個人事業主は一般的に資金調達がしにくいと言われています。
その要因はいくつかありますが、やはり法人に比べてしまうと収入が不安定になりがちで、そうした要素が、銀行から事業資金融資を受けて資金調達するハードルになるからです。
とはいえ、個人事業主の資金調達は複数ありますし、融資を受けられる金融機関も同様に多くあります。
そこで今回は、個人事業主の資金調達方法として考えられる「日本政策金融公庫」「銀行、信用金庫」「ノンバンク*」を、融資審査する銀行員目線で、また銀行員のおすすめ順に解説します。
この記事を読めば、それぞれの基本的な内容から、メリット・デメリットまで知ることができます。
個人事業主の資金調達を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
(*ノンバンク:銀行や信用金庫のように、顧客から預かった預金を資金源に融資する「金融仲介機能」を持たず、銀行などから資金調達した資金を融資する業者の総称
この記事では比較する便宜上、大手消費者金融からビジネスローンなど中小貸金業者、そして不動産担保ローン業者やファクタリング業者もノンバンクと表現することとします)
個人事業主の資金調達方法・3つのおすすめ順
まず個人事業主が利用できる資金調達の方法を
- ◆融資のスピード
- ◆融資の条件
- ◆アフターフォロー
という3つのおすすめ順で比較して、最後に銀行員として総合的おすすめ順を解説します。
<個人事業主の資金調達方法・3つのおすすめ順>
- 1.融資のスピード:申込み~融資までの時間
- 2.融資の条件:金利、融資限度額など
- 3.アフターフォロー:返せなくなったときのやさしさ
以下、それぞれの要素ごとに解説します。
個人事業主の資金調達方法・おすすめ順1. 融資のスピード
融資のスピードはノンバンクが一番です。
<融資のスピード>
1位 ノンバンク:申込みした即日の融資も可能
2位 銀行、信用金庫:最短でも1週間~1ヵ月
3位 日本政策金融公庫:平均1ヵ月以内
審査スピードは、もちろん早ければ早いほど良いのですが、その反面として審査スピードと融資条件は反比例、つまり早ければ早いほど融資条件は厳しくなります。
個人事業主の資金調達方法・おすすめ順2. 融資の条件
融資の条件のやさしさ(柔軟)では日本政策金融公庫が一番です。
融資限度は申し込む人により左右される場合があるので、ここは金利(一般的な上限*)の水準で比較しました。
<順位>
1位 日本政策金融公庫:平均2%前後
2位 銀行、信用金庫:平均3%台(*)
3位 ノンバンク:15%台~18%まで、15%台が平均
(*銀行や信用金庫では事業資金融資の金利は公表されていませんが、筆者独自の調査による平均値としました)
個人事業主の資金調達方法・おすすめ順3. アフターフォロー
アフターフォローは日本政策金融公庫が一番です。
アフターフォローとは、事業資金融資が返せなくなったときに、どれだけやさしい対応をしてくれるか?ということです。
ここは金利と同じ様に、公的金融機関として日本政策金融公庫が1位になります。
<順位>
1位 日本政策金融公庫
2位 銀行、信用金庫
3位 ノンバンク
個人事業主の資金調達~おすすめ順. 総合順位
ここまでの比較から総合的なおすすめ順は以下のようになります。
<個人事業主の資金調達方法~おすすめ順・総合順位>
第1位 日本政策金融公庫
第2位 銀行、信用金庫
第3位 ノンバンク
総合順位の理由
まず審査のスピードは、もちろん早ければ早いほど良いが、スピードと条件は反比例する点に注意が必要です。
個人事業主の資金調達でスピードは大事ですが、金利などの条件が悪く、また返せなくなった時にやさしくなければ、結局はリスクが高くなってしまいます。
もちろん金利や融資限度などの融資条件は、お金を借りる会社の業況、規模、融資の種類、借入期間などさまざまな要因で個別に決まります。
ですから借りる相手だけで単純に比較するのはむずかしい部分もあります。
ただ、一般的な傾向として公的要素が強くなるほど金利は低くなります。
つまり「借りにくいほど金利が安い」とも言えるのです。
そして返せなくなったときも、公的機関の日本政策金融公庫が一番親切です。
銀行や信用金庫もそれなりにやさしい対応(返済の軽減や元金返済棚上げなどのいわゆるリスケ)をしてくれますが対応面では、やはり日本政策金融公庫が一番やさしいです。
ちなみに日本政策金融公庫は職員も公務員的な立場なので、融資が返済されなかったとしても担当者は困らないという理由もあります。
いっぽうの銀行などでは、返せなくなってしまった融資の実行に関与した人間には、あとからペナルティーが課されることもあります。
また融資金が回収できないと、金融機関自体の経営悪化につながりますので、日本政策金融公庫ほどにはやさしくできない、といった事情もあります。
