店舗を開業しようと決めた時に、まず開業資金をどうするか、予算をどうしたらいいのかを決めることが大切です。
日本政策金融公庫の「2020年度新規開業実態調査」によると、開業資金の平均額は989万円です。
また、そのうちの43.7%が500万円未満で開業を実現しています。
一般的に店舗の内装費用は開業資金の50%前後と言われています。
43.7%が500万円未満で開業していることから、内装費用を300万円に抑えることも不可能ではありません。
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内装工事の費用はどうやって算出される?
内装というと、壁や床の素材選びなどの装飾をイメージする人が多いと思いますが、店舗の内装工事には、その他に水道やガス、電気の設備や空調設備、飲食店であれば厨房設備のようにライフラインの工事や機材の調達も含まれます。
そのため、必要な機材が多かったり高額な設備を必要とする業種は、内装工事にかかる費用が高くなる傾向にあります。
また、内装費用は坪単価で決まるため、広い店舗の方が内装費用がかかります。
業種ごとにみる内装工事の費用について
内装費用は、まず業種によって異なります。
必要な設備が少ないほど内装費用は安く済みます。
ここでは代表的な業種の平均的な内装費用の坪単価を見ていきたいと思います。
内装費用の坪単価平均が20万円以下の業種
・雑貨店や洋品店などの販売店
・学習塾
・マッサージ店
雑貨店や洋品店、学習塾は、販売スペースと在庫や従業員のロッカーなどを置くバックスペースがあればよく、水道工事やキッチンなども不要なので、必要な設備が少なく内装費用が安く済みます。
同様にマッサージ店も、ベッドや椅子があれば十分で必要な機材がほとんどないため、20万円以下で内装工事が可能です。
内装費用の坪単価平均が20万~30万円の業種
・カフェ
・薬局
・クリーニング店
ドリンクと軽食程度のカフェだと、簡単な設備のみで経営ができるため、そこまで高額な内装費用をかけずに開業ができます。
また薬局やクリーニング店も比較的内装費用を抑えられる業種です。
内装費用の坪単価平均が30~50万円の業種
・エステサロン
・美容院
・レストラン
・ファーストフード店
エステサロンや美容院のように水回りが必要だったり必要な機材が増えてくると、内装費用の坪単価が30万円を超えてきます。
飲食店も冷凍冷蔵庫や厨房設備が必要なため、平均的に30万~50万円ほどの坪単価の内装費用がかかります。
内装費用の坪単価平均が50万円以上の業種
・焼き肉店
・ラーメン屋
・病院、歯科医院
特殊な設備が必要な業種は、内装費用の坪単価平均が50万円をゆうに超えてきます。
焼肉店は、排煙設備や空調設備、また各テーブルに肉を焼くためのロースターが必要です。
また、他にも肉を保管するための大型冷凍冷蔵庫など、飲食店の中でも内装費用が高くなります。
ラーメン店も、茹で麺機やスープを取るためのコンロなど必要な設備が多い業種です。
病院や歯科医院などは、高額な医療機器が必要です。
医療機器はリースも可能ですが、リースを利用すると内装費用を抑えることはできる反面、その後の営業後にも毎月リースの費用がかかり負担が大きくなります。
内装費用をできるだけ300万円以内におさえるためのポイント
業種によって大きな違いが出る内装工事の費用ですが、できるだけ内装費用を抑えるポイントがあります。
居抜き物件を利用して設備を譲り受ける
内装工事の費用を大きく抑えることができるのが、居抜き物件を利用することです。
居抜き物件とは、前の店舗の内装がそのまま残された物件です。
内装や設備がそのまま使えるので、特に必要な設備の多い飲食店などは、居抜き物件を利用することで、かなり内装費用を抑えることができます。
ただ、残された設備を無料で譲り受けるわけではありません。
「造作譲渡料」といって、内装を譲り受けるための費用が発生します。
この造作譲渡料は、設備や内装の価値だけではなく、立地や物件の価値なども含まれた金額になるため物件により差が出ますが、平均的に造作譲渡料は100万~200万円で設定されていることが一般的です。
また、次の借主が決まらない場合、その店舗のオーナーは、内装造作をすべて撤去してスケルトン状態で家主に返さなければいけないので撤去費用が発生します。
そのため、退去期限間近の物件は、造作譲渡料を無料にしていることもあります。
設備はリースを利用する
飲食店の場合、厨房設備をすべて新品で用意しようとすると、それだけで300万円を超えてしまいます。
またX線やエコーなどの医療機器はそれだけで300万円以上かかります。
そこで内装費用をおさえるために、リースの利用を検討する人も多いです。
リースのメリットは、何よりも初期費用を抑えられる点です。
また、店舗撤退の際にも返却すればいいので、余分な撤去費用がかかりません。
デメリットは支払う総額は、購入するよりも高額になってしまうので長期的にみると大きな出費となります。
また、リースは基本的に中途解約ができません。
新しい機材に買い替えたい時や故障した時にも融通が利かないので注意してください。
