税理士事務所の仕事内容は?年間・一日の勤務スケジュールも合わせて紹介
2020年10月8日
税理士、というとどのようなイメージを持つでしょうか。
「安定した職業」という印象を持っている方も多いのではないでしょうか。
実際、税理士は難関と呼ばれる税理士試験を突破しなければ就くことができず、その分安定した高収入が狙える職業です。
今回は、税理士になりたいと考えている方、税理士事務所への就職・転職を検討している方むけに、税理士事務所の仕事内容を詳しく解説します。
税理士事務所の仕事内容は?
税理士事務所の仕事内容は、大きく以下のように大別されます。
記帳代行
全ての法人では、一年に一回、決算といって会社の業績に関する報告書を公開しなければなりません。
具体的には、貸借対照表や、損益計算書など、財務諸表と呼ばれるものがこれにあたります。
ただ、これら財務諸表は、一年に一回作成すれば良いものの、作成する時期になって一気に作り上げる、というわけには行きません。
なぜなら企業は日々膨大な取引を行なっており、それらを一年に一回のタイミングでまとめ上げることは不可能に近いからです。
そこで、日々企業の取引内容を簿記のルールにしたがって会計ソフトに記入していく「記帳」と呼ばれる作業が必要になります。
しかし、記帳をするためには簿記の知識が必要なだけでなく、作業の正確性が必要になります。
従業員の少ない中小企業ではこうした記帳に人員を割く余裕がないことが多いです。
そもそも、社長含め社員が一人も簿記の知識をもっていないこともあります。
税理士事務所では、このような中小企業の記帳を代行する仕事をしています。
記帳は毎日行う必要があるため、税理士事務所では最も日々時間を費やす作業といえるでしょう。
ただし、最近ではAIの技術などを用いて記帳作業を簡略化するサービス・ソフトウェアも登場しており、記帳代行の価値は下がりつつあります。
簿記の知識が乏しい人であっても、ソフトを使えば記帳ができてしまうからです。
このため、記帳代行をメインに行なっている税理士事務所は淘汰されつつあり、現在は税務・会計コンサルティングをメインの業務としている税理士事務所が増えています。
決算申告
日々の記帳で記録した取引を、一年に一回指定のフォーマットにまとめ上げ、公開するのが決算です。
具体的には、以下のような書類を作成する必要があります。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 勘定科目内訳書
また、決算書に加え、納めなければならない税金の額を記した税務申告書も作成する必要があります。
決算書と税務申告書を作成する業務を決算申告業務と呼び、中小企業の決算申告業務を税理士事務所が代行することが多いです。
企業が決算を行う月は自由に選ぶことができますが、決算月を3月にしている企業の割合が日本で最も多いです。
企業は決算月の2ヶ月後までに税務署に決算書と税務申告書を提出する必要があるため、その対応に追われる4月〜5月が繁忙期になる税理士事務所が多いです。
巡回監査
巡回監査とは、クライアント企業の税務・会計がしっかりと行われているかどうか、税理士事務所がチェックするサービスのことです。
月に一回税理士事務所の担当税理士がクライアント企業を訪れ、会計システムへの入力の正確性を確認したり、経営者の財務に関する悩みをヒアリングしたりします。
記帳代行がクライアント企業の記帳を丸ごと引き受けるサービスであるのに対して、巡回監査は、記帳はクライアント企業自身で行い、その正確性を定期的にチェックするサービスであるといえます。
会計、経営コンサルティング
会計・経営コンサルティングとは、クライアント企業の経営者が抱える会計や経営に関する悩みを解決する業務です。
どのように利益を伸ばしていくべきか、どのように経費を削減していくかなど、会計・経営に直結する内容に関して相談に乗ります。
税理士事務所の仕事の中でも最もハイレベルかつ、奥深い業務です。
年末調整
年末調整とは、企業が従業員の税金計算を行い、その結果を税務署や地方自治体に報告する仕事です。
サラリーマンは、毎月源泉徴収という形で税金を引かれていますが、引かれる額は、「想定の年収」をもとに決められています。
しかし、ボーナスや昇給など、様々な形で月々の給与は変動するため、それらを踏まえた税金の追加徴収・還付を行う手続きが年末調整です。
