会社を経営する上で、妻を役員にすることは一見多くのメリットがあるように思えます。しかし、その一方でデメリットも存在します。この記事では、妻を役員にする際のデメリットとその対策について詳しく解説します。
妻を役員にする4つのデメリット
1. 社内に不和を生む可能性がある
家族が役員になると、社内での公平感が損なわれることがあります。特に、親族が努力なしに高額な報酬を受け取っていると見なされると、他の従業員の労働意欲が低下する恐れがあります。これにより、社内の人間関係が悪化し、労働環境が悪くなる可能性があります。このような状況を避けるためには、透明性のある報酬制度を設けることが重要です。
2. 給与としてみなされないことがある
妻を役員にすると、給与ではなく役員報酬として扱われます。役員報酬は会計上の取り扱いが異なり、税務上のメリットを得にくい場合があります。例えば、毎月同じ金額を支払わないと損金に算入できないなどのルールがあります。そのため、適切なルール作りが必要です。
3. 役員報酬を変更できない
役員報酬は基本的に事業年度途中で変更することができません。経営状況が悪化した場合でも、期首に決めた報酬額を支払わなければならないため、財務的な柔軟性が欠けることがあります。経営が著しく悪化した場合に限り、例外的に変更が認められることもありますが、基本的には難しいとされています。
4. 副業ができない可能性がある
妻が他の会社で働いている場合、その会社の副業規定によっては、夫の会社で役員になることが禁止されることがあります。このため、妻が勤めている会社の就業規則を事前に確認することが重要です。
妻に退職金は支給できる?
法人であれば妻を役員にしている場合、従業員と同様に退職金を出せます。
ただし、適正な金額でなければ費用としては扱えず、またどのような業務をやっていたか税務調査で聞かれる場合もあるため注意は必要です。
一方で、個人事業者が妻に支払った退職金は必要経費となりません。
ただし、必要経費にならなくても妻にこれまで働いてきた行為を労う退職金を支払うことは制限されていませんので、支払うこと自体の問題はありません
みなし役員とは?
みなし役員とは、法人税法上の役員を指します。具体的には、法人の使用人としての地位を有する者であっても、実質的に法人の経営に従事している者が該当します。みなし役員は役員報酬の制限などを受けるため、注意が必要です。
役員には「会社法上」と「法人税法上」の2種類があり、会社法上の役員は「取締役」「会計参与」「監査役」で、法人税法上の役員は「取締役」「執行役」「会計参与」「監査役」「理事」「監事及び清算人」「みなし役員」です。
みなし役員の定義は2つあります。
- 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)以外で、該当する法人の経営に従事しているもの
- 同族会社の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)のうち、株式所有割合の要件を満たす者。かつ、該当する会社の経営に従事している者。
妻を役員にした時の給与相場とは?
妻の役員報酬目安は、社長の報酬の60%~80%という考え方もあるようですが、いくらだったらいいという相場や基準値は存在しません。
なぜなら、妻の職務内容や会社の収益状況、従業員の給与などによって変わってくるからです。
たとえば妻を役員にしても経理の仕事しかさせずに役員報酬として100万円を支払っていて、一般従業員が30万円だった場合、税務調査で高いと指摘される可能性は高いでしょう。
そのため、税務調査で納得させられる根拠がなければ高額な報酬を支払えないと考えた方がいいかもしれません。
また、社長との報酬に差を設けておけば業務内容や権限や責任を考慮した報酬額となり、税務調査時に「いくらなら適正なのか」の質問もできます。
一番安全なのは役員報酬額を顧問税理士の先生と決めることで、事前に相談しておくといいでしょう。
妻を役員にするメリット
1. 給与を経費にできる
妻を役員にすると、その給与を経費として計上できるため、効果的な節税が可能です。特に、所得税と住民税が減額される点が大きなメリットです。夫婦二人で報酬を分けることで、累進課税率を低く抑えることができます。
2. 信頼できる人材
妻を役員にすることで、信頼できるパートナーと共に経営を行うことができます。特に、創業初期の忙しい時期において、共に働くことで経営の安定に寄与します。
3. 社会保険に加入できる
妻を役員にすることで、社会保険に加入させることができ、年金や医療保険の面でのメリットがあります。特に、厚生年金の加入により、将来的な年金受給額が増える点が大きな利点です。
常勤役員としてみなされる場合とは?
常勤役員としてみなされるには、下記3つの条件が必要です。
- 週5日で出勤をしている
- 経営の中核を担っている
- 管理職として部下の管理を行っている
それぞれの内容を詳しく見てみましょう。
週5日で出勤をしている
従業員と同じく、週5日で出勤していると常勤役員としてみなされます。
非常勤役員は必要な時だけの出勤でいいため、例えば会社でトラブルや案件が発生してからの出勤でも問題なく、毎日決まった時間に出社する必要はありません。
出勤日数は常勤と非常勤とで大きな違いなので、常勤役員とみなすには週5出勤になると認識しておきましょう。
経営の中核を担っている
常勤役員は、経営の中核を担っている必要があります。
なお会社法で定められている常勤役員の役割は以下の通りです。
取締役:業務執行の意思決定を担当
監査役:取締役と会計参与の業務を監査
会計参与:取締役と共同で、株式会社の計算書類等を作成
上記はあくまでも役割として定められているものであり、会社ごとにあるミッションをそれぞれ遂行しなければなりません。
社内でいざこざを起こさないためにも、常勤役員としての役割を全うすることは重要です。
一方で、毎日出社していても会社の業務に関係ないことをしている場合は、常勤役員に認められないことも多いでしょう。
特に、家族経営の会社の場合は出社しているだけで経営に関与していないこともあるでしょう。
このような場合は、常勤役員として認められにくいです。
管理職として部下の管理を行っている
常勤役員は管理職として部下の管理を行っているケースも多いです。週5で出社しているため、常日頃の業務にも精通していなければなりません。
部下を持っていることも常勤役員の特徴といえるでしょう。
また、直接部下を持っていなくても外注の管理などをしている場合でも、部下を持っているとみなされることもあります。
そのため、形式にかかわらず自分の裁量で人を動かす権利があり、動かす人がいるということが必要になるでしょう。
まとめ
信頼できるパートナーだからと妻を役員にするメリットは確かにありますが、会社内の不和を生む可能性や給与として認められないケースなどのデメリットも存在します。
また、みなし役員と判断される場合もあるため、妻を役員にするには注意が必要です。
創業間もない頃は安いコストで一緒に働けるため役員にしてもいいかもしれませんが、会社を大きくしていく段階で従業員にするなども考えた方がいいかもしれません。
個人でも法人でも独立を少しでも考えている人はお気軽に経営サポートプラスアルファにご相談ください。
妻を役員にできるかどうかの相談を含めて、相談は何度でも無料です。