これまで飲食店を開業するには、厨房と客席のスペースを確保できる物件探しから始まり、表には看板を出して内装もしっかり仕上げることが大切でした。
しかし、ここ数年インターネットの浸透とともに飲食店の形が大きく変化しています。
デリバリー客のみをターゲットとした客席のない飲食店、キッチンを複数の店舗で共有するシェアキッチンなど、新しいタイプの飲食店が急増しています。
またマッチングサイトにより店舗の譲渡や承継もこれまでよりやりやすくなりました。
このようなインターネットを使用した新しいサービスを利用することによって、開業までの期間を短縮できるとともに開業費用もぐっと抑えることができます。
開業資金が0円でも飲食店を開業できる時代へと刻々と変化しています。
インターネットなど新しいサービスを利用した飲食店の0円開業
サブスクリプションとは、「定期購読、定期購入」という意味ですが、現在では購入費用を払って物を買うのではなく、毎月一定額を支払ってその期間だけ利用できるスタイルとして使われています。
ここ数年サブスクリプションが流行し、人は物を所有することに縛られなくなりました。
それは飲食店などの店舗を持ちたいオーナーにも広がっています。
高額な開業費用を支払って店舗を所有することにこだわらない、新しい時代の0円開業の飲食店が増えています。
・シェアキッチン
UberEATSの進出やコロナによってテイクアウトやデリバリーが当たり前になってきた近年、客席を必要としないデリバリーを専門とした飲食店が増えています。
シェアキッチンを利用した飲食店の開業もその1つです。
シェアキッチンとは、1つのスペースに複数の厨房を設置して貸し出している施設です。
あくまでも厨房のみで客席はありません。
複数の店舗でキッチンを共有し、UberEATSや出前館などのフードデリバリーを利用して、客席を持たずにデリバリーのみをターゲットとして営業をしています。
シェアキッチンを利用するには、登録料と毎月の利用料のみを支払えば利用できるところがほとんどで、まさにサブスクリプションに近いスタイルの出店です。
従来の飲食店は、客席数を満たした広さの物件探しから始まり、物件取得費、内外装費、厨房などの設備費用など開業費用が1,000万円以上かかるのが当たり前でした。
シェアキッチンを利用すれば、これらの費用が全くかかりません。
シェアキッチンの登録料は、0円~50,000円ほどが相場です。
この登録料と毎月の使用料を支払えば飲食店を開業できるため、ほぼ開業費用0円で自分の飲食店を持つことが可能になります。
シェアキッチンの中には、焼き菓子やパンが焼けるようにコンベクションオーブンを備えているところや、今後店舗を構えることを視野に入れた創業支援をおこなっているところもあり、自分の目的に合わせた選択も可能です。
・マッチングサイトを利用した事業承継
後継者がいないなどの理由により「事業承継」を募集している飲食店もあります。
現在、このような事業承継をしたい飲食店オーナーと、なるべく安い費用で飲食店を開業したい人とを結びつけるマッチングサイトが人気です。
日本政策金融公庫の公式サイトでも、事業承継マッチング支援をおこなっています。
中には、ほとんどタダ同然で事業継承を募集しているオーナーもいるため、こまめにチェックしてみましょう。
事業継承で気を付けなければいけない点は、その事業や従業員、負債など、どこまでが継承の範囲かどうかを契約前に把握することです。
基本的に事業継承の場合、事業内容、従業員、負債は継承されます。
自分がやりたい業種での事業なのかどうか、またこれまでの経営に負債はないか、1日の売り上げがどのくらいあったのかを今のオーナーに細部まで確認してください。
また、事業継承は、お店のオーナーが常連さんや知り合いにお願いするケースも想像以上に多く存在しています。
自分が飲食店を経営したいということを多くの人に知ってもらって人脈を広げておくこともそのような情報を得るために役立つことがあるかもしれません。
・クラウドファンディングを利用した0円開業
今、資金調達の1つの手段として注目を浴びているクラウドファンディング。
飲食店の開業資金としてクラウドファンディングを利用するオーナーも増えています。
クラウドファンディングは、資金の集め方に「寄付型」、「購入型」、「投資型」の3つに分けられます。
◆寄付型…原則として支援者にリターンがないクラウドファンディングです。
主に災害支援活動や社会的弱者の支援活動に利用されることが多く、支援者にとって、支援金は寄付の扱いになるため課税の対象外となるメリットがあります。
◆購入型…支援者には支援金の金額によってその商品やサービスのリターンを受け取ることができます。
購入型の場合、現金のリターンはできません。多くのクラウドファンディングはこのタイプに当てはまります。
飲食店の場合、割引券や会員券、イベントへの参加の他、取り扱っているフードの提供や看板やサイトに支援者の方の名前を掲載する、コラボ商品の開発に携われる権利などをリターンとして提供しています。
