石膏ボードや塗料を使って壁や天井を作り上げていく。
そんな光景を見たことがありますか?
そのような、壁や天井を作り上げていく工事を内装工事と言います。
何もない所から土台を作り、顧客の希望通りに内装を仕上げ、店舗が開業できる様にお手伝いをするのです。
この内装工事には具体的にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
特に起業・開業を考えている人にとっては気になるところだと思います。
そこで今回は、店舗内装の坪単価を詳しく解説します。
この記事を読むと「スケルトン」、「居抜き」など店舗内装について必ず知っておきたい情報が分かるようになっていますので、是非ともご覧ください。
Contents
店舗内装とは?
まずは、「店舗内装」とはどういったことを指すのかをご説明します。
店舗内装とは、お店の中身の事で、一般的には内装を作り上げるための工事を指します。
内装工事は、お店の雰囲気やレイアウトなどをイメージ化する「設計・デザイン」と出来上がった設計図をもとに工事を行う「内装・設備工事」に分かれます。
どちらも坪単価で計算し、費用を算出することが可能です。
スケルトン物件、居抜き物件の違い
店舗のタイプは大きく分けて「スケルトン物件」、「居抜き物件」の2つです。
スケルトン物件は、以前の内装を解体して壁も天井も無くなった状態で、真っ新から好みの内装に仕上げていくことができるという魅力があります。
開店準備中の店舗で壁や天井がむき出しになっているのを見たことがありませんか?
それは前の内装を解体した直後の状態です。
スケルトン物件はあの状態から工事をスタートすると考えてください。
一方、居抜き物件では前の内装を解体しません。
内装や設備、什器(日常的に使う備品や家具)もそのまま引き継ぐ物件の事をいいます。
既に出来上がっている内装を手直しするので内装工事が短縮でき、費用も抑えやすいというメリットがあります。
スケルトン物件、居抜き物件とも、それぞれメリットがあるので、自分の理想、予算にあっている方を選んでください。
店舗内装の坪単価相場
「スケルトン物件より居抜き物件の方が坪単価が安い」という事が分かっていただけたと思います。
一から自分の好きな内装を作り上げたいと言う場合は、スケルトン、できるだけ費用を抑えたいという場合は居抜き物件がおすすめです。
それぞれの一般的な坪単価は以下のようになります。
「設計・デザイン費」
工事に入る前に、顧客の希望をヒアリングしてイメージ化していくのが「設計・デザイン」の工程です。
イラスト、3D画像などを使ってイメージ化し、設計図を作成していきます。
この工程と「内装・設備工事」の工程をセットで行う場合と、分かれている場合がありますので、注意してください。
また、詳しくは依頼する店舗内装業者へ確認するといいでしょう。
1坪:3万円~10万円程度
「内装・設備工事費」
「設計・デザイン」で作成した設計図をもとに工事を進めていくのが「内装・設備工事」の工程です。
基本工事として、仮設工事、解体工事、造作工事、電気工事、空調工事、外装工事、設備工事を行い内装を作り上げていきます。
簡単に言うと、薄い鉄素材で天井・壁・床の枠組みを作り、石膏で塗り固め、壁紙、床素材を貼って土台を作成。
土台ができたら電気や空調がつかえるようにするといった感じです。
以下が、一般的な内装・設備工事費の費用相場です。
◆スケルトン物件:1坪 約30万~60万円
◆居抜き物件:1坪約25万~45万円
必要な設備は業種ごとに異なります。
レストランであれば調理や排水、換気用の設備に力をいれる必要がありますし、医療系であれば医療設備が必須です。
もちろん、設備を購入する為の費用もかかりますので、専用設備を多く用意しなければならない業種であればあるほど、設備費、設備工事費が追加されると思ってください。以下に相場を記載していますので、参考にしてください。
業種別の坪単価相場
業種 | スケルトン(坪単価) | 居抜き(坪単価) |
---|---|---|
飲食店 | 約20~50万円 | 約15~30万円 |
オフィス・事務所 | 約20万円~40万円 | 約10万~30万 |
店舗内装のポイント(スケルトン物件)
壁も天井もない所から工事ができる分、理想の内装に近づけやすいという点がスケルトン物件のメリットです。
しかし、自由度が高い分、しっかり考えておかないと莫大な費用がかかってしまったり、工事が長引き開店日に間に合わなかったりといったトラブルが起きかねません。
ポイントを抑えて不要なトラブルを減らしていきましょう。
こだわり過ぎず予算の80%で収まるようにする
理想を掲げすぎるといくらでも高額になっていくのが店舗内装です。
レイアウト、壁・天井・床の素材、塗料やインテリアなど選択項目は山のようにありますので、途中で多少上がっても問題がないように予算の80%程度に収まるように計画してください。
