さまざまな理由から会社を分けるケースがあります。
実際に会社を分ける際には、具体的な方法やメリット、リスクなどについてきちんと理解しておくことが大切です。
そこで、会社を分ける際に知っておきたいポイントを解説します。
会社を分けるメリット
なぜ会社を分けるのかメリットについて解説しましょう。
組織をスリム化し業務の効率化を図る
組織のスリム化を図るために会社を分けるケースがあります。
会社組織が大きくなってくると管理するのが困難になるからです。
事務手続きは煩雑になり、経営管理も難しくなって、仕事の効率が落ちるケースもあります。
会社を分けることで組織をスリム化することができれば、それぞれの会社ごとに業務管理がやりやすくなり責任も明確になるでしょう。
後継者を育成できる
後継者を育成するために会社を分ける場合があります。
会社を分けて後継者候補に経営を任せるのです。
経営者としての経験を積ませることができ、経営者としての素質や能力があるのか確認するのに役立ちます。
新規事業に挑戦しやすい
会社を分けることで新規事業に挑戦しやすくなります。
既存の会社で新規事業を立ち上げると経営管理が複雑になり、成果や責任などの把握も曖昧になる点がデメリットです。
そこで、会社を分けて新規事業を始めれば問題を解決できます。
業務の管理がしやすくなり、仕事の効率アップにもつながるのです。
また、会社を分けて新規事業をすれば、仮に事業が失敗しても本業への影響を抑えられます。
新規事業で不祥事が起きたとしても、本社のイメージダウンを軽減できるでしょう。
資産や契約などの引き継ぎが可能
会社を分けると資産や契約などを引き継ぐことが可能です。
そのため、事業の継承を包括的に進めることができ、個別に契約や承認などを見直す必要はなくシンプルな手続きで済ませられます。
たとえば、一部の事業を丸ごと別の会社へ移すことができ、事業への影響は最小限に抑えられるのです。
会社を分ける際のリスク
会社を分けるときのリスクについて紹介しましょう。
税務や財務の手続きが複雑
会社を分ける際にはさまざまな手続きが発生します。
法人税や消費税など税金に関する届出は多いです。
会社の分け方にはさまざまなパターンがあり、それぞれ該当する項目について届出書を提出します。
どんな手続きが必要なのか把握するのは専門的な知識が必要になり難しいです。
会社を分ける際には資産や負債などの引き継ぎにも注意しなければいけません。
資産の移転によって税金が発生するケースもあります。
財務状況の悪い会社が会社分割をすると負債も引き継がれるため経営が苦しくなることもあるでしょう。
財務状況を適切に判断して、財務上の手続きを慎重に進めることが求められます。
税務や財務について正しい知識を持って判断できる人材がいないと会社を分ける際に苦労するのです。
許認可の引き継ぎができないケースがある
会社を分ける際には新設分割と吸収分割という方法があります。
新設分割の場合は、原則として許認可の引き継ぎができません。
吸収分割の場合は、承継会社が許認可を有していると引き継ぐことができます。
ただし、吸収分割でも許認可の引き継ぎに制限が設けられているケースもあるため注意しましょう。
各事業ごとに許認可の取り扱いは大きく異なります。
また、事業譲渡については許認可の承継は認められておらず、承継先の会社が新規に許認可を得なければいけません。
取締役を兼務することは難しい
会社を分ける際には取締役を兼務しようとするケースがあります。
しかし、場合によっては取締役の兼務で法律上の問題が生じることがあるため注意しましょう。
たとえば、競争関係にある会社で取締役を兼務すると競業避止義務に違反するケースがあります。
取締役を兼務することで競争を制限することになる場合は独占禁止法に違反することもあるのです。
また、親会社で監査役をしている場合は子会社で取締役をできないという規定もあります。
取締役を兼務する際には法律上の問題の有無を確認することが必要であり判断が難しいのです。
固定費が増える
会社分割をすることで固定費が増えます。
単純に考えて固定費がこれまでの倍かかるからです。
オフィスの賃料や光熱費、人件費、顧問料などの固定費が増えて経営を圧迫することがあります。
会社を分ける際にはランニングコストについて考慮することが大切です。
会社を分ける方法
会社を分けるための具体的な方法について解説します。
吸収分割
吸収分割とは会社が特定の事業について有する権利義務の全部あるいは一部を既存の他社に承継させることです。
たとえば、A社がX事業の権利義務をB社に承継させて、その対価としてA社にB社の株式を交付するというケースがあります。
このときに交付する株価の割合によって、B社はA社の子会社にもなる場合もあるのです。
新設分割