◆融資型…融資型は、資金調達をしたい事業者と、資産運用をしたい投資家と第三者のファンド運営者が結びつけるためのクラウドファンディングです。
銀行などの金融機関から融資が受けられない場合や、融資額が足りない場合などに利用できます。
そして元本に金利を足した分をファンド運営者に返済します。
投資家は出資して運用している期間利息を受け取ることができます。
元本や利息は保証されておらず、倒産などにより元本割れの可能性もあります。
クラウドファンディングを開業に利用するメリット
自己資金が0円でも開業資金を集められる
飲食店を新規開業する場合、実績がないため銀行の融資を受けることが困難な場合があります。
また、日本政策金融公庫の融資も自己資金に対して融資額が決まるので、自己資金がない場合、日本政策金融公庫からの融資を受けることも難しいです。
クラウドファンディングを利用することによって、自己資金なしでも開業資金を集めることができるようになります。
注目されるクラウドファンディングになればそれだけで宣伝効果になる
目的に共感できるものやちょっと変わったクラウドファンディングは、TwitterなどのSNSでシェアされることがよくあります。
SNSでシェアされることで、多くの人の目にとまり、支援金に繋がらなくても、「お店ができたら食べに行こう」と思ってくれるファンを開業前に増やすことができます。
クラウドファンディングを開業に利用するデメリット
必ずしも目標額を集められるわけではない
クラウドファンディングは、100%目標額を集められるものではありません。
クラウドファンディングを成功させるには、魅力的なリターンや共感できるコンセプト、注目を集めるオリジナリティなどが必要です。
逆にそれがない店舗では、クラウドファンディングを集めることは難しいでしょう。
自分自身でも発信していく努力が必要
クラウドファンディングを集めるためには、クラウドファンディングのサイトに載せるだけではなく、そのページを自分自身でも発信していくことが大切です。
TwitterやインスタなどのSNSの活用、また知人や友人など周りの人にも宣伝をして支援を募りましょう。
飲食店が利用できるクラウドファンディングサイト
CAMPFIREは2011年に設立されたクラウドファンディングのサイトです。
国内最大級で、これまで650万人以上、530億円以上の支援を生み出しています。
2013年に立ち上がったクラウドファンディングサイトで、Makuakeから様々な大ヒット商品も生み出されています。
Makuakeのプロジェクト担当がつき、サポーターの属性などの市場分析もおこなってくれるので開業後の経営にも生かせることができます。
日本で初めてクラウドファンディングサイトを開設したのが、このREADYFORです。READYFORでは、購入型、寄付型のクラウドファンディングを取り扱っています。
READYFORは手数料7%、決済手数料5%の合わせて12%と業界最安値の手数料が魅力です。
その他の0円開業
その他、開業費用を抑えられる開業方法もご紹介します。
・キッチンカーを利用した移動販売
キッチンカーの移動販売による飲食店の開業も、ここ最近週末副業として人気が高まっています。
キッチンカーも店舗物件が不要なので、物件取得費や内外装費、家賃などの固定費がかからず初期費用をぐっと抑えることができます。
厨房設備がしっかり整ったキッチンカーのレンタルサービスを利用すれば、キッチンカーを購入する必要もありません。
ただし、キッチンカーをレンタルした場合、毎月の固定費にレンタル料が上乗せされるので注意してください。
サラリーマンなどが週末のみにキッチンカーを利用して飲食店を開業することも可能なので、将来飲食店を開業したい方の副業としてもおすすめです。
・営業している飲食店の間借りをする
バーや居酒屋など夜営業が主な業種では、昼間空いている店舗を有効活用したいと思っているオーナーも多いです。
また逆にランチのお客様がターゲットのお店では夜の時間誰かが使ってくれれば、と探しているケースもあります。
お店側にとっては空いている時間を活用できる、そして間借りを希望している側にとっては初期費用がかからずに開業できることからお互いにメリットのある営業手段です。
このような間借りもマッチングサイトで第三者が間に入ることにより気軽におこなえるようになりました。
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まとめ 飲食店の0円開業はこれからも増加傾向に
インターネットの発展や、デリバリーの浸透により、飲食店はこれからもどんどん変化していきます。
客席のある店舗を構える、という概念から少し外れるだけで0円開業も可能です。
0円で始めることができれば、副業として飲食店を選ぶことや将来自分のお店を構えたいけれど試しにやってみる、と気軽に飲食店の開業をする人も増えてくるでしょう。
今まで高額な開業資金のためにあきらめていた人にもチャンスです。