美容室の開業を目指す人で、これから融資で資金調達を考えた場合、注意して欲しいことがあります。
美容室には他の業種にはない特性があり、そこを押さえておかないと融資を受けるのも難しくなってしまいます。
そこで今回は、融資を審査する銀行員としてこれらを解説していきます。
美容室開業の融資を受けるために、ぜひ参考にしてください。
Contents
美容室開業で融資を受けるポイント
美容室開業で融資を受けるポイントは以下の2つになります。
<美容室開業で融資を受けるポイント>
- ①美容室開業までの流れを知る
- ②業種の特徴「クセ」を押さえた資金調達方法を知る
美容室開業で融資を受けるポイント1.美容室開業までの流れを知る
美容室開業で融資を受けるために、まず美容室開業までの流れを知ることが重要です。
流れをまとめると
「資格を取り、経験を積み、資金の準備をして、保健所に開業の申請し、営業許可を得て開業する」となります。
<美容室開業までの流れ>
- ①資格を取り、経験を積む
- ②開業計画と資金の準備をする
- ③保健所に開業申請し、営業許可を得て開業する
以下、プロセスをひとつずつ解説します。
美容室開業までの流れ1.資格を取り、経験を積む
美容室開業に向けて、まず資格を取り美容師になる必要があります。
一般に美容室や理髪店といった理美容業界は個人経営、本人やパートナー、家族などが美容師の免許を持ち、店を開業するのが一般的です。他の業界に比べても「人的要素」と言える面が強いのが特徴です。(業界の特徴については後半で触れます)
また、自分や家族以外に従業員として美容師を雇う場合は「管理美容師」という特別な資格も必要になります。
そして、経験を積むことで開業に向けての自己資金と経営能力を蓄えていきます。
一般的に、美容師になるには専門学校などの養成施設で3年(昼間過程の場合、夜間は3年以上)技術課程を終了し、国家試験に合格する必要があります。
ここで、国家資格や美容室の概要など厚生労働省の説明がわかりやすいので引用します。
1定義
美容師は「美容を業とする者」をいい、美容師法に基づき厚生労働大臣の免許を得なければならない。美容師の免許を持たないものは美容を業として行うことはできない。<中略>2美容師免許
美容師免許は、高等学校を卒業した後、都道府県知事の指定した美容師養成施設で昼間課程2年、夜間課程2年、通信課程3年以上(修得者課程においては、昼間・夜間課程で1年、通信課程で1年半以上)にわたり必要な学科・実習を修了した後、美容師試験に合格した者が申請することにより与えられる。<中略>3美容所
美容師は、美容所で美容を行わなくてはならない。<中略>
美容所を開設・廃止するときは、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)に届け出なければならない。
また、美容所は都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)の使用前の検査確認を受けなければ使用してはならない。4管理美容師
美容師が常時複数いる美容所の開設者は、美容所の衛生管理の責任者として管理美容師を置かなくてはならない。
なお、管理美容師は美容師歴3年以上の者であって都道府県知事が指定した講習会を修了した者でなくてはならない。
<引用 厚生労働省/美容師法の概要
美容室開業までの流れ2.開業計画と資金の準備をする
美容室の開業では、資金の準備が必要不可欠です。
開業してから融資を受けるのではなく、開業するために融資を受けるのが一般的だからです。このあたりは後半の資金調達で詳しく触れていきます。
そして開業計画も重要です。計画が無ければ融資も受けられないので、資金の準備と同時進行で考えていく必要があります。
開業に向けた計画の作成は、税理士などのプロフェッショナルにサポートを頼む人も多いです。特に開業に強い専門家なら、この後の手続きなども継続してフォローしてもらえるので心強いです。
美容室開業までの流れ3.保健所に開業申請し、営業許可を得て開業する
資格を取り、経験を積んで、そして開業の計画と資金の準備ができれば開業はほぼ峠を越したと言えるでしょう。あとは保健所への開業申請や営業許可を得て開業するだけです。
美容室開業で融資を受けるポイント2.業種の特徴「クセ」を押さえた資金調達方法を知る