この年末調整も、税理士事務所が代行することが多いです。
年末調整は11月ごろから準備を始める必要があり、また、年が明けて1月には個人の確定申告業務の相談も多くなるため、11月〜翌2月くらいまでも税理士事務所の繁忙期と言えます。
その他相談
企業の税務の代行や、会計、経営のコンサルティング業務が税理士事務所のメイン業務ですが、その他にも様々な税金に関する相談にのるのも税理士事務所の業務です。
個人の確定申告や節税に関する相談から、相続税に関する相談など、内容やその難易度も様々です。
税理士事務所の年間スケジュール
ここでは、税理士事務所の年間のスケジュールを解説します。
1月
1月は、税理士事務所の中で最も忙しい月の一つです。
個人の確定申告の手伝いに加え、固定資産税の償却資産申告書の提出、源泉所得税、住民税特別徴収税額の申告・納付、法定調書の作成・提出などの業務があります。
企業の年末調整などの業務もあります。
また、企業の決算月で、3月の次に多いのが12月です。
このため、企業の決算業務なども重なります。
2月
2月は、個人の確定申告がより増え、確定申告の相談・手伝いがメインの業務になります。
企業の決算や、日々の記帳代行もありますが1月よりは忙しくない月であると言えます。
3月
3月も、2月と同じように個人の確定申告に関する業務がメインです。
引き続き、1月に比べたら業務量の少ない月であるといえます。
ただし、日本では3月決算の企業が非常に多いため、3月末から再び徐々に繁忙期に突入していきます。
4月
4月は、3月決算の企業の決算業務がはじまり、繁忙期に突入していきます。
5月
決算をする企業は、2ヶ月後までに税務署に決算書と税務申告書を提出する必要があるため、3月決算の企業の提出期限は5月末です。
このため、期限が迫った5月には、より企業の決算業務が本格化するため、1月と並ぶ繁忙期と呼べるかもしれません。
6月
固定資産税・都市計画税の納付などがありますが、企業の決算などがひと段落つき、徐々に閑散期に入る時期です。
7月〜10月
10月くらいまでは、税理士事務所における閑散期といえます。
記帳代行や、その間の企業の決算業務は必要ですが、全体的な業務量は一年の中で少ないです。
11月
11月から、徐々に年末に向けて業務量が増えていきます。
個人の確定申告の相談や、年末調整の準備などが必要になってきます。
12月
12月は、年末調整に関する業務が本格化し繁忙期に入っていく時期です。
税理士事務所の一日のスケジュール
ここでは、税理士事務所に勤務する税理士の、1日のスケジュールを紹介します。
8時半
経済、税制に関するニュースに目を通しながら出社します。
出社後は、クライアント企業や個人顧客からの問い合わせメールや、事務所内での諸連絡・相談のメールをチェックして、対応を進めていきます。
9時~10時
始業時間が過ぎると朝会がはじまり、スタッフと今日のスケジュールに関してミーティングを行います。
11時~12時
事務作業や、この日一件目のクライアント訪問を行います。
巡回監査を行なって、クライアント企業の財務状態をチェックしたり、会計コンサルティング・経営コンサルティングを行なっている企業を訪問して、成長戦略を練ったりするのが主な業務内容です。
13時頃
お昼休み。
昼食もクライアント企業の社長などと共にとることが多いです。
14時
午後も再びクライアント訪問を行います。
16時
会社に戻り、その日訪問したクライアントに対するネクストアクションの整理や、翌日訪問するクライアントに見せる資料作りなどを行います。
18時
帰社します。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
税理士は、非常に難しい試験を突破しなければならない職業ですが、その分非常にやりがいがある職業です。
企業の税務業務の代行に止まらず、経営者に対して会計・経営に対するコンサルティングを行うことができるというのは、非常に貴重な経験であるといえます。
また、収入も平均と比べて高いです。
その分、年末や4〜5月など繁忙期には業務量が多くなってしまうこともありますが、閑散期にはまとまった休みをとることも可能であるため、仕事とプライベートの両立もしやすい職業であるといえます。