あまり日常では使われない「改修」という言葉。
行きつけのお店に「内装改修工事のため休業します」と書かれていたら、なんとなく新しく内装を変えるのかな、というイメージがつきますが具体的にどんな工事かはわからない人が多いのではないでしょうか。
また、似たような「改装」や「改築」とはどう違うのか、今回は内装改修工事についてわかりやすく解説したいと思います。
Contents
内装改修工事はどんな工事?
そもそも「改修」という言葉には、改め直すこと、修理することという意味があります。
建築関係で「改修」を使う時には、改良と修理を同時におこなう工事を指します。
つまり、修理するだけではなく、さらに建物や設備をより良い状態にする必要があります。
古くなった設備を新しいものに変える、壁紙をさらにグレードアップさせるなどが内装改修工事にあたります。
他にもバリアフリー工事や和式トイレから洋式トイレへリフォームなどもこの内装改修工事に含まれます。
似ている「修繕」や「改装」「改築」との違いについて
改修と似ている言葉で「修繕」や「改装」、「改築」という言葉があります。建築関係でこの言葉を使うときにはどのような工事を指すのか、しっかり把握しておきましょう。
「修繕工事」
…修繕工事は、建物の不具合を修理して建築当初の水準まで回復することです。グレードアップはおこなわず元に戻すための工事なので、基本的には設備の修理や同じ壁紙や床の素材を使用します。また、応急処置的なものではなく完全な原状回復を目指します。
修繕工事の例) きしむ床の張替え、剥がれた壁紙の張替え(同じ素材を使用)
「改装工事」
…改装工事は、建物の床面積や間取りは変えずに内装や外装を新しいものに変えます。
同じもので変える修繕とは違い、店舗のイメージを一新したり、雰囲気をがらっと変えることができるのが改装工事です。
イメージが変わるため、今までとは異なるターゲット層を狙うことができるようにもなります。
改装工事の例) カジュアルイタリアンからちょっと高めの単価の料理を増やして高級イタリアンへ改装
「改築工事」
…改築工事は、建物の一部または全部を取り壊して建て替えや間取りの変更をおこないます。
床面積や用途は変わりません。
改築工事の例) オープンな居酒屋から個室居酒屋へ改築、パン屋が販売スペースを縮小してカフェスペースを設置
内装改修工事はいつ頃から検討したらいい?
店舗の場合、建物や設備が壊れてしまっては、お客様に迷惑をかけてしまったり、最悪の場合事故に繋がる可能性もあり、それがきっかけで信頼を失ってしまい閉店せざるを得なくなることも考えられます。
そのために、一般的には5年を目安にして内装改修工事を検討するオーナーが多いです。
また、内装改修工事には大きな金額の費用がかかります。開業時から改修工事を見越して費用の積立をおこないましょう。
内装改修工事にかかる費用について
内装改修工事を検討する際に、まず予算を決めることが大切です。
内装改修工事は、
・天井、壁などのクロス張替え工事
・フローリング、カーペットなどの床の張替え工事
・設備や家具の交換
・防水工事
・耐震補強工事
・バリアフリー工事
が主な工事となります。
クロスの張替え工事
クロスは1㎡単位での計算になります。
グレードによっても値段が変わりますが、1㎡あたり1,000円~2,000円がクロスの相場です。
また防臭、防カビ機能がついている高機能クロスや珪藻土だと1㎡あたり2,500円以上となります。
クロスの張替えには、クロス代の他に別途工事費がプラスされます。
店舗の広さによって変わってきますが、だいたい20坪ぐらいの店舗でクロスの張替えには10万~20万円ほどが平均的な予算です。
床の張替え工事
長年使っていると汚れやきしみが目立ってくる床。
飲食店だと油汚れなども滑りやすくなって危険が伴うこともあるでしょう。
店舗でよく使われる床材はフローリング、タイルカーペット、樹脂シートが人気です。
他にも耐久性の高いフロアタイルや水に強い磁器タイルもここ最近使用する店舗が増えています。
素材によって掃除のしやすさや耐久性などそれぞれメリット・デメリットがあるのでお店の業種によって適切な床材を選びましょう。
おおかた床材の張替え費用は20万~35万円とされていますが、床の張替えは新しくする床材だけではなく今使用している床材によっても張り替える費用が変わってくるので注意してください。
今どんな床材でこれからどんな床材にしたいのか、しっかりと内装業者と相談をしましょう。
設備や家具の交換
飲食店の内装で1番費用が高いのが厨房設備です。
厨房設備を一新する場合、100万円以上費用がかかります。
厨房設備はリースなども豊富に用意されているので、費用に悩んだらリースまたは中古品を検討することも視野にいれておきましょう。
店内で使用している家具も、年数とともに古くなっていきます。
