今回は飲食店の厨房の防水工事について焦点をあてていきます。
飲食店を経営する上では、調理をする時や食器を洗う時などに必ず水を使います。
そのため、店内の防水工事は必要不可欠であり、店内の防水状況は定期的に見直す必要があります。
今回は飲食店が厨房の防水工事を行うべき理由から、防水工事を行う際の注意点ついて詳しくご紹介していきます。
Contents
厨房の防水工事が必要な理由とは
飲食店を経営する上では、厨房の防水工事を行うことは必要不可欠です。
防水工事を行わなければいくつものトラブルに繋がってしまう可能性があるのです。
まず初めに、飲食店が厨房の防水工事を行うべき代表的な理由をいくつかご紹介していきます。
衛生状態を保つことができる
厨房では常に水を使っており、ホースを繋いで厨房の床に水を流しながら清掃を行っている店舗もあります。
水を多く扱っている場所ではカビや菌が繁殖しやすくなり、害虫が発生してしまう可能性も高くなってしまいます。
また、店舗内の木材の腐敗や金属の酸化なども引き起こします。
木材の腐敗や金属の酸化が悪化してしまうと、後々に大きな規模の改修工事が必要となる事態に繋がってしまう可能性もあるのです。
さらにはその腐敗による悪臭が店舗の中や外にも漏れてしまうことで、来店するお客様や近隣に住む人からのクレームになる恐れもあります。
漏水を防ぐことができる
飲食店のように厨房で大量の水を扱う店舗であれば、それに応じて給水や排水管の量が多くなり、厨房で漏水を起こしてしまう可能性があるのです。
厨房での漏水がひどくなれば改修工事が必要となり、その工事には膨大な費用がかかってしまいます。
また、漏水の影響で営業中止になる店舗もあります。
そうなれば被害額はかなりの金額になってしまうでしょう。
飲食店のようにテナントに店舗を出店することが多いケースでは、店舗の漏水が原因で下の階の店舗に迷惑をかけてしまい、店舗間でのトラブルに繋がってしまうこともあるのです。
厨房の防水工事は、自身の店舗のためだけではなく、周りの店舗や近隣の人に迷惑をかけないようにするためでもあるのです。
厨房の防水工事の種類とは
厨房の防水工事を行う際にはいくつかの種類に分けられ、「ウレタン防水工事」、「FRP防水工事」、「シート防水工事」の大きく3種類に分けられます。
それぞれの防水工事ではやり方や用途が異なってくるため、費用面も異なってくるのです。
それでは、それぞれの特徴についてご紹介していきます。
ウレタン防水工事
ウレタン防水工事とは、ウレタン樹脂製の塗料を塗布して乾燥することで防水層を作る方法のことです。
ウレタン防水工事のメリットとしては、価格の相場が1㎡あたり、約4,000円から6,000円とされており、他の工事方法と比較しても単価が安くなっています。
また、既にウレタン防水工事が行われている場所の上に塗り重ねをすることができるので、厨房などの物が多いスペースでの改修も簡単となっています。
その他にも、工事を行う建物の構造が複雑だったとしても短期間でできるというメリットもあり、現在日本で防水工事を行う際には最も多く取り入れられている工法なのです。
しかし、メリットが多い反面でのデメリットとしては、定期的にメンテナンスを行う必要がありメンテナンスの際に高い費用がかかってしまうという点が挙げられます。
特にウレタン防水工事は約2から5年程度が寿命ともいわれているため、店舗を長期で続ける予定で、防水効果も長期の間維持しておきたいのであれば、あまり向かない工法とも言われているのです。
しかし、テナントで数年間しか店舗をやる予定がないという方であれば、あまりデメリットとはならないため、店舗ごとの方針によってくるでしょう。
FRP防水工事
FRP防水工事の”FRP”とはFiberglass Reinforced Plasticsの略であり、繊維強化プラスチックのことを指します。
主にガラス繊維などで補強されたプラスチックのことであり、強度、耐久性、成形性に優れているため、船や水槽、自動車や屋根など、水に触れる機会が多いモノの防水を行う際に使われることが多く、飲食店の厨房の防水工事にもよく使用されています。
FRP防水工事の価格相場としては、1㎡あたり、約5,000円から7,000円と少し高めに設定されていますが、耐久年数が10~15年となっておりウレタン防水工事に比べても非常に長くなっています。
FRP防水工事の場合でも定期的に厨房のメンテナンスは必要となりますが、安定性が優れているので幅広い分野で使いやすい工法となっています。
