税理士法人と税理士事務所の違いとは?メリット・デメリットと転職時に選ぶべき方

2020年10月8日

税理士の転職先などを調べる過程で、税理士法人と税理士事務所の2つが出てきて困ったことはありませんか?

どちらも税理士に関係することは名前から明らかですが、実際にどのような違いがあるのか知らない方もいると思います。

今回は税理士法人と税理士事務所について比較していきます。

それぞれの特徴を把握して、転職先を選ぶ際などに活用してみてください。

税理士法人と税理士事務所

税理士法人と税理士事務所は何が違うのでしょうか?

簡単に言うと、税理士法人は合名会社という会社の一種で、税理士事務所は個人事業主です。

ここからは共通点と相違点について確認していきましょう。

共通点

税理士法人も税理士事務所も、運営は税理士や公認会計士が中心です。

業務内容もそれほど変わらず、主に税務に関係する分野の業務を行っており、税務書類の作成や税務相談などが仕事になります。

相違点

税理法人は会社として組織化されており、支店を持つことが可能です。

また、2名以上の税理士が所属しているため業務が滞ることが少なく、一般的に信頼性が高いと言われています。

その分、依頼料としては比較的高めになっており、顧客規模も大きくなりやすい形態です。

一方で税理士事務所は所長を中心に経営されており、個々での特徴が出やすくなります。

税理士が1人からでも始めることが可能で、多くは小規模で個人やベンチャー企業が顧客です。

以下の表にはここまでの情報をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

もちろん税理士法人の規模や個々の税理士事務所によって異なりますので、転職先などを探す際にはしっかりと調べるようにしましょう。

税理士法人 税理士事務所
特徴 会社の一種 個人事業
顧客規模 個人~大手企業 個人~ベンチャー企業
・一般企業
業務内容 税務関係の業務
(業務代理・書類作成・相談など)
・巡回監査・経営コンサルティングなど
料金設定 比較的高め 比較的低め
税理士数 2名~ 1名~
支店 ×

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税理士法人と会計事務所の違い

税理士法人や税理士事務所を検索する中で、会計事務所という言葉を見かけた方も多いのではないでしょうか?

実は会計事務所も税理士や公認会計士が中心で働く職場で、税理士事務所とイコールで結ぶことができます。

また、会計事務所の方が俗称であり税理士事務所が法的な正式名称です。

では、なぜ税理士事務所と同等でありながら呼び名が違うのでしょうか?

これは税務関係の業務だけでなく、会計監査など会計業務になども扱っていることを示すためではないかと言われています。

また、税理士は公認会計士でもなれる職業であることから、在籍を示すために「会計事務所」と名付けているという説もあります。

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税理士法人の特徴

そもそも税理士法人制度の趣旨は、国税庁のホームページによると以下のようになっています。

「税理士業務の共同化を促すことは、複雑化・多様化、高度化する納税者などの要請に対して、的確に応えるとともに、業務提供の安定性や継続性、より高度な業務への信頼性を確保することが可能となり、納税者利便の向上に資するものであること」

要するに、顧客に対してより精度の高い対応をできるようにすることが目的です。

顧客目線で作られた制度ではありますが、働く税理士にとってはどうなのでしょうか?

転職などをお考えの方に向けて、税理士法人や税理士事務所のメリットやデメリットについて解説していきます。

設立要件

税理士法人の設立は2001年の税理士法改正によって始まりました。

商法において合名会社に準ずる特別法人と位置づけられていますが、業務内容は税理士業務やそれに付随して行う会計業務、財務省令で定める一定の業務に範囲が定められています。

また、社員は税理士に限定され、2名以上在籍することが義務です。

その他にも①事務所の設置義務②成立の届出義務③会則遵守の義務④処分規定の適用⑤定款にかかる変更等届出義務といった義務規定があるほか、税理士法における次の権利、義務に関する規定が適用されると国税庁のホームページに記されています。