どうしても予算を超えてしまうのであれば、こだわるポイントを絞ってそこに費用をかけるようにしてください。
このようにすると、コンセプトの分かりやすい、メリハリのある内装を作り上げることができるでしょう。
ターゲット層に合ったコンセプトを考える
予算内で理想の設計・デザインを作成できたとしても、ターゲット層に受け入れられなければ売上にはつながりません。
事前にターゲット層に受け入れられる内装なのか調査を行いましょう。
ターゲットの要望とコンセプトがずれているようなら、改善案を出してすり合わせて行く必要があります。
動線を確保する
動線とは人の通る軌跡という意味で、店舗内で人が動くラインを表します。
動線を確保していない店舗では、顧客の動きが滞り、居心地を悪くさせてしまいます。
それは従業員に対してもいえることで、動線が確保されていない店ほど働きづらい職場はありません。
従業員のストレスや離職率の増加につながります。
設計・デザインの段階でどのような動きが予想されるのかを業者に伝え、スムーズに動けるような動線を確保できるように相談してください。
退去時の事も考えてレイアウトを決める
「店舗内装を作る前から退去時のことなんて考えられないよ」という声が聞こえてきそうですが、頭の片隅に入れておいてほしい情報です。
物件を解約し退去する際には、元の状態に戻すための原状回復工事を行う必要があります。
原状回復工事は、故意的な破損などが多ければ費用も上がりやすいのですが、レイアウトにこだわって壁やパーティションを増やすなど、元の状態から変更されていればいるほど、元に戻すための費用もかかってきます。
できればその点も考慮して店舗内装を構築してください。
退去時の事まで考えるというのは面倒だとは思います。
しかし、将来的には必ず節約になるポイントなので抑えておきましょう。
店舗内装のポイント(居抜き物件)
工事費用、工事期間を節約できる点が魅力の居抜き物件ですが、内装工事の方法によってはスケルトン物件よりも高額かつ長期間になってしまう可能性もあります。
内装を大幅に変えない
すでに記載したように居抜き物件は、以前の内装が残ったままの物件です。
少々変更する程度なら問題ないのですが、大幅にレイアウトを変えようとするとかえって費用が掛かってしまいます。
変更度合いによっては、スケルトン物件の方が安かったなんてことにもなりかねません。
居抜き物件を利用するのであれば、レイアウトをできるだけ変えず、そのまま利用できる物件を見つけて利用してください。
造作譲渡料
「居抜き物件なら設備や備品が無料で利用できる」と思い込んでいる方はいらっしゃいませんか?
実は、無料ではありません。
造作譲渡料という料金がしっかりかかります。
居抜き物件で最も見落としがちなポイントがこの造作譲渡料です。
造作譲渡料とは、居抜き物件の設備、什器を引き続き利用する為に必要な費用の事をいい、一般的な相場約は100〜300万と言われています。
オーナーによって料金は異なるので、必ず確認してから利用の可否を決めてください。
設備が作動するか確認
居抜き物件の設備は、あくまで中古品です。
次の利用者が使うまで長い時間眠っていた設備達は、突然おこされてビックリしたのか電源を入れた途端に壊れてしまったなんて話もよく聞きます。
正常に動いたとしてもどのくらい持ちそうかを点検し、最悪壊れた場合の対策も考えておく必要があるでしょう。
例えば、取り扱い業者に相談して壊れてもすぐに取り換えが利くように予約しておくといった感じです。
定期的な点検作業も必要になります。
開店間近で不具合に気づいてしまうとどうしようもありませんので、中古の設備には充分に注意してください。
退去時の条件に気を付ける
居抜き物件で特に注意が必要な退去時の条件です。
一般的には3~6カ月(オーナー側が指定)前に解約を申し入れ、必要な後処理をして解約、退去していくのですが、しっかり条件を確認していないと、後々大変なことになります。
例えば、退去時に「スケルトン渡し」が条件になっている場合です。
「スケルトン渡し」とは内装をすべて撤去して返却するということですが、なかなかの費用がかかります。
相場は、1坪あたり3~5万程度ですが、修復部分が多い居抜き物件は高額になりがちです。
居抜き物件の初期費用の安さだけにとらわれず、退去時の条件に問題がないかをしっかり確認する必要があります。
まとめ
スケルトン、居抜き、それぞれの坪単価の違いや抑えておくべきポイントがわかっていただけたのではないでしょうか。
どちらにも素晴らしいメリットがありますが、当然デメリットもあります。
そのため、どちらの方が自分のやりたいことにあっているかという点で選択すると、最適な物件を選びやすいのではないでしょう。
この記事が、将来的に開業したいと思っている人の参考になれば幸いです。