ここ最近はIKEAやニトリなど低価格でもデザイン性に優れた家具が増えているので、実際自分の足を運んで確かめてみるのもおすすめです。
防水工事
防水工事にも工事内容によってグレードがあります。
耐久性を高めるためにグレードアップを検討することも必要です。
防水工事も1㎡あたりの金額で算出されます。
防水工事はおおまかに
・ウレタン防水工事
・FRP防水工事
・塩ビシート防水工事
の3種類あります。
ウレタン防水工事が一般的なもので、価格も1番安いですが耐久は2~5年と短いです。
FRP防水工事や塩ビシート防水工事は価格が高くなりますが、その分どちらも耐久は10年以上と言われています。
費用は1㎡あたり5,000円~10,000円です。
耐震補強工事
地震大国と言われる日本では、耐震工事も欠かせません。
万が一地震で店舗が倒壊してしまったらお客様の命を奪ってしまうことにもなりかねません。
耐震補強工事は、
・壁の補強をおこなう
・鉄筋コンクリートの増設や新設して基礎を強くする
・腐ったりシロアリなどの被害を受けた木材を交換する
が主な工事内容です。
一般的に耐震補強工事は150万円前後とされていますが、築年数が増えるごとに費用もかさみます。
バリアフリー工事
手すりの取り付けや床の段差解消だけではなく、床を滑りにくい素材へ変更する、和式トイレを洋式トイレに変えるのもバリアフリー工事にあたります。
内装改修工事には補助金や助成金が利用できる!
補助金や助成金は、国や自治体が中小企業をサポートするための返済不要の資金です。
ただし、申請しないと受け取れません。
補助金や助成金は世の中の動きや情勢によって新設されることもあれば廃止されることもあるので、内装改修工事をする際に今どんな補助金や助成金が受け取れるのか、しっかり確認しましょう。
補助金と助成金の違いについて
補助金と助成金には大きな違いがあります。
補助金の目的は、国や地方の経済活性化に向けて産業や事業の育成をサポートするための資金となります。
補助金の資金は国や地方自治体から支給され、金額が大きくなる傾向にあります。
そのため、補助金を受けるには審査があり審査を通らなければ受け取ることができません。
一方助成金は、職場の環境改善や労働環境の改善、雇用の安定を目的として給付される資金です。
厚生労働省や地方自治体が主体となり支給されます。
金額が小さいですが、審査が不要で条件を満たせば誰でもが受け取れるのが補助金と大きく異なる点です。
内装改修工事で使える補助金や助成金について
まず大切なのが、補助金や助成金は内装改修工事を開始する前に申請しなければなりません。
工事開始後、また工事完了後に申請をしても受け付けてもらえないので注意してください。
また、申請期間が設けてあったり、助成金の場合には条件を満たしていても予算上限に達してしまうこともあります。
早めに手続きするのを忘れないようにしましょう。
店舗の内装改修工事で使える助成金、補助金の例)
・小規模事業者持続化補助金
…5名以下の商業、サービス業、または20名以下の製造業、宿泊業の事業者に支給される補助金です。
販路開拓をサポートするための資金で、店舗改装や外注費などが使用例として挙げられています。
・業務改善助成金
…小規模事業者、中小企業が設備投資など生産性向上取り組みをサポートして、労働者の賃上げにつながることを目的とした助成金です。
設備投資だけではなく、人材育成に向けた教育や研修費用、コンサルタントの起用、また店舗改装やリニューアルで活用された事例があります。
賃金引き上げが目的の助成金なので、申請の際に賃金引き上げ計画の策定が必要となり、実現することが条件です。
補助金、助成金の支給はいつ?
補助金や助成金は工事前に受け取ることはできません。
内装改修後に支給されます。内装改修の費用は、基本的に着工時、工事中間期、工事完了時の3回にわけての現金払いとなります。
そのため、補助金や助成金に頼らない資金計画が必要です。
まとめ 内装改修工事は計画性が大切!
内装改修工事は、長く店舗を経営していれば必ず必要になる工事です。
建物は年数と共にどんどん老朽化していきます。
設備や内装のグレードアップをはかって、建物自体の価値を下げないことが継続的にお客様を呼び寄せることにもつながります。
内装改修工事の目安は、開業から5年を目安にして資金計画をしっかりと立てることが大切です。
また、内装改修工事の期間は店舗を休業しなければいけません。
その間収入はないことも計算に入れておく必要があります。
予算をしっかり立てて予算オーバーにならないように内装業者と相談しながら改修工事を進めていきましょう。
またどれだけ検討を重ねても自己資金でまかなえない場合には、融資を受けることを視野にいれなければいけません。
内装業者には、資金面のコンサルティングを受け持っているところもあるので、困った時には専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。