メリット

税理士法人に転職して働く際にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

転職者目線での税理士法人のメリットについてご紹介します。

専門性を高められる

税理士法人は規模にもよりますが、部門が細分化されていることが多く自分が在籍する部門の専門性が高められます。

また、税務業務の他に会計業務や経営コンサルティングなどの部門もあり、場合によっては多彩な分野に関してのキャリアを積むことが可能です。

福利厚生が整っている

税理士法人は社会保険への加入が義務になっています。

そのため、税理士法人については福利厚生について心配する必要がありません。

一方で税理士事務所は5人以下の場合は社会保険の加入が任意となっていますので、確認しておく必要があります。

デメリット

税理士法人にもメリットがあればデメリットもあります。

転職先を選ぶ際には良い点だけでなく、悪い点についても目を向けることが重要です。

幅広い知識は得られない

基本的に税理士法人は部門が細かく分かれており、その分野についての業務を行います。

そのため、独立開業などを考えている方は税理士法人や税理士事務所の経営ノウハウを学ぶことが難しいことも考えられます。

しかし、税理士法人に勤めたからといって独立開業できないわけではありませんので、自分のキャリアに合わせるようにしましょう。

顧客との距離が比較的遠い

税理士は規模が大きく、時には大企業を顧客としていることもあります。

また、グループで対応することが多く、1人が関わる時間は短いです。

これらにより必然的に顧客との距離が遠くなり、税理士事務所と比べて顧客への寄り添い方が変わります。

どうしても業務感が強くなることが多く、心理的な距離を縮めることに苦労するかもしれません。

税理士事務所の特徴

税理士事務所は一般的に税理士法人よりも規模が小さいです。

支店を作ることができず、地域に根ざした税理士事務所として個人や企業を相手にサービスを提供しています。

これらの理由から税理士事務所には税理士法人にはない魅力がありますので、詳しくご説明していきます。

メリット

税理士事務所にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

自分と相性がいいのかどうかを見極めながら読んでみてください。

顧客とより密度の高い関わり方ができる

税理士事務所では1人が顧客に相対して対応することが珍しくありません。

グループで顧客に携わる税理士法人と比べると、顧客との距離は格段に近くなります。

また、組織構造でないため迅速で柔軟な対応を取れることもあります。

こういった観点から税理士事務所はコミュニケーションを取りやすい環境にあり、信頼関係を比較的築きやすいといえます。

幅広い知識が得られる

1人で顧客を担当する関係で、網羅的な知識を学びやすい環境です。

税理士法人と比較して専門性は劣るものの、幅広い知識を持っていることで顧客の要望に個人レベルで対応しやすくなります。

また、将来的に独立して税理士事務所を開きたいと考えている方にとって、所長の税理士事務所経営を近くで見られる点もメリットです。

自分だったらどのように経営するかを考えながら見ると、また違った視点で働けるかもしれません。

デメリット

税理士事務所のデメリットはどのようなものがあるのでしょうか?

転職選びの際にデメリットを確認しておくことで、転職失敗のリスクを減らすことに繋がります。

対応分野が狭い

税理士事務所は人数が少なく、税理士法人のように各部門に人員を配置する形態を取ることが難しいです。

そのため対応できる範囲も限られ、より専門性の高い業務は行えません。

ただし、医療や相続などを専門とすることで差別化を図っている税理士事務所もありますので、税理士事務所の特徴を押さえておくことが必要になります。

良くも悪くも所長次第

税理士事務所の運営は所長の手に委ねられています。

例えば、5人以下の税理士事務所では社会保険への加入が任意であることから、福利厚生が整っていないことがあります。

福利厚生をはじめ、給料や資格取得の支援などあらゆることが所長のさじ加減となりますので、自分との相性なども考えながら見極めなければなりません。

転職は税理士法人と税理士事務所のどちらを選ぶべきか

税理士法人と税理士事務所にはそれぞれメリット・デメリットがあります。

転職の際にはこれらを考慮する必要がありますが、一番重要なことは自分の性格や働く目的などに合致しているかです。

自分が働く場所ですので、個々の税理士法人や税理士事務所に向き合い、組織の中身までしっかりと確認するようにしましょう。

業務内容で選ぶ

転職をする際には、今一度自分のキャリアを見つめ直し目的に合ったキャリアを積める職場を選びましょう。

例えば、独立を目指しているのであれば広範囲の知識を得られる法人・事務所を選びます。

また、グローバルに活躍したいのであれば国際関係の業務を専門にしている事務所に勤めたり、部門が細分化されて専門性を高められる法人を選んだりと多様な選択肢があります。

それぞれの職場を比較検討して、自分がベストだと思える場所を見つけてください。

待遇で選ぶ

給与や福利厚生、ワークライフバランスなど自分が求める働き方は様々だと思います。

基本的には規模などの関係で、税理士法人の方が給与や福利厚生もしっかりしている場所が多いと言われています。

しかし、税理士事務所の中にも給与や福利厚生が充実しているところはあります。

場合によっては総合的に法人よりも勝っていることも考えられます。

そのため、やはり個々の職場を比較することが必要です。

ワークライフバランスを整えられる場所であったり、社内の雰囲気が自分に合っているかなども確認しておきましょう。

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まとめ

今回は税理士法人と税理士事務所の違いを中心に、特徴やメリット・デメリットについての情報をお伝えしました。

基本的な2つの違いとしては事業形態の違いのみです。

しかし税理士法人になることで、規模が拡大し専門性の高い業務を行えたり福利厚生などが整備されたりしています。

一方で、税理士事務所は顧客と親密に関わることができたり、幅広い業務を行うことで税理士事務所経営のノウハウを学べたりします。

業務内容は税理士法人と税理士事務所ではほぼ同じであり、個々の法人や事務所によって会計監査、経営コンサルティングなども扱うことがあります。

また、会計事務所に関しても税理士事務所と同様であることも抑えておきましょう。

転職先を探す際には税理士法人と税理士事務所のメリット・デメリットを踏まえたうえで、自分のキャリアや性格なども考慮するようにしましょう。

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