税理士が経営コンサルティングをすることは可能?転職やキャリアアップしたいなら
2020年09月29日
今後税理士はどうなっていく?
近年税理士という職業が将来なくなっていくと言われ始めています。
クライアントが獲得しにくくなっている
その理由は「AIの発達」「不景気によるクライアント不足」などが当てはまります。
最初に結論を言いますが、「税理士という職業はなくなることはあり得ません」ただ、従来通りの仕事のありかたは確実になくなっていきます。
いままで税理士業務とは税務処理を行うだけで毎月かなりの顧問料を確保することができていました。
これは経済が成長していた最中で企業全体が利益をどんどん出していたため、節税対策として税理士に払う高額な顧問料も税務処理に価値を見出していたからです。
しかし不況が続いている現在、利益を大幅に出して節税が必要な中小企業は多くありません。
AIの発達で仕事がなくなる
しかもAIの発達で簡単な経理や記帳程度なら人がわざわざやっていた仕事をすべてAIが代わりにやってくれるようになります。
そのため経理の延長である税務処理のためだけに高額な顧問料を払うことは、企業側からしたら無駄な費用になるため削減の対象になっているのが現状です。
今までのような税務処理だけでは、現在のニーズに的確にこたえられているとは言えません。
今税理士に求めているのは税務処理に加えて普段の経営面でのコンサルティングが必要不可欠な要素になってきています。
税理士もその仕事内容に大きな変化が必要になってきています。
その変化する仕事で必要になってくるのは、「コミュニケーション力」「経営知識」「ヒアリング能力」などの対人スキルと知識です。
税理士が経営コンサルタントをすることは可能?
最初に結論からいいます。
税理士が経営コンサルタントを行うことは可能です。
ただ、漠然と試算表の数字だけをみて経営についてコンサルタントを行うことは不可能です。
数字だけをみてコンサルタントをするのなら別に税理士である必要はなく、試算表の数字だけでは適切なコンサルティングを行うことはできません。
では、税理士が適切なコンサルタントを行うためにはなにが必要でしょうか?それは「経験」「知識」そして「スキル」です。
ここでいう知識とは税務に関する知識だけでなく、コンサルティングを行う企業に関する商品の知識、経済についての知識など多角的な要素が求められます。
また、知識というのは事前にすべて知っている必要はなく顧客に教えてもらうことも多いです。
税理士が必ず顧問先でやっておかなくてはいけないことが実は2つだけあります。
・経営者が一番こだわりを持っているポイントについて尋ねる
この2つは顧問先を訪れた際は絶対にしておく必要があります。
クライアントへの対応力が求められる
大前提として税理士は税務に関してはプロフェッショナルですが、商売、経営、顧客の扱っている商品に関しては専門家とは言えません。
そのため、顧客に何かを教えるという立場ではなく、「顧客から経営、商品、商売について教えてもらう」という立場をとることが非常に大切です。
特に中小企業の経営者はかなり強いこだわり、自身のストロングポイントというのを誰よりも理解しています。
そのことをまずは教えてもらい、そこから利益を出すためにどのようなことが必要か、経費はなにが削減できるのかについてなど具体的な話を行っていくことが重要になってきます。
コンサルタントに必要な傾聴力を鍛える
また、ここで経営コンサルタントを行う上で勘違いしてはいけないことがあります。
それは「顧客は常に回答を求めているわけではない」ということです。
これを聞いて「え?なにか顧客は常に悩みがあって答えを欲しているんじゃないの?」と思う方もいると思います。
ですが、経営者は常に多くの悩みを抱えており自分の中でも何が一番今必要なのか?何に対しての答えが最も求めているのか?というのはわかっていません。
では税理士はここでどのように行動すればいいかなんですが、それは「ひたすら経営者の話を深堀すること」です。
極端な話ですが、1つのトピックに関して「それはどうしてなんですか?」と聞くだけでかなり違います。
1つのトピックに対して「なぜか?」という問いを行うことによって、経営者は自分の中でそのトピックについてより深く考えます。
その考えていく中でそのトピックの問題はなにか?優先順位はどのくらいなのか?などが整理されていきます。
このように経営者の考えをどんどん整理していくことこそが税理士が経営コンサルタントを行う上でもっとも大切な付加価値です。
「君と話をすると考えが整理されるんだよね。
」と顧客に言ってもらうことができれば顧問料は税務処理に対しての経費ではなく、自分の考えを整理するための投資という側面を持つため価値が一気に生まれます。
税理士が経営コンサルに携わる方法は?
