融資コンサルタント
資金調達コンサルタント
似たような名前ですが、「融資 コンサルタント」と検索すると数多くの専門業者がヒットします。
融資コンサルタントとは金融機関からの融資を受けやすくしてくれる専門家と言った意味のようです。
あえて抽象的に表現したのは、融資コンサルタントの定義や、該当するコンサルタントと称する業者が千差万別だからです。
そこで今回は「融資コンサルタントは融資を受けるために必要か?」をメインテーマにして、
- ・融資コンサルタントとは?
- ・融資コンサルタントのメリット、デメリット
- ・融資コンサルタントとの付き合い方や注意点
これらについて、融資審査をする銀行員の視点で解説していきます。
Contents
融資コンサルタントとは?
融資コンサルタントとは、銀行や日本政策金融公庫などで事業資金を調達する際のサポートをしてくれる専門家の総称です。
「融資コンサルタントとは金融機関からの融資を受けやすくしてくれる専門家と言った意味のようです。」
冒頭このように説明したのは、融資コンサルタントの定義や社会的位置づけが現実的に定まっていないからです。
では、まずそのあたりから解説していくことにします。
融資コンサルタントはどのような資格?
実は「融資コンサルタント」という資格は存在しません。
税理士、公認会計士、司法書士、行政書士、弁護士といった「士業」(武士の士がつくことから俗にサムライ業とも呼ばれます)公的資格ではありません。
またFP(ファイナンシャルプランナー)など社会的に認知された資格でもなく、あくまで呼称に過ぎません。
実際には税理士や公認会計士などが、顧問契約を結んだ顧客に対して融資の相談に乗る形態が多く、こうした税理士事務所置ける融資に詳しいスペシャリストを「融資コンサルタント」と表現しています。
また「資金調達のお手伝いをします」と標榜して、融資相談やアドバイスを行うコンサルタント業者も自らを「融資コンサルタント」と称しています。
もっともこうしたコンサルタント業者のケースでは「資金調達コンサルタント」といった呼び方も混在し(こちらも公的資格ではありません)、よりわかりにくくなっています。
ここまでまとめると
「融資コンサルタントという公的資格、社会的に認知された資格はない」
「融資の相談に乗る士業やコンサルタント業者が融資コンサルタントと自称している」
このように言えます。
「融資コンサルタント」をするには免許が必要?
融資コンサルタントについて、その定義は前述したとおり、かなりあいまいなところがあります。
いっぽうで、法律(貸金業法)に照らし合わせると、融資を受ける支援をして成功報酬を受け取るなら、免許が必要になるケースも想定されます。
なぜなら「コンサルタント」とは、あることがらについて助言や指導を行う専門家のことです。
ですから融資コンサルタントが融資の相談ごとに応え、アドバイスをする延長で融資がじつげんしたら成功報酬を受け取るのも、違法だとは言えません。
いっぽう事業資金融資を、銀行との間に、しかも前面に立って積極的に主導するようなケースは「金銭の貸借の媒介」となり、これを仕事として行うには国や都道府県知事の登録、つまり貸金業者の免許が必要になるのです。
筆者がネット検索した限りの感想ですが、融資コンサルタントのサイトではこのあたり、融資の媒介なのか?
