ここ数年で民泊事業が急激に拡大しています。
ホテルや旅館と比べると安く泊まれるため、日本人観光客だけではなく、海外からの観光客も日本の生活が感じられると民泊人気が高まっています。
また、2018年に住宅宿泊事業法が制定されたことで、民泊開業がしやすくなって自宅や相続を受けた実家を民泊に活用したい人も増えています。
最近では若い人たちが田舎暮らしを求めて田舎の格安一軒家を購入して民泊を経営しながら生活をする、というライフスタイルも支持されています。
ここでは民泊を始める手順や民泊を運営する際の資金の融資について解説していきます。
Contents
そもそも民泊とはどういうシステム?
民泊とは、旅行者が一般の民家に宿泊することを指します。
もともと欧米ではバケーションレンタルやホームステイとして宿泊サービスの1つとして利用されてきましたが、2000年代インターネットの浸透により、宿泊したい人と受け入れたいホスト側を結びつけるプラットフォームを提供する企業が続々と出現して民泊が日本でも広がりました。
代表的なプラットフォームサービスとしてAirbnb(エアビーアンドビー)やエクスペディア、booking.com、また楽天トラベルでも「Vacation STAY」という民泊予約サイトを立ち上げています。
民泊での営業は1年間で180日まで
民泊事業の最大のメリットは、自宅の空いている部屋やスペース、また相続した実家の空き家などを宿泊施設として利用して収入を得ることができる点です。
住宅宿泊事業法で、民泊サービスをおこなうには1年間での宿泊日数が180日以内と定められています。
180日を超えて営業をおこなう場合には旅館業法に基づいて消防設備や客室面積などの審査に通らないと営業することができません。
また、地域の条例によっては180日よりも少ない日数が設定されていることもあるため、民泊を営業する前に各自治体に確認しましょう。
民泊を始めるにあたり必要な手順
住宅宿泊事業法(新民泊法)による届け出
民泊を営業するには、2018年に制定された住宅宿泊事業法(新民泊法)による届け出が必要です。
新民泊法で定められている条件は、
キッチン、トイレ、お風呂、洗面台の4つの設備が揃っている
消防設備が整っている
これらが揃っていれば、特に改築や設備増設などは不要です。
消防設備は、住宅の1スペースを貸し出すのか、建物まるごとを貸し出すのか、誰か常在しているのか誰もいないのかなどによって、自動火災報知機、常夜灯など必要な設備が細かく決められています。
各自治体の届け出窓口にしっかり確認しましょう。
家主が不在の場合には、住宅宿泊管理業者に委託が必要
自宅をそのまま開業した場合には家主自身が住宅宿泊管理者として届け出を行いますが、家主が不在の場合、民泊の管理を国土交通省に登録をした住宅宿泊管理業者に委託しなければいけません。
家主不在で営業をすると違法となります。
民泊を始めるための初期費用について
いざ民泊を始めるにあたって、自宅などをそのまま利用できるケースは少ないかと思います。
ほとんどの人が民泊用に物件を購入したり、貸借したりして、リフォームをほどこしています。
民泊を始めるのにはどのくらいの初期費用が必要でしょうか。
民泊の物件を購入、貸借する場合
民泊で1番多いのが、田舎の古い物件を購入して民泊を経営しながら生活するパターンです。
田舎の戸建ては、数百万円で購入できることも多々あります。
また、ここ最近では相続などで引き継いだ実家を格安で売却するケースも増えています。
物件を購入する場合には、購入資金として1,000万円程度見積もっておくとよいでしょう。
他にも賃貸物件を借りて民泊を営業することもできます。
ただしその場合、オーナーが民泊に許可を出しているかどうかがとても重要です。
民泊OKの賃貸物件は数が少ないのと、あっても通常の1.2~1.5倍ほど賃料が高くなっていることが多いです。
賃貸物件の場合には、敷金・礼金、前家賃を支払う必要があるので、賃料の6か月分ほどの資金が必要です。
場所や広さによって賃料は変わってきますが、100万円あれば物件の初期費用はカバーできるでしょう。
内装リフォーム費用
賃貸物件や、現在も使っている自宅であればリフォーム不要でそのまま民泊に利用できますが、中古物件や古い物件を購入した場合、内装のリフォームが必要になります。
古さを活かしつつ自分たちでDIYをするパターン、内装業者に一律で任せるパターンとがありますが、内装業者に任せる場合、1坪あたり10万~30万円程度の内装費用がかかります。
民泊をするお客様は古さやオリジナリティを楽しみにしている傾向にあります。
すべてを変えるのではなく、なるべく今あるものを活かしてリフォームすることをおすすめします。
その方が内装費用の節約にもつながります。
家具や備品の購入費用
民泊を運営していく上で、布団やベッドなどの寝具、テーブルや椅子、テレビ、冷蔵庫は必須です。
