確定申告は期限を過ぎた分についても申告することは可能です。

税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税は原則5%に軽減されます。

期限内に申告していた内容の誤りを、事前通知の前に自主的に修正申告した場合は、原則として過少申告加算税はかかりません。

いずれの場合も延滞税は別途かかることがあり、事前通知の後や、調査による更正・決定を予知した後の申告では扱いが変わります。

(出典:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」)

(出典:国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」)

経費の根拠などを説明できるように準備しておく

税務調査でよく指摘されるポイントは経費に関することが多いです。

経費が多く計上されていると所得を減らすことができます。

そのため、故意に税金を減らすために経費を架空計上する場合もあるからです。

税務調査では、過去に計上した経費が事業に関連するものかどうかが確認されます。

事業との関連性がわかりにくい支出については、内容を質問されることがあります。

前もって経費の根拠などをしっかり説明できるようにすることが大切です。

交際費は私的な支出と混同されやすいため、特に説明できるようにしておきたい経費です。

相手先や目的がわかる記録を残しておくと説明しやすくなります。

また、従業員を雇っている場合は福利厚生費にも気をつけるべきです。

本来は給与として扱うべきものを、福利厚生費として処理してしまうケースもあります。

個人事業主を廃業して法人成りしても個人時代の税務調査が実施されるケースがある

法人化するために個人事業主を廃業するケースがあります。

この場合も、個人事業主時代の税務調査は実施されるため注意しましょう。

法人化すれば個人事業主時代の申告内容が調査されなくなるわけではありません。

個人事業主時代の申告漏れを指摘されると、加算税や延滞税の負担が法人化後の資金繰りに影響することもあります。

法人化した後も個人事業主時代の書類はしっかりと保管して、いつ税務調査を受けても大丈夫なように対策を立てておきましょう。

廃業後も税務調査の対策のために税理士に相談することは大切

事業をしていた頃は顧問税理士がいて、定期的に相談をして税務調査の対策をしていた人は多いでしょう。

しかし、廃業後は税理士との契約を終えることも多いでしょう。

その場合、税務調査の連絡を受けたときに相談先がなく、慌ててしまうかもしれません。

廃業後も税務調査を受ける可能性は存在するため、不安なことがあればいつでも税理士に相談すると良いです。

税務調査が決まったならば、税理士に立ち会いを依頼しましょう。

調査の連絡を受けたら、まず対象となる税目・期間、日時・場所、準備する資料を確認しましょう。

廃業して事務所がない場合は調査を行う場所について、都合が悪い場合は日程の変更について、合理的な理由を伝えて相談できます。

調査の結果、修正申告を勧められることがありますが、応じるかどうかは納税者が判断するもので、指摘された内容と計算根拠を確認してから判断しましょう。

修正申告をした場合は不服申立てはできませんが、更正の請求をすることはできます。

(出典:e-Gov法令検索「国税通則法」第74条の9・第74条の11)

よくある質問(FAQ)

個人事業主が廃業してから何年間、税務調査の対象になりますか?

税務署が更正・決定を行える期間は、原則として各年分の法定申告期限から5年で、廃業した日から数えるものではありません。偽りその他不正の行為によって税額を免れた場合などは7年となり、法人税の欠損金額に関する更正は10年まで行えます。

個人事業主の帳簿や書類は何年間保存すればよいですか?

青色申告の場合、帳簿や決算関係書類は原則7年間、請求書や見積書などその他の書類は5年間の保存が必要です。白色申告の場合も収入・必要経費を記載した法定帳簿は7年間、それ以外の帳簿・書類は5年間保存します。消費税の課税事業者だった場合は、仕入税額控除のため帳簿と請求書等を原則7年間保存する必要があります。

廃業後に無申告の期間があったことに気づいたらどうすればいいですか?

税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は原則5%に軽減されます(延滞税は別途かかります)。未申告の期間が長いだけで自動的に7年になるわけではありませんが、偽りその他不正の行為があれば更正・決定の期間は7年となるため、早めに税理士へ相談することをおすすめします。

廃業後に税務調査の連絡が来たらどう対応すればいいですか?

まず調査の対象となる税目・期間、日時・場所、準備する資料を確認しましょう。事務所がない場合の調査場所や、都合が悪い場合の日程変更は、合理的な理由を伝えて相談できます。過去に依頼していた税理士がいれば、廃業後であっても立ち会いを依頼すると安心です。

法人成りした場合、個人事業主時代の税務調査は行われますか?

法人化して個人事業を廃業した後も、個人事業主時代の申告内容について税務調査が行われることがあります。法人化したからといって過去の責任が消えるわけではないため、個人時代の書類も引き続き保管しておく必要があります。

廃業届を出せば税務調査は来なくなりますか?

廃業届の提出と税務調査の実施は別の話です。廃業後であっても、更正・決定の期間内であれば過去の申告内容は調査の対象になり得るため、廃業したことを理由に対応を怠らないよう注意しましょう。

廃業後の税務調査について悩みがあるなら専門家に相談しよう

廃業すれば過去の申告内容に責任を持たなくてもいいわけではありません。

過去の申告は、更正・決定の期間(原則として各年分の法定申告期限から5年、不正があれば7年)内であれば、廃業後も税務調査の対象になり得ます。

廃業後も油断をせず、税務調査を受ける可能性があることを意識しておきましょう。

万が一、税務調査を受けることになったならば、早めに税理士へ相談するのがおすすめです。

税理士と一緒に指摘内容や計算根拠を確認しながら対応することで、落ち着いて調査に臨めます。

記事監修者の情報

税理士法人
経営サポートプラスアルファ

代表税理士 高井亮成

保有資格:税理士・行政書士

税理士の専門学校を卒業後、会計事務所に入社。
その後、税理士法人に転職をして上場企業や売上高数十億円~数百億円規模の会計税務に携わる。

現在は税理士法人の代表税理士として起業・会社設立をする方の起業相談からその後の会計、決算、確定申告のサポートを行っている。