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宿泊業の起業準備は大きく3つ?物件取得と申請手続き、勤務制度について

宿泊業とは、旅館業法によって「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業である」と定義されています。

この定義に当てはまる場合は、
宿泊業の認可を受けるための申請をしなければいけません。

しかし開業までに必要な手続きは、初めての方にとっては想像以上に複雑で面倒です。

スムーズに手続きを進めていくために、まずはどのような準備や書類が必要なのか開業までの流れについて知っておくと良いでしょう。

宿泊業の開業までの流れは大まかに分けると、

  • 物件の取得
  • 申請手続き
  • 従業員の確保・勤務体制の整備

という3つの段階があります。

それぞれについてどのように行えばいいのか詳しく見ていきます。

①物件を取得する

まずは、第一ステップとして物件の取得を行う必要があります。

宿泊業として認められる営業形態の種類

宿泊業として認可される施設の種類は、旅館業法で定められた4つのタイプがあります。

それぞれ必要な許認可が異なってきますので、どのタイプに当てはまる物件を取得するのか、事業計画と合わせて今一度確認してみましょう。

以下の表は旅館業法の定義をまとめたものです。

(参考:厚生労働省「旅館業法の改正について」

物件の探しのポイント

物件探しは、まだあまり宿泊施設の多くない観光地や行楽地として今後人気が出そうな場所を狙うことがポイントです。

開業後の利用客をある程度見込むことができ、競合の宿泊施設もそれほどないため集客をしやすいからです。

各不動産ホームページなどでさまざまな物件を見ることができますので、複数のサイトからいくつかの候補を選び最終的な物件を決定しましょう。

また、物件の取得に費用をかけ過ぎないこともポイントです。

開業後の資金運用が厳しくなってしまわないよう、なるべく費用を抑えながら立地や物件を選んでいく必要があります。

物件探しのおすすめの方法

居ぬき物件から探す

物件探しのおすすめの方法として、「居ぬき物件」から探す方法があります。

「居ぬき物件」とは、元が宿泊施設や飲食店であった物件のことです。

この場合、既に宿泊業の経営に必要な設備が設置されている例が多く、必要最低限の改築で開業を始めることができるため、コストを大幅に節約することができます。

ただ、過去に許認可を取得済みであっても運営法人が変わる場合は再度申請が必要なため、その点の注意は必要です。

許認可を受けている物件から買収する

その他、すでに許認可を受けている物件を買収するという方法もあります。

この場合は既存の運営会社ごと物件を買い上げる形であるため、再度許認可を申請する必要がなく、時間や手間を大幅にカットしてすぐに営業を開始することができます。

注意点として、買い上げる運営会社の資産・負債を引き継ぐことになるため、綿密な調査と計画を立てた上で買収をするか決定しなくてはいけません。

②開業に必要な申請手続きをする

物件を決定したら、開業の申請手続きを行っていきます。

申請は旅館業法によって定められた「営業を行う地域の都道府県知事や自治体で交付する旅館業営業許可証を取得する」ために行います。

このため、申請先は都道府県知事あるいは各自治体の担当窓口です。

申請の手順について次にご紹介していきます。

申請前に確認しておきたいポイント

まずは申請の前に3つの許可要件を満たしているかを確認しましょう。

この「許可要件」とは、営業の許可を受けるために必要な条件のことを意味します。

  • 施設の構造や設備が法令で定められた基準を満たしているか
  • 施設の設置場所が公衆衛生上適切であるか
  • 申請者が欠格事由に当てはまらないか

欠格事由とは「旅館業法や旅館業法の処分に違反して刑を受け、執行が終わった日から3年経過していない場合」「許可の取り消しを受けた日から3年経過していない場合」の2点です。

どちらかに当てはまる場合は認可を受けることができません。

また、施設の設置場所100m以内に学校や児童施設、教育福祉施設などがある場合も周辺環境の調和を損なう可能性がないかを確認する学校等照会手続きが必要です。

場合によっては許可されないケースもあるため、あらかじめそういった場所を避けるか旅館業法を扱う窓口で相談することをおすすめします。

申請の流れ

申請は一般的に、事前相談→申請手続き書類の提出→保健所の実地検査→営業許可書の交付という順序で進んでいきます。

ただ、この申請の手続きはそれぞれの自治体によっても異なりますので、詳細は申請先の窓口で確認する必要があります。

以下ではそれぞれの手続きについて解説していきます。

(1)事前相談

旅館業法の担当窓口は申請をスムーズに進めるために、事前の相談を推奨している場合が多いです。

事前相談では、施設が建築基準法や消防法を満たしているかどうかや立地場所、施設の図面などが確認されますので、あらかじめ施設概要に関する書類を準備しておくことをおすすめします。