単なる相談なのか?わかりにくいのが実態です。
この点は融資コンサルタントの問題要素なのですが、後半で詳しく触れます。
私は融資コンサルタントを真向否定するつもりはありませんが、こういった点にも注意が必要だと考えます。
貸金業法 第一章 総則 第二条
この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。
貸金業法 第二章 貸金業者 第三条
貸金業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては内閣総理大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。
<引用 金融庁/法令・指針等/法令検索/貸金業法
融資コンサルタントのメリット、デメリット
では次に融資コンサルタントを利用することでのメリット、デメリットを解説します。
融資コンサルタントのメリット
融資コンサルタントの主なメリットは以下の3つです
<融資コンサルタント 3つのメリット>
- 融資を申し込む準備がしやすい
- 金融機関からの課題を一緒に解決してくれる
- コンサルタント以外のサポートも受けられる
融資を申し込む準備がしやすい
経験がない人が、自分1人で金融機関に行き融資申し込みをするのはなかなかハードルが高い場合があります。
何が必要か?なにを聞かれるのか?など、予備知識が無いとスムーズにことは運びません。
もちろん銀行や日本政策金融公庫などの金融機関も丁寧に教えてくれますが、資料が足りずに何度も来店することになれば、手間も増えますし融資を受けるまでに時間もかかってしまいます。
その点融資コンサルタントに相談すれば、こうした事前準備をサポートしてもらえるのでスムーズに運びます。
融資コンサルタントを称する税理士、公認会計士といったプロフェッショナルなら知識は豊富で、また仕事として銀行融資への造詣が深いので、申し込み前に必要な書類をアドバイスしてもらうことが可能で、申し込みがスムーズに運ぶでしょう。
金融機関からの課題を一緒に解決してくれる
融資を申し込んでもその場で即OKとなることはほとんどありません。
提出した書類や資料をもとに審査をしますが、通常でも数日から数週間、長い場合は数ヶ月時間を要する場合もあります。
また、審査の途上で金融機関から
「提出資料にある〇〇について、さらに詳しい資料をお願いします」
「事業計画が3年分ですが、さらにあと5年分の事業予想を作成してください」
など課題(宿題)を要求される場合があります。
当然ながらこの課題をクリアしなければ融資は実現できないので、申し込んだ人はまた資料作りに追われます。
このような場合でも、融資コンサルタントと手を組んでいたなら追加資料の作成をサポートしてもらい、過大を解決できるのです。
コンサルタント以外のサポートも受けられる
融資コンサルタントは、融資を受けるサポートだけでなく経営全般、決算や財務内容の改善などさまざまなアドバイスも受けられます。
なんといっても税理士などのプロフェッショナルなので、多角的かつ総合的なサポートも期待できるのです。
融資コンサルタントのデメリット
融資コンサルタントの主なデメリットは以下の3つです
<融資コンサルタント 3つのデメリット>
- 金融機関から敬遠される
- 契約の範囲を越えると追加料金も
- 本当に専門分野か?確認が必要な場合も
金融機関から敬遠される?
融資コンサルタントと契約した場合、コンサルタントが前面に出てくるようだと、金融機関の融資担当者は「引いて」しまいます。
融資申し込みに来店したいとアポの電話があり、申し込む人が来店してきますが、このとき「融資コンサルタント」が同席していれば、私は間違いなく身構えます。
銀行は守秘義務、個人情報保護に厳正に対処していますので、来店前に本人からコンサルタント同席の断りがあればまだしも、いきなり同席されれば敬遠せざるを得ません。
顧客と腹を割って真摯に対応したいのに、コンサルタントが同席していると(申し訳ないとは思いますが)邪魔でしかありません。
融資を受けやすくする業者と一緒に来るのは、最初から業者の力を借りる(利用する)意図が見えますので、そもそも申し込む人の熱意などにも疑問を感じてしまいます。
また、同席ですらこうした拒絶反応が起こる恐れがありますので、来店アポの時点から業者に丸投げしたり、来店申し込みも業者に一任したり(実際にあったと同僚から聞いたことがあります)しては論外です。
融資審査はまず通らないでしょう。
なお、同席者が税理士や公認会計士などの士業であれば話は違います。
これは決して差別しているわけではありません。資格のある専門家が業務の一環として融資相談に同席する、意見やサポートをするのは金融機関もむしろ歓迎します。
融資コンサルタント業者が前面に出てくると敬遠される
税理士などプロフェッショナルが同席すると歓迎される
この点は違いがあることを是非覚えておいてください。
契約の範囲を越えると追加料金も
「メリット 金融機関からの課題を一緒に解決してくれる」でも説明したとおり、融資審査では追加の資料作成が必要になる場合もあります。
このときに、契約内容を事前にしっかり確認しなかったために、追加料金が発生する場合もありますので注意が必要です。
また、追加費用が発生しても料金に納得して追加サービスを依頼して無事審査が通ればまだいいのですが、そもそも契約は最初だけで終わり、追加サービスは一切なしだったとすれば、いきなり自分だけで対処しなければいけない羽目にもなりかねません。
もしそのような事態になっても、契約は契約なのでどうにもならないでしょう。
本当に専門分野か?確認が必要な場合も
当社のサポートで融資や金利優遇などのサービスを受けることができます。
金融機関と貴社との結びつきを強めるため、金融機関に同行いたします。
いくつか金融機関とのパイプを持っているようなコンサルタントさんとか。そういう融資に強い人脈があるからこそ、
資金調達支援
着手金10万円+成功報酬(資金調達額の5%)~
※稼働内容に応じて料金が変動。
融資コンサルタントとの付き合い方や注意点
ここからは融資コンサルタントとの付き合い方や注意点を解説していきます。
契約する前に確認しておくべきポイント
融資コンサルタントとの契約をする前に、いくつか確認すべきポイントがあります。
もちろん契約するかしないかは自由意志ですし、注意すべき点はここで説明した以外にも多くあります。
必ずしっかりと確認して慎重に判断してください。
<融資コンサルタント 契約前に確認しておくべきポイント>
- 業務の範囲~できること、できないことが明示されているか?