新設分割とは新しく設立された会社に事業の権利義務を引き継がせることです。
事業部門全体を分割する場合は、権利義務をまとめて新設会社に移転します。
この場合、新たに会社が設立されたタイミングで事業を移転するのが特徴です。
したがって、事業の承継は現物出資に相当します。
現物出資とは金銭以外の財産による出資のことです。
事業譲渡
事業譲渡では権利義務を個別に別会社へ移転するための手続きが発生します。
新会社を設立して事業譲渡をすれば、新設分割と同じ結果になるのですが、事業譲渡の方が手続きは複雑です。
事業譲渡は、特定の資産や従業員を残しておくことができるのがメリットです。
デメリットは、事業譲渡の場合は取引先や従業員との契約が引き継がれない点です。
事業譲渡をした後に個別に契約をし直す必要があります。
そのため、事業譲渡に否定的な従業員がいると譲渡元の会社に残ってしまうケースもあります。
会社分割の方法は専門家への相談がおすすめ
最終的にどのような方法で会社分割をするのかは専門家に相談することをおすすめします。
会社分割の方法はそれぞれメリットとデメリットがあるからです。
会社を分ける目的や状況などはそれぞれかなり異なっています。
そのため、最適な会社分割の方法は常に同じとは限らないのです。
専門家に相談することで、最適な会社分割の方法を提案してもらえます。
会社分割の方法について悩んでいるならば経営サポートプラスアルファにご相談ください。
会社設立のプロであり、会社分割の悩みについても対応できます。
会社を分ける際に注意したいポイント
会社を分ける際に注意しておきたいポイントを解説します。
旧会社と新会社で人事制度などが異なると混乱の原因になる
会社を分ける際には制度面で統一を図ることが大切です。
たとえば、人事制度などが異なっていると混乱の原因になります。
人事制度の統合はとても重要な課題となるのです。
たとえば、旧会社では高い給与をもらっていたのに、新会社では給与体系が変わって給与が減ってしまうと従業員は不満を覚えます。
不公平感を覚えて従業員のモチベーションの低下につながるのです。
勤務時間が異なる場合は日常業務に障害が発生するでしょう。
その他にも、採用過程におけるルールなどもしっかりと統一することが大切です。
従業員へのフォローを行わないと人材流出につながる
会社を分ける際には既存の従業員に対するフォローをしっかりと行うことが大切です。
たとえば、既存の会社から新会社へと従業員が転籍する場合は、きちんとフォローをして不安を取り除きましょう。
ちゃんと説明をして納得してもらわないと従業員が転籍を嫌って退職するケースもあるからです。
会社を分けた結果として優秀な人材が流出するケースは珍しくありません。
株式会社で会社を分けるには株主総会で3分の2以上の同意が必要
株式会社で会社を分けるためには株主総会で決議をしなければいけません。
特別決議が必要であり、3分の2以上の同意が必要です。
また、議決権株式総数のうち過半数の出席が条件とされています。
事前にしっかりと会社分割について計画書を作成して株主を説得しなければいけません。
前もって株主から理解を得ていないと株主総会を開いても否決される可能性が高いです。
ただし、会社分割で対価として交付する財産価額が純資産額の5分の1以下となる場合は簡易会社分割として扱われ株主総会は省略できます。
会社を分けた結果生じるコストに注意する
会社を分けるためにはさまざまなコストが発生します。
たとえば、新しい会社を設立する場合は、法定費用が生じます。
株式会社であれば約25万円、合同会社ならば約11万円です。
それに加えて、新しいオフィスを借りて、オフィス家具などを揃えて、広告宣伝を行うなど多くの費用がかかります。
吸収分割の場合でも費用はかかるため注意しましょう。
吸収分割による登録免許税が発生します。
また、会社を分ける際には官報に広告を出さなければいけません。
広告を掲載してもらうための費用が発生します。
会社を分ける際の手続きでは書類作成や登記申請が必要です。
これらは専門家に任せるのが一般的であり報酬を払わなければいけません。
このように会社を分けるためには多くの費用がかかるのです。
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会社を分ける際に悩んだときは専門家に相談しよう
会社を分けることでリスクを分散できて、節税対策にもなり、メリットはたくさんあります。
ただし、リスクも存在しており、会社の分け方にはいろいろな方法がある点には注意してください。
わからない点については専門家に相談をして助言を得ることをおすすめします。
会社を分けることについて悩んだときは経営サポートプラスアルファにお任せください。
会社設立に関する専門家として総合的なサポートを行います。