最後に残ったノンバンクですが、こちらは返せなくなれば代位弁済(融資を保証していた保証会社が一括して返済し、その後は保証会社に返済していく仕組み。代位弁済になると新規融資は受けられなくなるのが原則)や差し押さえなど融資を回収することを優先し、返済を減らすリスケはしてもらえません。
この点も、融資スピードの速さの代償とも言え、必ずしもノンバンクがダメという意味ではありません。
以上の比較から「自営業でも借入ができる金融機関は、審査が遅くても、苦しくなって返せなくなった時にやさしい相手が良い」というのが結論です。
個人事業主の資金調達方法を個別に解説
次はおすすめ順に、それぞれ簡単な説明とメリット、デメリットを解説します。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、前進である国民生活金融公庫(その前は国民金融公庫)、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫などを前身とする公的な金融機関です。
日本政策金融公庫のメリット
金利が低い点や、返済できなくなったときにやさしい点がメリットです。
また銀行からも特別扱いされています。
たとえば日本政策金融公庫の借入があっても、それは公的融資であるとして、一般的な借入金とは区別して、審査でも特別扱いをしてくれます。
ちなみに銀行の融資審査では、日本政策金融公庫の借入が残っていてもネガティブとはとられず、むしろ「日本政策金融公庫で借りることができる、しっかりした会社」とみてもらえる場合もあるくらいです。
日本政策金融公庫のデメリット
デメリットとしては、公的金融機関として審査や融資実行までの事務手続きには時間がかかります。
ここまで説明してきたように、金利や返済困難な場合の対応などやさしさはありますが、その反面融資審査と手続きのスピードは遅い傾向にあります。
したがって資金調達の点からは、デメリットと言わざるを得ません。
銀行、信用金庫
金融機関の中で個人事業主など顧客とのつながりが強いのが、銀行、信用金庫(信用組合を含む)です。
銀行、信用金庫のメリット
融資審査は「日本政策金融公庫より柔軟、ノンバンクよりきびしい」といった位置づけです。
決算の内容や所有する試算などを重視する点は、日本政策金融公庫よりきびしい側面があります。
いっぽう、地域密着という点からは、ときに情実で融資するケースもありますが、これも営利企業としての特徴とも言えます。
銀行、信用金庫のデメリット
審査スピードは日本政策金融公庫と同様、それなりに時間がかかります。
日本政策金融公庫は言ってみればお役所的で遅く、銀行、信用金庫は決算など数字を重視するので遅いといったところです。
ただし、最近は銀行や信用金庫でもスピード審査を売りにする融資もあり、スピードアップしています。
ノンバンク
ノンバンクとは金融仲介機能を持たず、銀行などから資金調達した資金を融資する業者の総称(前出)です。
ノンバンクのメリット
融資のスピードと手続きが簡単、そして利便性の高さが特徴です。
たとえばカードローンなどではインターネットで申込みから審査、契約まで完結が可能です。
最短では申込みしたその日のうちに借入れすることも可能です。
ノンバンクのデメリット
日本政策金融公庫や銀行、信用金庫に比べて金利が高い点と、返済ができなくなったときの対応はデメリットと言えます。
とはいえ、認可を受けている業者なら違法な取り立てをされるようなこともありません。
また、返済ができなくなった場合の対応はドライかも知れませんが、これも契約時にしっかりと説明されているはずなので、悪質なものではありません。
銀行員が「ノンバンクもあり」と考える理由
ノンバンクに対して、銀行員は決して良いイメージを抱いていません。
とはいえ、たとえば大手消費者金融などはテレビCM等で社会的に認知されており、先入観だけで銀行融資審査に大きくマイナスになる心配もありません。
また、ノンバンクの借入から融資をスタートしたとしても、延滞せずしっかり返済してきた履歴は「クレジットヒストリー(略してクレヒス)」と呼ばれ、借りたお金をまじめに返済してきた人間だと証明できることにもなります。
ちなみに、一部のネット記事などで「良いクレヒスを作るためにカードローンを使いましょう」といった内容もあります。
しかし、そもそもカードローンは必要なときに必要な分だけお金を借りるものであり、良いクレヒスを作るために、不要な借金をするのは本末転倒だと銀行員は考えます。
まとめ
この記事で解説してきたおすすめ順は、あくまで銀行員目線で考えたものです。
ですから、もちろんこれが正解というつもりはありません。
自分にあった方法で、メリットやデメリットも確認したうえで
「ご利用は計画的に」
やはりこの一言に尽きます。
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