今回は店舗を新しく始めるにあたって必ずと言ってもいいほど費用が発生する”保証金”について焦点をあてていきます。
店舗を立ち上げるためには数百万円から一千万円ほどの費用が必要となります。
その中には必ず保証金というものが含まれており、保証金の金額は各物件によって異なります。
店舗を始める際に掛かってくる費用なので、これから店舗を始めようとしている方は必ず把握しておくべきです。
今回はそもそも保証金とは何かを踏まえ、保証金の相場や気を付けるべき点について詳しくご紹介していきます。
Contents
保証金とは
保証金というのは、後ほどご説明する”敷金”と意味合いとしてはほとんど同じです。保証金という制度は、主に関西地方で、賃貸用の店舗以外にも一般住宅の賃貸物件でも保証金という名目で導入されています。
退去時に保証金から、「クリーニングや修繕費」、「家賃補填」、「償却費」を差し引いた金額が返金されます。
そのため、支払えば終わりということでもなく、一時的に預けるという意味合いが正しいでしょう。
クリーニングや修繕費
保証金は店舗を退去する時に使われます。
一般的な賃貸住宅においても、賃貸物件を退去する際には「クリーニング代」という名目で住宅内の清掃や修繕の為の費用として支払うことがありますが、それと同様のイメージです。
保証金の金額は、店舗を入居物件の家賃が高ければ高いほど、それに応じて高くなります。
また、店舗を退去する際に物件の状態が悪いことで想定以上のクリーニングが必要になったり、特殊な内装工事によって元の内装に戻すために難易度が高い工事を要する際には、最初に支払った保証金に追加で退去に費用が求められることもあります。
家賃補填
その他にも保証金の用途として挙げられるのが”家賃補填”です。
飲食店を通常通り経営出来ていて、問題なく売り上げを伸ばしている店舗であれば問題なく家賃を支払うことができるでしょうが、飲食店とは経営が非常に難しく、いつ経営が傾いてしまうのかがわかりません。
そのため、中には毎月の家賃の支払いが遅れてしまったり、支払いができなくなってしまうことがあります。
家賃が払えずにそのまま払うべき家賃を払わずに店舗を退去して逃げてしまう事業主もいます。
賃貸物件のオーナーからすれば、回収できるはずの家賃が回収できなくなってしまいますので、そのような緊急事態にもしっかりと対応できるように、事前に家賃が滞納されたときの保証金という名目で先んじて何ヶ月分かの家賃を回収しておくのです。
万が一、事業主から家賃が支払われなかった際には、保証金の中から家賃を支払ったことになります。
敷金
敷金は基本的に保証金と同じであり、名称の違いとも言えるでしょう。
その用途も保証金と同じで、退去後のクリーニング代や修繕費などに使われます。
一般的な賃貸住宅に入居する際にも必ずと言っていいほど”敷金”という言葉を耳にするでしょう。
償却費
償却費とは、一般的な賃貸住宅では求められませんが、店舗を始める際には無条件で敷金や保証金から差し引かれる費用のことです。
そのパターンも2つあります。
礼金のように入居する店舗がビルのオーナーにただ支払うだけのパターンと、店舗を退去する際の原状回復工事の費用に回されるパターンがあります。
それぞれのパターンの相場としては店舗の家賃の1ヶ月から2ヶ月分もしくは、保証金の約10%から20%ほどが相場とされています。
しかし、実際に支払う費用は店舗の家賃によって大きく異なるため、それぞれの物件に応じて変化します。
償却費の制度はそこまで数多くのオーナーが導入しているわけではありませんが、もともとは関西地方を中心に使われていたようですが、最近では関東地方でも徐々に導入しているところが増えてきているようです。
償却費を導入するかしないかは、オーナーの方針次第です。
店舗入居時の敷金や保証金の制度を設けていない代わりに償却費を設けているオーナーもいるようなので、後々にトラブルへと繋がらないためにも、入居する前に必ず初期費用で掛かるものを一通り確認しておくべきでしょう。
”償却費”ではなく、”敷引き”という名前になっていることもあるので注意しておきましょう。
店舗の保証金の相場とは
