会計士より税理士の方が多い理由は?会計士と税理士の特徴を比較
2020年10月5日
監査を中心に行う公認会計士と税務業務を中心に行う税理士は比較されることが多い職業です。
業務内容も部分的に重なるところのある2つですが、実は会計士よりも税理士の方が人数が多いのをご存じでしょうか?
今回は会計士と税理士を比較しながら実態についてご紹介していきます。
さらに、税理士になる方法や公認会計士になる方法、会計士と税理士の就職先についての情報もまとめていますので、参考にしてみてください。
会計士と税理士の違い
比較されることの多い公認会計士と税理士ですが、2つの特徴はどのようになっているのでしょうか?
疑問にお答えする形で解説していきますので、公認会計士と税理士の違いを確認していきましょう。
会計士より税理士の方が多いのはなぜ?
日本公認会計士協会によると2020年8月の公認会計士数は32,208人です。
一方で同時期の税理士登録者数は79,187人になっており、公認会計士の2倍以上の人数となっています。
では、どうしてこのような結果になっているのでしょうか?
これは公認会計士が税理士試験を免除されており、税理士登録できるという制度があるからです。
公認会計士は税務分野に関して学ぶ関係で税理士として働くことが認められています。
そのため、公認会計士が税理士登録をして税理士として独立することも珍しくありません。
どちらが難しいの?
公認会計士試験、税理士試験ともに難易度の高い国家資格です。
令和元年の合格率は前者が10.7%、後者が18.1%で若干税理士資格の方が合格率が高くなっています。
上記の数値にも示されるように、一般的には公認会計士の方が難しい資格だと言われています。
公認会計士試験の難易度もそうですが、公認会計士であれば実務補習と修了考査も必要ですので、その差も影響してくるかもしれません。
公認会計士試験と税理士試験について詳しく知りたい方は、記事の後半で説明していますので確認してみてください。
どちらが上なの?
年収や資格の難易度など人によって「どちらが上」かの基準は違い、公認会計士と税理士のどちらが優れているかを判断することはできません。
また、基本的に公認会計士は監査を、税理士は税務業務を独占業務として持っており専門分野が違います。
公認会計士が税理士登録をして税理士として活動していたり、どちらもコンサルティング業務をしていたりすることはありますが、それぞれに得意分野があり差別化されています。
特徴を知り場合に応じて、公認会計士と税理士を使い分けるのが良いでしょう。
年収はどちらが良いの?
国税庁の民間給与実態統計調査では、税理士と公認会計士の給料がまとめて集計されています。
結果は<strong>男性の平均年収が766万円、女性が509万円です。
このように、2つの職業はひとまとめにされる傾向があることに加え、両者とも実力主義の世界になります。
数千万円稼ぐ税理士や公認会計士がいる一方で、平均年収よりも低い年収の方々がいるのが実態です。
税理士、公認会計士で年収がどちら良いかはあまり気にせず、勤務先の規模や自分のキャリアとの兼ね合いで年収を比較した方が良いでしょう。
税理士になるには?
顧客の税務を代行したり税務の相談に乗ったりする税理士ですが、どうしたら税理士になれるのでしょうか?
税理士になるために必要な過程をご紹介していきますので、税理士になることをお考えの方は目を通してみてください。
税理士科目合格
税理士試験では11科目のうち5科目の合格が必要で、60点以上が基準ラインです。
試験科目としては、必修である簿記論と財務諸表論に加え以下の科目を選択することになります。
所得税法・法人税法・相続税・消費税法・酒税法・国税徴収法・住民税・事業税・固定資産税
※所得税法か法人税法のどちらか1つは必ず選択
税理士試験には受験資格が設けられており、学識・資格・職歴などの条件を1つでも満たすことが必要になります。
これらの科目は一度に受験する必要はなく、科目取得制度により数年間にかけて合格を目指すことが可能です。
実務経験を積む
税理士になるには、試験と同時に2年の実務経験を積む必要があります。
一般的には税理士試験の勉強をしながら、税理士事務所などで働くことで税理士登録の条件を満たせるようにしている方が多いです。
ただし、簿記会計知識が不要なものやデータ入力などの単純な事務作業は実務経験に含まれませんので、自分の業務が該当しているかを確認しておくようにしましょう。
税理士登録する
税理士として働くためには、税理士登録をする必要があります。
全部で3カ月ほどかかり登録時の費用は20~30万円と言われているため、事前の準備が必要です。
書類の提出や面談などを行った後、税理士証票交付式で税理士バッジなどを受け取ることで晴れて税理士として働くことができます。
公認会計士になるには?
監査を独占業務に持ち会計に関する様々な業務を行う公認会計士ですが、公認会計士になるためには何をするべきなのでしょうか?