税理士が経営コンサルに携わる方法はいくつかあります。
・独立開業して税理士事務所を開く
・新たな資格を取得する
などが挙げられます。
コンサルティングファームに入社(転職)する
コンサルティングファームとは、企業の抱える経営課題に関して解決まで導く企業のことを言います。
一口にコンサルティングファームといってもその幅はかなり広く、シンクタンク型、総合型、IT特化型、人材型など様々な分野があります。
その中で税理士の資格を持っていることを生かして、企業の経営課題を解決していくような企業に転職するのも1つの選択肢としてはありですね。
開業し、ワンストップのサービスを提供する
次に、自分で独立開業することで顧問先の経営コンサルを行う方法です。
税理士の資格を持っている場合、このパターンが最もシンプルに経営コンサルティングに携われる方法です。
ただ、開業資金や顧客の獲得など自分一人で何もかもしなければならないので、ある程度の経験や人脈が必要不可欠といえます。
独立開業した場合は、顧問先のほとんどは中小企業になります。
そのため中小企業ならではの知識が必要になってきます。
開業することの最大のメリットはワンストップでサービスを提供できるので、顧客にかかる負担を大幅に減らすことができることです。
新たな資格を取得する
最後に新たな資格を取得することですが、資格=仕事ができるわけではありません。
しかし、資格を持っていることで新たな仕事の幅が広がったり、その資格を持っていることで優先的に情報を手に入れることができたりします。
そのため資格を持つことで様々な角度からの情報、知識が手に入りやすくなるため経営コンサルに役立つことは間違いないです。
特に持っていると役立つ資格は、「中小企業診断士」と「フィナンシャルプランナー」です。
フィナンシャルプランナーは税務だけでなく社会保険や生命保険など、間接的に税務に関する知識を幅広く得ることができるのでおススメです。
資格自体の難易度もめちゃくちゃ高くはないので、持っておいて損はないです。
中小企業診断士は資格の取得は1年間しっかりと勉強をする必要がありますが、経営コンサルについては役に立つ場面が多いです。
今回のコロナの助成金や補助金についても、地元の中小企業診断士の方には他の職業の方よりも1足早く情報が流れてくるなど独自の情報網があることも強いです。
税理士が経営コンサルタントを目指す際の注意点
税理士が経営コンサルをしていくうえでの注意点があります。
・能力の高さ=顧客満足度
注意しなければならないのは「税理士や行政書士などの士業の独占業務」についてです。
国によって士業は独占業務が決められており、その資格を有さないものがその業務を行うことは禁止されています。
税理士の独占業務を理解する
税理士の独占業務は主に以下の3つです。
・税務書類の作成
・税務相談
申告書の作成や節税に関するアドバイスは実は税理士の独占業務にあたるため、資格を持っていない人はしてはいけません。
税理士の資格を持たずにコンサルを行う場合は注意が必要です。
行政書士の独占業務はちょっとあいまいでややこしいのですが、コロナの補助金の代理申請で報酬をもらうことなどが該当しています。
税理士でも知らずに行ってしまっている可能性が十分ありますので、しっかりと独占業務にあたるかどうかは確認してから経営コンサルは行う必要があります。
税理士の能力を過信しない
また、勘違いしてほしくない点ですが能力が高い=顧客満足度が高いことではありません。
いくら税理士の能力が高くても顧客が満足に感じなければその仕事は一切評価されません。
税理士でコンサルをしている方にも勘違いされている人がたまにいますが、あくまで経営コンサルはサービス業の一環です。
第一に顧客の満足度が優先され、経営コンサルの能力が1番重要ではありません。
もちろん能力が高いことが顧客満足度の高さにつながることも多いですが、必ずしもイコールではないことを頭に入れておいてください。
まとめ
今回は税理士の経営コンサルティングについて解説しました。
結論を言うと、税理士が経営コンサルティングをすることは可能ですし、これからよりニーズのある分野です。
ですが、経営コンサルティングは従来の税務処理とは全く違った「コミュニケーションスキル」や「ヒアリング」といった能力が求められます。
また、経営コンサルティングに携わる方法も多岐にわたっており必ずしも税理士として経営コンサルを行うことにこだわる必要もありません。
その他の資格を取ることでより適切なコンサルをしていくのも1つの方法です。
税理士だからといって経営コンサルが簡単にできるわけではないですが、今後よりニーズが増えてくるのは間違いありません。