また、今はWi-Fiがない施設は選ばれないことも多いため、Wi-Fiの設置も欠かせません。
他にも食器やまな板、包丁、鍋などの調理器具、バスグッズやトイレタリーグッズなど生活必需品の購入も忘れないようにしましょう。
民泊の場合、宿泊する人はラグジュアリー感を求めていることはレアケースです。
なので、家具なども高いもので揃える必要はありありません。
IKEAやニトリ、100均などお手頃なショップを活用すると費用を抑えることができます。
消防設備費用
消防設備は、家主が常駐か、また戸建てかマンションか、建物の広さによって必要な設備が変わってきます。
非常灯と火災報知器、消火器だけであれば数十万円の費用で賄うことができます。
ただし、誘導灯やスプリンクラー、防炎カーテンなど必要な設備が増えると100万円をこえるケースもあります。必ず各自治体に何が必要なのか問い合わせて確認しましょう。
民泊の届出費用
民泊の届出に関わる手続きを代行業者や行政書士に依頼した場合、30万円前後の費用がかかります。
民泊の届出は煩雑ではありますが、自分自身でできないものではありません。
自分自身で手続きをおこなえば数千円で済みます。
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民泊の開業時に融資を受けるには
自宅を民泊に利用するには物件を取得するための費用が抑えられるので、それほど高額な初期費用がかかりませんが、物件を購入したり賃貸物件と契約する場合には、物件を取得するための費用やリフォーム費用がかかり、高額な初期費用が必要となることがあります。
自己資金が足りない場合には、融資を受けることになります。
しかし民泊は2018年に新民泊法が制定されたばかりの新しい事業のため、銀行などでは民泊事業で申し込める融資が少ないのが現状です。
現在、三井住友信託銀行グループがおこなっている「民泊事業ローン」と日本政策金融公庫の「関克衛生貸付」が民泊事業で利用できる代表的な融資です。
ただし、民泊事業の広がりとともに、利用できる融資商品は増えていくと考えられるので、こまめに情報を仕入れるようにしましょう。
三井住友トラスト・ローン&ファイナンス 民泊事業ローン
三井住友信託銀行グループの三井住友トラスト・ローン&ファイナンスがおこなっている民泊事業専用のローンです。
民泊のための不動産を取得するため、また改築やリフォームなど、民泊事業に必要な資金の融資を受けることができます。
融資額は300万~10億円で返済回数は10回~420回まで、長期での借り入れで月々の返済額を抑えることもできます。
金利は5,000万円未満の借り入れで年利3.90%、5,000万円を超えると年利2.90%となります。
▼三井住友トラスト・ローン&ファイナンス 民泊事業ローン
日本政策金融公庫の「新規開業資金」
日本政策金融公庫がおこなっている創業支援融資も民泊の開業費用の融資として利用できます。
新規開業時に利用できる融資は「新規開業資金」、「女性、若者/シニア企業家支援資金」がおすすめです。
「女性、若者/シニア起業家支援資金」は、女性または30歳未満か55歳以上の方向けの融資です。
当てはまるならこちらの利用を検討してみてください。
なお、日本政策金融公庫が行っている一般貸付の生活衛生貸付は旅館業なら利用できる融資です。
ただし、旅館業は旅館業法に登録しているところに限ります。
新民泊法で登録している場合には利用できないので注意してください。
融資の手続きにはプロに相談を
新民泊法が制定されたことにより、それまでよりも民泊事業で融資を受けやすくなっています。
しかし、日本政策金融公庫で申し込むには創業計画書や企画概要書など多数の書類の作成が必要になります。
また必要書類も多いです。
創業計画書は、その内容によって融資を受けられるか、また融資の額が決まる重要な書類です。
今後どのように利益を得て、どのくらい返済できるかといった経営戦略を数字で記入することが大切です。
また、書類だけではなく、日本政策金融公庫との面談もあります。
そのため、希望額の融資を受けるためにも日本政策金融公庫への融資の申請は行政書士や専門のプロに相談することをおすすめします。
まとめ 民泊でも融資は受けられる!上手に利用して民泊の開業の夢を叶えよう
自宅を民泊として使うか、物件を購入するかによって民泊を開業する際の費用は大きく変わります。
ただし、民泊でも融資を受けることは可能なので、十分な資金が集められなくても融資を受けることで開業が可能になります。
民泊で融資を受けるには、何よりも創業計画書や面接時に確固たる経営方針を伝えられることが大切です。
そのためには、やはりプロの力を借りることをおすすめします。
数々の融資を成功させている専門家は創業計画書を作成するノウハウを持っています。
初回の相談は無料なところが多いので、ぜひ無料相談を活用して、信頼できるアドバイザーを見つけましょう。