公認会計士になるためのステップをご紹介していきます。
公認会計士試験を受験する
短答式試験と論文式試験の2つからなる公認会計士試験を合格することが一つ目の条件です。
受験資格はありませんが、難易度の高い試験となります。
短答式試験は年2回開催され、財務会計論、理会計論、監査論、企業法を受験し総得点の70%以上が合格です。
論文式試験では会計学、監査論、企業法、租税法を必修で受験し、加えて経営学、経済学、民法、統計学の中から1つ選んで試験を受けます。
総合での判定となり、52%の得点比率を基準として公認会計士・監査審査会が認めれば合格です。
(※短答式・論文式ともに、得点率が40%以下の科目があれば不合格になることがあります。)
実務経験を積む
公認会計士になるためには、実践的な2年間の実務経験を積む必要があります。
監査法人などで業務補助や実務従事を行って条件を満たすようにしましょう。
いつやるべきかは定められていないので試験前でも構いませんが、多くの方は試験合格後に働きながら実務経験を積む方が多いようです。
実務補習・修了考査
会計教育研修機構が提供する座学の実務補習を受け、必要な単位を取得していきます。
一般的にはおよそ3年がかかり、規定単位を獲得した後に修了考査を受けて合格しなければいけません。
修了考査の合格率は70%と言われていますので、気を引き締めて受けるようにしましょう。
公認会計士登録をする
全ての条件を満たすことができれば、公認会計士登録を行います。
必要書類を準備した後に日本公認会計士協会に提出し、受理されるとようやく公認会計士として活動できます。
書類を備える期間などを合わせると3~6ヶ月間かかると言われているので、早め早めに用意しておくことを心がけましょう。
会計士と税理士の主な就職先
国家資格を取得した公認会計士と税理士が就職先として選ぶのはどのような職場なのでしょうか?
会計士と税理士の就職先をご紹介しますので、参考にしてみてください。
監査法人
公認会計士の独占業務である監査を専門に扱うのが監査法人です。
資格の取得後に監査法人で働きながら実務経験を積む人も多く、公認会計士の職場と言えるでしょう。
監査法人では、顧客の決算書・財務書類が適切かを確認し信頼性を担保する業務を行っています。
また、コンサルティング業務などの派生業務を扱っていることもあります。
税理士法人・税理士事務所・会計事務所
顧客の税務を代行したり税務の相談に乗ったりするなど、税務に関して専門に扱うのが税理士法人や税理士事務所、会計事務所です。
公認会計士は税理士登録して税理士として働ける関係で、公認会計士資格を持つ方も働いていますが、基本的には税理士が働く職場です。
職場によっては専門分野に特化していたりコンサルティング業務を担っていたりするなど、それぞれに特色があります。
一般企業
会計や税務に詳しい公認会計士・税理士は一般企業でもとても重宝されています。
配属先として多いのは経理部や財務部ですが、キャリアや自身の希望などを考慮してマーケティングやM&Aなどと関わる部署に行くこともあるようです。
コンサルティング業界
近年、税理士や公認会計士の転職先で人気が出ているのが、コンサルティング業界です。
企業経営には会計や税務との関わりが必ずあるため、造詣の深い税理士や公認会計士のニーズが高まっています。
その中でも経営支援のコンサルや事業再生支援のコンサルなど、より関連の深い場所であれば、知識や経験を活かせることでしょう。
まとめ
今回は会計士と税理士について様々な観点から比較してきました。
税理士は公認会計士も税理士登録する関係で人数が多く、公認会計士の2倍以上の人数がいます。
どちらの試験も国家資格で難易度が高いですが、合格率で言うと公認会計士の方が少し難しい傾向にあるようです。
両者の大きな違いは独占業務の内容になります。
公認会計士は監査、税理士は税務業務を専門としており、優劣をつけることはできません。
年収に関しても民間給与実態統計調査では一緒に算出されており、職の差ではなく自分のスキルや勤務先の規模などで比較した方が良さそうです。
税理士になるためには試験の合格と2年の実務経験が必要になります。
また、公認会計士は税理士と同じく試験の合格と2年の実務経験が必要なことに加え、実務補習・修了考査も条件の1つです。
それぞれの登録を終えて晴れて税理士や公認会計士として働けるという仕組みになっています。
定番の就職先は会計士が監査法人で、税理士が税理士法人・税理士事務所・会計事務所になります。
さらに、一般企業やコンサルティング業界でも就職例があるようです。
公認会計士と税理士にはそれぞれ良さがあり、特徴を捉えて職の理解を深めることでより満足度の高い仕事ができるでしょう。
自分に合った働き方ができるように様々な情報を収集してみてくださいね。
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