一般的な賃貸物件での敷金(保証金)の相場は、家賃の1ヶ月分、2ヶ月分と言われていますが、店舗の保証金の場合は最小でも3ヶ月、最大でも10ヶ月となっています。
実際に払う保証金の金額はそれぞれの店舗の家賃次第ですが、家賃の何ヶ月分を支払うかという点もかなり違いがあるのです。
物件を探す際には、内装の良さや広さ、家賃の金額はもちろんのこと、保証金が家賃の何ヶ月分なのかよく確認しておくべきでしょう。
店舗が保証金について気を付けるべきこととは
保証金についていくつか気を付けるべき点について紹介していきます。
保証金はすぐに返金されない
保証金の注意点として挙げられるのが、保証金が返金されるタイミングです。
一般的な賃貸住居の敷金や保証金が返金されるタイミングとしては、約1ヶ月から2ヶ月ほどが相場と言われています。
しかし、店舗の保証金に関しては一般的な賃貸住宅とは返金のタイミングが異なるのです。
店舗物件に限らず、一般の賃貸住宅においてもそうなのですが、実は敷金や保証金の返金時期は法律などで明確に定められてはいないのです。
完全に賃貸契約時に交わした契約に基づいて履行されます。
店舗の場合では、店舗を退去した後から返金されるまでの期間は約3ヶ月から6ヶ月と言われていますが、半年経過しても返金されないケースもあるようです。
店舗の保証金の返金の注意点として、返金されるタイミングが”退去後”ではなく、”賃貸契約終了後”から日数をカウントするといった点も忘れてはいけません。
つまり、店舗を退去した後に、その物件を実際には利用していない時期があったとしても、実質の契約上では賃貸契約が残っているので、保証金返金のカウントは開始されないということなのです。
そのため、よくある勘違いとしては、店舗を退去してから数ヶ月経っても返金がされないことに対して指摘をしたら、賃貸契約終了時期が自分が思っていたよりも後であり、結果としてオーナーとのトラブルに発展したというケースもあります。
全ては最初に契約をした時の話によって決まることなので、契約時はもちろんのこと、退去をする際にも再度確認をしておくべきと言えるでしょう。
全額は返金されない
先ほどもご紹介したように、保証金とは、保証金の金額から「クリーニングや修繕費」と「償却費」を差し引いた金額が残っていれば返金されます。
クリーニングや修繕の費用とは、”原状回工事復費用”と呼ばれており、その相場について簡単にご紹介しておきます。
・原状回復工事費用
原状回復工事費用とは先ほども記述したように、店舗を退去する際に元の内装の状態に戻すまでの内装工事にかかる費用のことであり、実際に支払う費用とはその店舗ごとの退去時の内装の状態によって変化してきます。
原状回復の工事にかかる費用の相場は1坪あたり約3万円から6万円が相場と言われていますが、オフィスの内装を良い状態に保っていたとしても、天井を抜いていたり手の込んだ内装にしてしまっている時には、工事の難易度が上がり相場よりも高くなってしまいがちなので注意が必要です。
次の移転先の保証金には回すことができない
先ほどの保証金の返済時期でご紹介したように、保証金が返金されるタイミングは賃貸駅役が終了してから約3ヶ月から6ヶ月となります。
もし次の移転先が決まっており、退去した直後から移転先で店舗をオープンさせたい場合には、遅くても入居する2ヶ月前には移転先物件との契約を締結しておかなければいけません。
次の移転先でも保証金の支払いが必要です。
もし、今の物件からの保証金の返金を原資としようとするならば、それはあきらめなければなりません。
時期的な問題として、今の物件の保証金の返金を待っていては、次の移転先に保証金を支払うタイミングを逃してしまうためです。
今の物件の保証金を頼りにするのではなく、新たに資金を用意して次の物件の保証金を支払う必要があるのです。
<最後に>店舗を構える際には余裕をもって資金を確保しておく
ここまでご紹介したように、店舗を構える際には保証金だけでもかなりの金額が必要となります。
もちろん、その他にも店舗の内装を改装する工事や装飾を揃えるために資金は必要です。
また、もしもの時のために、緊急時に使える資金も用意しておく必要があるので、飲食店を始める際には開業に必要な最低限を確保することはもちろん、それとは別で資金の調達や確保が望ましいでしょう。