会計事務所で全員退職はよくある?その理由や退職がお勧めの状況を解説

2020年10月12日

会計事務所は、職員が5~10人程度の小規模事務所が全体の9割を占めています。

仕事が回るギリギリの人数で運営している、というところも珍しくないでしょう。

少人数で運営している事務所は人間関係も密になりやすく、経営方針のトラブルなどで急に全員が退所してしまうこともあります。

そこで今回は、会計事務所で職員が一度にやめてしまう理由や、とどまるべきか、続けて辞めるべきか、判断するポイントなどを解説しましょう。

会計事務所で全員が一度に退職する例は珍しくない

はじめに、会計事務所ではなぜ、職員が一度に退職することがあるのか、その理由を具体的に説明していきます。

小規模な事務所は人間関係が密になりやすい

前述したように、会計事務所の9割が5~10人程度で運営されています。

経営者とその家族、職員が1~2人という構成も珍しくないでしょう。

小規模な事務所は人間関係も密になりやすいものです。

職員と経営者が良好な関係を保っていればいいのですが、何かのきっかけで関係がギクシャクすると、仕事にも支障がでてきます。

職員と経営者の関係が悪化するきっかけになりやすい理由には、次のようなものがあります。

経営方針のぶつかり合いがある

小規模な事務所は、経営者の一存でがらりと経営方針が変わることもあります

職員と経営者が話し合った結果ならいいのですが、ワンマンの経営者だと、独断で決めてしまうこともあるでしょう。

その結果、職員が「ついていけない」とそろって退職することもあります。

待遇が悪い

職員が10人未満の会計事務所の場合、社会保険はもちろんのこと、労働保険すら無加入名ところもあります。

また、給与も低く新人教育も満足に行わないところもあるでしょう。

そのため、職員が待遇に不満を抱いて一斉に退所するということもあります。

代替わりがある

小さい会計事務所の場合は家族経営のところが多く、親から子へ経営が譲渡されることもよくあります

歴史がある事務所の場合、「親の代から務めている」という職員がいることもあるでしょう。

跡継ぎの子供のことも、小さい頃から知っているということもあります。

気安い間柄になりやすい一方、職員が代替わりした経営者のいうことを聞かずに好き勝手仕事をする、というケースもあるでしょう。

そこから軋轢が生まれ、職員の一斉退職に繋がる事例もあります。

ヘッドハンティングで一斉退職もある

優秀な職員は、どの会計事務所ものどから手が出るほどほしがっています。

小さい会計事務所に優秀な職員がいる場合、中規模、大規模の会計事務所がヘッドハンティングすることもあるでしょう。

その結果、一斉退職に繋がることもあります。

会計事務所で次々と退職者が出るとどうなる?

では、会計事務所で退職者が相次いだ場合、経営はどうなってしまうのでしょうか?

この項では、実際に起こる可能性が高い事例を紹介していきます。

最終的には経営が立ちゆかなくなってしまう

職員が5人~10人の小規模な会計事務所の場合、2人以上の職員が一度に辞めると、経営はかなり大変になります。

現在は人手不足なので、求人をかけてもなかなか人が来ません。

税理士や公認会計士の資格を持つ人ならば、なおさらです。

また、一度に複数の職員が辞表を出した場合、以下のような負のスパイラルになることもあるでしょう。

残った職員の負担が増える

職員が辞職して欠員の補充ができない場合、残りの職員で仕事を回して行かなければなりません。

1人1人の負担は増え、長時間の残業が続くこともあるでしょう。

仕事が回っていると欠員が補充されない

事務所の経営で、最もかかる経費の1つが人件費です。

今まで5人で回していた仕事が、3人でも回るならば経営者は欠員を補充したがりません。

職員が忙しさを訴えても経営者が曖昧な返答を続ける場合は、欠員を補充したがっていない可能性が高いでしょう。

職場のブラック化が進む

社会保険だけでなく労働保険すら未加入の事務所ならば、残業代も払われないこともあります。

酷い場合は、仕事を家に持ち帰って行うように指示されることもあるでしょう。

こうして、低い賃金と長時間労働という職場のブラック化が進んでいきます。

残った職員も辞めていく

会計事務所のブラック化が進めば、残った職員のやる気もなくなります。

特に、転職にも有利な資格を持っている職員は、早々に退職するかもしれません。

ここで経営者が慌てだしても、事務所の経営が立て直せる可能性は低いでしょう。

経営者と家族だけでこの苦境を乗り切り、新しい職員が入ってくるまで持ちこたえなければ、事務所は立ちゆかなくなります。

会計事務所を退職する理由

ここでは、会計事務所を退職するきっかけとなった理由の代表例をご紹介します。

どのような理由が退職を決意させるきっかけになるのでしょうか?