中古品の購入を検討する
中古品も上手に活用すると内装費用を抑えることができます。
ただ、電気機器や厨房設備の中古には、保証がきかないことが多く購入後1~2年で壊れてしまった、なんてこともあります。
使用期間はどのくらいか、また保証はあるのかなど購入前にトラブルがないようにしっかり確認しましょう。
また、中古品はほしい時に探してもないこともあります。
いい中古品を見つけるにはそれなりに探す時間がかかるため、中古品の購入を検討するなら早めに探すことをおすすめします。
複数の内装業者に見積もりを依頼して比較検討する
内装工事の費用は、業者によってもだいぶ変わってきます。
そのため1社だけで決めるのではなく複数の内装業者の見積もりを取って比較することが大切です。
見積もりで不明点があったりわからないことがあれば積極的に質問をしてみましょう。
内装業者は安いところがいい業者とは限りません。
対応が丁寧か、アフターフォローがしっかりしているか、あいまいにしないかなどをしっかりと判断して信頼できる内装業者に依頼しましょう。
家具は自分で購入する
お店に設置する家具などすべて内装業者に依頼することもできますが、今はIKEAやニトリなどリーズナブルな家具屋も増えているため、自分自身で購入すると内装費用を抑えることにつながります。
IKEAは自分で組み立てなければいけないのがデメリットですが、ビジネス用に「IKEA Business Network」というメンバーシップがあり、登録すると通常価格よりも割引価格で購入することができます。(※期間によって割引がない場合もあり)
また、他にも家具のアウトレットなど家具を安く買える機会は多いので、すべて内装業者に頼らず自分の足で探すことも内装費用を抑えるのには大切です。
シンプルな内装で統一する
内装は複雑なものやこだわりが強いほど、内装費用がかさみます。
内装工事を300万円以内に抑えている店舗は、シンプルな内装を採用していることが多いです。
・内装にあまり多くの色を使わずに2色ぐらいで統一する
・デザイナー家具ではなく、すっきりとしたシンプルな家具を使用する
・設備も高機能のものではなく、必要最低限のものを使う
・あえてうちっぱなしコンクリートをそのまま使用したり、配管むき出しのままにする
・装飾品も多くはおかない
特にここ最近はゴージャスな内装よりは、シンプルな内装が好まれる傾向にあるので、シンプルな内装の方がお客様の好感度も高くリピーターも生み出しやすいです。
実際に内装工事費用を300万円以内に抑えている店舗は?
美容院や雑貨店が内装300万円以内に成功している!
施工例を調べてみると、美容院や雑貨店が内装工事を300万円以内におさえていることがわかりました。
雑貨店は水道工事やガス工事が不要なので、シンプルな内装であれば内装工事に300万円もかかりません。
また、美容院は、内装費用の坪単価の平均が30万円~50万円です。
ただ、小さい美容院であれば10坪ほどあれば開業が可能です。
セット用の椅子2台にシャンプー台1台のようにこぢんまりとした美容院が内装費用300万円以内に抑えられています。
自宅開業のネイルサロンやエステサロン
女性から人気の高い自宅開業のネイルサロンやエステサロンであれば、内装工事100万円を切ることも可能です。
自宅の1部屋を改装するだけなので、店内の面積も狭く、家のインテリアのベースをそのまま生かせるため、かなり内装費用を抑えることができます。
10坪程度のカフェやドリンク専門店
内装工事の費用は坪単価のため、坪数が少なければ内装費用もその分安く済みます。
飲食店もカフェでドリンクとスイーツ程度の販売であれば厨房設備も不要で、内装費用300万円以内で開業ができます。
今流行のタピオカやバナナジュースなどのドリンク専門店も、カウンターのみで開業が可能なので、内装費用300万円きることが可能です。
内装工事を300万円以下に抑えるには業種と店舗の広さがポイント
初期費用をかけずに店舗を持ちたい場合、業種の選択と店舗探しが重要です。
雑貨店、飲食店を経営したいのであればカフェなど設備が少なく済むような業種選びが大切です。
また、居抜き物件を利用したり、中古などもうまく活用しましょう。
内装工事は坪単価で決まるので、広い店舗であれば比例して内装費用も高額になります。
内装費用を300万円におさえたい場合、10坪程度の店舗がおすすめです。
まとめ どんな店舗を持ちたいのか、今一度考えて内装工事を検討しよう
内装工事の費用を300万円以下に抑えることは可能ですが、業種やお店の広さがかなり絞られてしまいます。
店舗開業には初期費用がかなりかかりますが、今一度自分がどんなお店を経営したいのかしっかりと考えましょう。
費用を抑えることに縛られてしまうと、やりたかったお店ではないものが出来上がってしまい、その後の経営に力が入らないことも考えられます。
もし、内装費用や開業資金の運用に困ったら、開業サポートのプロに相談してみることをおすすめします。
資金調達や業者の紹介など、理想の店舗作りができるようにサポートしてくれます。