資金調達の面で美容業、理容業ともに共通する点が2つあります。
1つめは「融資はほとんどが開業資金」
2つめは「開業資金のほとんどが設備資金」
というものです。
美容室開業融資のポイント1.美容室の融資はほとんどが開業資金
美容室の開業資金の平均額は約940万円(*)です。
この資金調達は金融機関からの融資が65%で、自己資金(親族の援助を含む)が約33%となっています。
開業に約1,000万円かかる美容室では、金融機関から融資を受けるのは、ほとんどが開業のタイミングに集中しています。
というのも、理美容業界ではいわゆる運転資金の融資はほとんどあり得ないというのが銀行など金融業界の常識、つまり理美容業界のクセなのです。
出典 日本政策金融公庫/新たに美容業を始めるみなさまへ創業の手引+(プラス)
美容室開業融資のポイント2.美容室の開業資金で融資を受けられるのは設備資金
銀行の融資審査では「美容室や理髪店に運転資金は不要」という考え方があります。
極端な表現ではありますが、美容室では製造業や販売業のように、仕入や製造原価といった経費はほとんど発生しないという考えにもとづくものです。
たとえば美容室でもシャンプーなどの消耗品は必要ですが、基本的には手元のお金で繰り回すことが可能です。これは人件費も同様で、理美容業界の運転資金はその大部分が人件費です。これは、人件費が運転資金の大部分なら、売上から人件費を払うのが当然とも表現できます。したがって、仮に開業した後で運転資金として人件費を借入しようとしても、銀行ではまず融資してくれないでしょう。
上記で引用した日本政策金融公庫のデータでも、開業資金の平均940万円のなかで運転資金も16%・150万円必要という結果になっています。上記データで開業資金のうち自己資金は26%・268万円なので、運転資金=人件費は自己資金のなかで支払うもの、とデータからでも言えるのです。
以上のような理由から、美容室の開業資金で融資を受けるのは設備資金が原則です。
こうした理美容業界の特徴(クセ)は、開業したあとでも同じことが言えます。
美容室が運転資金を借りなければいけないということは、普通の経営ができていないと判断される可能性が高く、運転資金の借入れを申し込んでも、銀行員から「具体的に何に使うんですか?」と聞かれ、融資審査は難航します。
もちろん美容室でも、運転資金の融資を受けることは可能です。
たとえば以下のような資金使途が考えられます。
- 「〇〇サロン(〇はブランド名)」といったように、大手化粧品メーカーや有名ブランドのフランチャイズとなる場合のパテント料や商品を一括仕入れする資金
- ネット展開を狙い、店舗サイトを充実させるためのWEB開発費用
- ネイリストやエステシャンへの外注費(店に常駐してもらう)
ここにあげたのはあくまで参考例であり、実際に運転資金融資を受けられるかどうか?は事業内容なども影響しますので、必ず融資を受けられるわけではありません。
とはいえ、少なくともよくある「仕入れ資金」「人件費支払い」などの名目では、運転資金融資を受けるのはむずかしいことは、ぜひ覚えておいてください。
美容室の開業は、融資以外の面でもプロのサポートがあると有利
美容室では、開業するときに開業資金で融資を受けるので、ここに注ぐ時間とエネルギーが必要になります。
とはいえ開業資金だけ考えていれば良い訳ではなく、むしろ開業したあとの経営も重要です。
たとえば、開業からそのあとの経営までサポートしてくれる「真のパートナー」として、開業専門の『税理士法人経営サポートプラスアルファ』をおすすめします。
【会社設立の後こそ、やらなければならないことが山のようにあるのです。会社設立はあくまでもスタートラインに過ぎないのです。
これらの届け出や手続きを自分だけでやろうとすると相当な手間や時間を費やすだけでなく、提出の遅れや忘れというリスクが高まります。そもそも把握していなかったということもありうるかもしれません。もし対応できたとしても「本当に大丈夫かな?」といった不安がつきまとうかもしれません。
あくまでも会社の本来的な活動はやはり売上や利益を生み出すことです。会社設立をして社長となった皆さまにはぜひ本業に集中していただきたいと思っています。】
<経営サポートプラスアルファ/https://keiei-support-plus-a.com/kaisha-setsuritsu/ >