実際に当社の事例を参考にしつつ、多い例をあげていきます。

人間関係の悪化

前述したように、少人数の事務所は人間関係が密になりやすいものです。

そのため、一度人間関係が悪くなってしまうと、以下のような悪影響が出ることもあります。

パワハラ

上司との関係が悪くなると、パワハラに繋がることもあります。

小さい会計事務所ですと、上司が経営者を兼ねているところもあり、どこにも相談ができずに辞職しか選択肢がないこともあるでしょう。

職場内いじめ

同僚との関係が悪化すると、職場内いじめに繋がることもあります。

特に、関係が悪化した同僚が経営者の家族だと、事務所内で孤立することもあるでしょう。

仕事にも支障が出てくれば、退職が一番の解決策になります。

代替わりした経営者とうまくいかない

歴史ある会計事務所の場合、親から子へ経営が引き継がれることもあります。

その際、新しい経営者と古い職員達の意見や仕事のやり方が合わなくなることもあるでしょう。

特に、先代のやりかたをがらりと変えてしまうと、職員からの反発が強まって一斉辞職の引き金になることもあります。

仕事の不満

仕事の不満も退職のきっかけになりやすいものです。

特に、以下の挙げるようなことがあると辞職が一番の解決策と考えてしまいます。

引き継ぎや新人教育が不十分

税理士や公認会計士の資格を持っていても、仕事のやり方を教えてもあわなければ実力は発揮できません。

しかし、小さい会計事務所ですと目の前の仕事をこなすのに手一杯で、教育や引き継ぎにまで手が回らないこともあります。

その結果、指示がないまま仕事をして失敗し怒られる、といった悪循環に陥ることもあるでしょう。

新人は教育が不十分で仕事ができず、古参の職員はなぜ仕事ができないのだ、とイライラしてしまい、職場の雰囲気も悪化します。

仕事が忙しすぎる

職員の人数に対し仕事が多すぎると、残業や休日出勤が当たり前になってしまいます。

いくら給与がよくても、休みなしで働かされる職場では、心身が疲弊してしまうでしょう。

待遇の不満

小さい会計事務所は福利厚生が不十分なところも多く、昇給もそれほど期待できません。

また、残業代も十分に払われなかったり退職金がなかったりすると、「転職したい」と考えるようになりがちです。

さらに、仕事が減っていたり顧客が離れていったりすると、将来性にも不安を感じることでしょう。

これも、退職のきっかけになります。

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円満に会計事務所を退職する方法

小さい会計事務所ほど、退職するのは大変です。

特に、複数の職員が一気に退職したいといってきた場合、なりふり構わず引き留めに入ることもあります。

この項では、スムーズに退職するためのポイントを紹介しましょう。

退職する意思が固いことを示す

迷いを見せると、経営者はあの手この手で引き留めてきます。

それを防ぐためには以下のようなことを行いましょう。

退職の理由をきちんと説明する

退職の理由を「一身上の都合」と濁してしまうと、経営者は納得しません。

勤め続けられない理由をきちんと具体的に説明しましょう。

できれば、「自分の力を伸ばしたい」など、前向きな理由がおすすめです。

退職願ではなく、退職届を出す

退職願だと、「待遇を改善したり強く説得したりすれば相手は思いとどまる」と思われがちです。

退職の意思がはっきりしていることを示すには、「退職届」を出しましょう。

民法では、退職届を出して2週間たつと雇用契約は終了します。

受理されなくてもかまいません。

給与を上げるなどの甘言に乗らない

給与を上げる、昇進させると言われると、決心が揺らぐかもしれません。

しかし、退職を盾にそのようなことをしたとなると、退職を思いとどまっても確実に働きにくくなります。

また、同僚との関係もギクシャクするでしょう。

退職を撤回したとたん、経営者が掌を返すこともあります。

退職しても大丈夫と経営者を安心させる

事務所が立ちゆかなくなれば、経営者も生活に困ります。

円満に退色するには、自分が退職しても問題ないことを以下のような方法で示しましょう。

繁忙期に退職は避ける

確定申告の時期など、繁忙期に退職は避けましょう。

可能ならば繁忙期の前に経営者に退職の意思を伝え、繁忙期が終わった後に退職するのがおすすめです。

引き継ぎをしっかりとする

残った職員に引き継ぎをしっかりとしましょう。

可能ならば文章やデータでマニュアルを残しておくのが良いです。

まとめ

ここまで記事を読んでいただければ、小さい会計事務所ほどまとまって職員が退職されると大変になることがおわかりいただけたと思います。

こうなると、会計事務所はブラック企業になるか、立ちゆかなくなって事務所をたたむか、新しい職員が入ってきて体制を一新するかの3パターンしかありません。

長らく勤めてきた事務所ですとしがらみも多いでしょう。

しかし、いつまでも将来性のない事務所に勤めていてもキャリアの無駄遣いです。

「もうこの事務所はダメだ」と思ったら、積極的に転職活動を行いましょう。

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