(2)申請手続き書類の提出

事前相談を終えたら、申請手続き書類の提出に進みます。

ここでは旅館業営業許可の申請書、営業施設の概要・図面、消防法適合通知書、その他各窓口で指定された書類を提出し、1~3万円程度の手数料を支払います。

この際、審査に数週間~1ヶ月程度の期間がかかってきます。

(3)保健所の実地調査

申請後には保健所職員らが立ち入り検査を行い、建築基準法や各法令の基準を満たしているかどうかを確認します。

(4)営業許可書の交付

以上全ての審査が完了し、施設が定められた基準を満たしていることが確認されると営業許可証が交付されます。

事前相談から許可証が交付されるまでおおよそ数週間~数ヶ月程度の期間がかかります。

許可書の交付で営業の認可が下りたことになりますので、ここでようやく開業までの手続きがひと段落します。

③従業員への勤務制度の整備をする

ここまでの手続きで施設自体の開業準備は整ったことになります。

しかし、開業のためには営業開始までの準備として、従業員の確保と勤務制度の整備も行わなければなりません。

宿泊業を営むにあたって、
人材の採用と育成は非常に重要
です。

従業員が行うサービスの質が、そのまま宿泊施設全体の質として評価されてしまうからです。

さらに、宿泊業界全体が悩まされている問題として、従業員の離職率の高さによる人手不足があります。

(参考:厚生労働省「平成29年雇用動向調査結果」

こうした状況の中で、より多くの人材を確保して離職率を下げ、内部で優秀な従業員を育成していくために勤務制度の整備が必要不可欠なのです。

整備のポイントである3つの点について最後にご説明します。

勤務時間

宿泊業はその性質上、どうしても長時間の勤務になってしまうことが多いです。

しかし、長時間労働は従業員の肉体的・精神的疲労からサービスの質の低下を招くだけでなく、離職を考える要因にもなりかねません。

必ず労働時間に見合った残業代を支給する、長時間の勤務を避けるためシフトの調整を行う、勤務間インターバル制度を取り入れるなど、従業員が安心して働ける労働環境を取り入れるようにしましょう。

福利厚生

福利厚生を充実させることも、離職者を減らす一つの方法です。

福利厚生の充実と言うと、一般的に手当ての支給や育児休暇・特別休暇の有無などがイメージされますが、福利厚生で人気を集めている宿泊施設の運営法人では、従業員に対して保養施設の無料優待券やマッサージ無料券の配布をするなどユニークな方法も考案されています。

会社の特色が出る福利厚生だからこそ、従業員の目線に寄り添ってどのような福利厚生が魅力的か考えてみるのも良いでしょう。

待遇

人材の確保には待遇を整えることも重要です。

宿泊業に雇用できる潜在的な人材層として若手や主婦層などが挙げられます。

若い人材を確保するために、実績に応じた昇給制度の整備や積極的な正社員への雇用などの方法が有効です。

また、希望者には語学研修や宿泊業のマネジメント研修などスキルを磨ける制度を整備することも長期的にやりがいを持って働ける環境づくりとしておすすめの方法です。

主婦層に対しては短時間勤務やパート採用、日中のみの勤務など育児と両立しやすい勤務体制を整えることで人材を集めやすくなるでしょう。

まとめ

施設の許認可を受け、従業員の勤務体制を整備して初めて宿泊業をスタートする準備が整ったことになります。

しかし、宿泊業を経営する法人を新たに設立する場合はさらに会社設立の手続きが必要です。

法人として登記する必要があるということです。

「会社設立の手続きは専門性が高く面倒…」「経営や起業準備に時間を割きたいため、登記の手続きは代行会社に頼みたい…」という方は会社設立を専門家に代行してもらうことを検討してみてはいかがでしょうか?

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特に宿泊業での起業は、最初の資金計画が非常に大切です。

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記事監修者の情報

税理士法人
経営サポートプラスアルファ

代表税理士 高井亮成

保有資格:税理士・行政書士

税理士の専門学校を卒業後、会計事務所に入社。
その後、税理士法人に転職をして上場企業や売上高数十億円~数百億円規模の会計税務に携わる。

現在は税理士法人の代表税理士として起業・会社設立をする方の起業相談からその後の会計、決算、確定申告のサポートを行っている。