また、FRP防水工事を行ってから効果の速度が速いので、施工を始めてから素早く対応ができるので、少しでも早く厨房を使える状態にしたい人などにはオススメの工法となっています。
シート防水工事
シート防水工事とは、防水シートを専用の接着剤で張り付けたり、機械で鉄板に固定することで安定した防水効果を発揮する工法であり、厨房の防水工事にも使用されることがあります。
シート防水工事は非常に強力な防水工法であるため、相場としても1㎡あたり約6,000から8,000円程度と高めになっていますが、耐用年数が非常に長く、接着剤式でも約10から12年程度は続き、機械式なら約15から20年程続くとされており、非常に長持ちする防水工法です。
どちらの工法でも10年以上メンテナンスが不要とされている点は大きなメリットです。
デメリットとしては、作業が非常に困難なため、どこの業者でも対応できるというわけでもなく、作業の時間も比較的長めにかかってしまうという点です。
防水工事を行う際に気を付けることとは
防水工事を行う上ではいくつかの注意点があり、この注意点を把握しておかなければ防水工事を行う際に失敗をしてしまうこともあるのです。
それではいくつかの代表的な注意点をご紹介していきます。
物件の種類ごとに注意点を見分ける
飲食店を経営する上では大きく分けて「居抜き物件」と「スケルトン物件」の2つに分けられます。
それぞれの物件によって注意するべき点が異なるので紹介していきます。
居抜き物件の場合
居抜き物件とは、前の事業主の内装設備がそのまま残っている物件のことであり、前の事業主が飲食店であった場合には、厨房や内装の設備をそのまま使うことができるのです。
もし前の事業主が飲食店として経営をしていた場合、ほとんどの確率で厨房の防水工事を行っていることがほとんどです。
しかし、「前の店舗が厨房の防水工事を行っているから、自分はやらなくても大丈夫だ」などと考えてしまい疎かにしてしまうと、防水効果が切れてしまっていることに気が付かないケースもあるのです。
気付いた時に既に店舗の経営を始めてしまっていては、急遽店舗の経営を一時的に止めなければいけない事態にも繫がり兼ねないので、既に厨房の防水工事を行っている物件だとしても、防水効果があとどれほど持つのかをチェックしておくべきなのです。
スケルトン物件の場合
スケルトン物件とは、居抜き物件とは真逆で前の事業主の内装設備が真っ新な状態の物件です。
スケルトン物件の場合では、ほとんどの確率で防水工事が行われていないため、自身で防水工事を行わなければいけません。
しかし、「一から厨房を作る上に防水工事まで行うのは面倒くさい」などと防水工事を行わないと、後々の漏水や衛生面でのトラブルに繋がってしまうので、必ず行うべきなのです。
工事の終了時期を把握しておく
飲食店を始める際や防水工事の為に一時的に営業を止めている際には、営業をスタートさせるタイミングが非常に重要となります。
また、防水工事は行えばすぐにその効果が出るというわけでも無い為、厨房の防水工事を開始してから再開させるまで、ある程度日程の逆算が必要となります。
その日程がずれてしまうと営業再開日が遅れてしまったり、防水工事の効果が出ていないうちに厨房を使ってしまい、防水工事を行った意味がなくなってしまうこともあるのです。
防水保証書を保管しておく
家電製品を購入する際には「保証書」というものが必ず付いてきますが、防水工事を行う際にも付いてくるのです。
防水工事の場合の保証書は、工事を行った会社と工事に使った防水材のメーカーが連名で発行するものとなっています。
もし施工が完了した後に、施工箇所の不具合が発生し、設備やお客さんに被害が出てしまった場合には、補修の費用や賠償金の支払いによる保証が効くのです。
しかし、この時に「防水保証書」を持っていなければ保証は適用されないため、確実に保管しておきましょう。
<最後に>ドライキッチンも視野に入れるべき
ここまでで厨房の防水工事の種類や注意点についてご紹介してきましたが、最近では「ドライキッチン」というものも厨房の防水目的として取り入れられています。
ドライキッチンとは、その名の通り乾燥した厨房のことであり、厨房内に余計な水を残さずに乾燥した状態を維持できる仕様になっています。
ドライキッチンのメリットとしては、防水による菌の繁殖などを防ぐ衛生面だけでなく、床が濡れていることでスタッフが転倒してしまうのを防ぐという点では、安全面も防ぐことができるのです。
また、ドライキッチンにすることで、必要以上に厨房の防水工事を行う必要が無くなるので、一度検討してみてはいかがでしょうか。