- 契約の範囲~基本料金でどこまで、追加料金の有無など
- 許認可は必要な業務か?必要なら許認可はあるか?
業務の範囲~できること、できないことが明示されているか?
検討している融資コンサルタントはなにをしてくれるのか?できること、できないことが明示されているか?
まずこの点を確認する必要があります。
たとえばある融資コンサルタントのサイトでは業務の範囲について次の記載がありました。
<支援内容
・ヒアリング
・調達戦略策定・手法の決定(出資・融資等)
・調達候補リストアップ
・資料作成サポート
・候補先への打診・交渉・クロージングのサポート>
(*例として使用するのみなので引用先は掲載せず)
これを読んでもハッキリ申し上げると、私には何が書いてあるのか良くわかりません。
「調達戦略策定・手法の決定(出資・融資等)」とは借りるのか?借りないのか?いくら?どこで借りるのか?などのことだと思われますが、これはもう決まっているはずです。
「調達候補リストアップ」とはどこに申し込みするか?で、こちらも決まっているはずです。
すべての融資コンサルタントが同じとは言いませんが、内容はしっかり確認しましょう。
また、基本的にはこうした重要な情報はサイトにわかりやすく明示するべきですし、仮にわかりにくく電話などで問い合わせしても回答に納得できなければ、オススメできません。
契約の範囲~基本料金でどこまで、追加料金の有無など
こちらも同様に、ある融資コンサルタント業者のサイトにある記載です。
<資金調達支援 着手金10万円+成功報酬(資金調達額の5%)~
※稼働内容に応じて料金が変動。>
(*例として使用するのみなので引用先は掲載せず)
これだけの記載ではどこまで面倒見てくれるのか?全くわかりません。
確認はしていませんが、こうした「ぼやかした」記載をする業者では契約範囲、料金など不透明だと予想されます。
許認可は必要な業務か?必要なら許認可はあるか?
前述したとおり、仕事として融資のあっせんをするのであれば貸金業者として登録が必要になります。
ネット検索した限りの情報ですが、融資コンサルタントを標榜するサイトで貸金業者は見つけることができませんでした。
この点から、現在融資コンサルタントを名乗っている会社はあくまで融資の相談に乗る、融資のついてのサポートをする、と解釈しています。
とはいえサイトの中には
「当社に依頼して頂ければ融資審査を通します」
「当社の人的パイプで、融資審査が有利になります」
などといった記述もありますが、これらは貸金業法に照らし考えると疑問を覚えます。
いずれにせよ許認可が必要なのに取得していなければ、それは違法となりますので注意が必要です。
融資コンサルタントでなくても、信頼できる会社なら力になってくれます~まとめ
ここまで融資コンサルタントについて解説してきました。
ネガティブな話しも多くなりましたが、決して融資コンサルタントのすべてを否定するものではありません。
しかしながら、現在のところ法整備や社会的認知度も充分ではなく、また悪質な業者もいるせいで、融資コンサルタントとの付き合い方には注意が必要です。
ちなみに、信頼できるプロフェッショナルなら融資だけでなく事業全体を総合的にコンサルティングしてもらえます。
融資コンサルタントを標榜していなくても、融資のコンサルタントをしてくれるプロフェッショナルはいるのです。
たとえばこれから会社設立を考えている人には「税理士法人経営サポートプラスアルファ」がオススメできます。
業務内容は明確ですし、専門分野もハッキリと説明されていますので、サイトは一読の価値があります。