毎年「社会保険料」が上がったというニュースを聞くことがあります。
少子化が進み、国の社会保険財政が悪化する中で、各種社会保険料の悪化もやむを得ないことかもしれません。
フリーランスの人も当然社会保険に加入する義務がありますが、何か適切な対応方法はあるのでしょうか?
何に加入しなければならないのでしょうか?
今回はフリーランスの方と社会保険の関係について解説していきます。
目次
社会保険とは?
社会保険は、病気やケガ、障害、老齢介護、退職や失業など、トラブルに見舞われたときに、社会的なセーフティーネットとして、国民全員が保険料を支出し、支え合う制度です。
働く人から集めたお金が原資になっていて税金とは区別されます。
支払い義務があるので、実質、税金のようなものですが、医療保険などと同じように、支払った保険料を積み立てて運用しています。
支払う人が減り、支出が増えれば、社会保険を維持するために保険料が上がります。
社会保険は大きく分けて以下の5つになります。
管轄 | ||
---|---|---|
健康保険 | 自治体健康保険組合 | 病気やけがで医療機関にかかった時に、1割~3割の自己負担で済む制度です。日本が世界に誇る(と言われている)「国民皆保険」がこれに該当します。 |
介護保険 | 自治体健康保険組合 | 少子高齢化の中で2000年からスタートした社会保険です。40歳以上になると、健康保険と一緒に納付します。老齢になった時に利用する介護サービスなどの負担を軽減するために保険料を納めます。 |
年金保険 | 日本年金機構 | 年金のことです。年々年金保険の積み立てが上がり、支給年齢も遅くなります。もともと、平均年齢70歳だった時代に、60歳定年で寿命まで安心して暮らせるように設計されていた制度で、そこから15歳前後寿命が延びた現在では、制度的に無理が生じています。 |
雇用保険 | ハローワーク | 失業保険です。会社を辞め転職活動をしているとき、一定の条件を満たすと、生活費の代わりに支給されます。またハローワークでの職業訓練の原資にもなります。職業訓練は無料で利用できるものも多いのはここから補填されるためです。 |
労災保険 | 労働基準監督署 | 仕事中にその仕事が原因でけがや病気になった場合、医療費や給付金が支給されます。 |
これらが広義の「社会保険」です。
狭義の社会保険として「健康保険」「介護保険」「年金保険」を挙げることもあります。
その場合、「雇用保険」と「労災保険」は「労働保険」と呼ばれます。
個人事業主、フリーランスが加入する社会保険
個人事業主、フリーランスの場合、社員を抱えることがあります。
今回は「フリーランス」のイメージに合致するよう「1人で自由な働き方を実践する個人事業主」を「フリーランス」と定義します。
会社のように社員を抱えず、あくまで自分1人でやっていく生き方です。
この「フリーランス」の場合、加入する社会保険は「健康保険」「介護保険」「年金保険」の3つです。
フリーランスは労働者ではなく経営者のカテゴリになるので、雇用保険や労災保険への加入義務は原則ありません。
つまり、フリーランスとしてうまくいかず転職活動をするのは自由ですが、その際に失業手当はもらえませんし、仕事でけがをしても公的制度として労災が受けられないことになります。
なお、フリーランスが加入する「健康保険」「介護保険」「年金保険」は
社会保険の種類 | フリーランスが支払う社会保険の対象 |
---|---|
健康保険 | 国民健康保険 |
介護保険 | 介護保険 |
年金保険 | 国民年金+(任意で国民年金基金、確定拠出型年金) |
になります。
フリーランス(自分1人で好きに働く)である場合、雇用保険と労災保険は支払いの義務はありません。
加入する社会保険を会社員の場合と比較
フリーランスの社会保険の方が、会社員(労働者)と比較して、加入して支払い義務のある社会保険が少ないから、支払額も少なくて済むからお得だ、と思われている方、それは大きな誤りです。
フリーランスの社会保険は「全額自己負担」!一方会社員は会社と折半(以上)
★フリーランスの社会保険:全額自己負担
★会社員の社会保険:本人と会社が折半(以上)
つまり、毎月50000円の社会保険の支払いがある場合、フリーランスは50000円全額自腹になるのですが、会社員は、会社が25000円支払ってくれるので、自己負担は25000円で済むのです。
この会社と本人の折半は「最低基準」であり、会社がそれ以上負担してもいいのです。
極端な話、社会保険(健康保険や年金)を全額会社が支払い、社員の社会保険負担が一切ない会社もあります。
額面より手取りが大きく減っているのは、税金よりも社会保険料の金額が年々増えていることが大きく(税額は所得に対して一定率、一方社会保険料は年々どんどん高くなる)、その負担がなくなる、減ると、同じ額面でも手取りが大きく増えて豊かになります。
フリーランスの場合、社会保険料が(もちろん税金も)、全額自己負担なので、よほど売上を伸ばさないと、会社員と同じ生活ができません。
フリーランス(個人事業主)は、会社員以上に所得を増やさないと同じ生活ができないというのは、社会保険料の負担率が大きく影響しています。
フリーランスの社会保険と会社員の社会保険を比較
フリーランスの社会保険と会社員の社会保険を比較してみましょう。
フリーランス | 会社員 | |
---|---|---|
健康保険 | 国民健康保険年収によって保険料が決まる全額自己負担 | 社会保険年収と加入している健保組合の財務状況等で保険料が決まる半額(以上)会社負担 |
介護保険 | 国民健康保険40歳以上が支払う | 社会保険40歳以上が支払う半額(以上)会社負担 |
年金保険 | 国民年金全額自己負担任意で、国民年金基金や確定拠出型年金(iDeCo)に加入 | 厚生年金半額(以上)会社負担 |
雇用保険 | 支払い義務なし | 支払い義務あり |
労災保険 | 原則支払い義務なし一部職域では加入義務あり | 支払い義務あり |
会社員は会社負担分があるため、経済的に助かりますが、経営者でもあるフリーランスの方は、社会保険料はすべて自己負担です。
確定申告の際、「社会保険料控除」はありますが、同じ所得の場合、
◆控除によって減税される金額<<<<社会保険料の会社負担分
なので、フリーランスの負担が大きくなります。
会社員の年金は「2階建て」。一方、フリーランスじゃ「1階建て」で「増築」しないとやっていけない?
会社負担分の有無に加えて、よく引き合いに出されるのが年金の金額です。
20歳になり加入する国民年金(フリーランスも加入)は、月額1万数千円なのですが、これは老後の最低限の最低限の保障になります。
おそらく、持ち家がある人がようやく最低限の暮らしができる程度です。
一方、会社員が加入する厚生年金はその何倍もの金額を会社(半額以上)負担含め支払っていきます。
デフォルトの状態で、会社員は年金の「2階」部分を支払っています。
フリーランスはそれがないので、老後の資金を十分得られません。
そのため、任意加入の「国民年金基金」か「確定拠出型年金(iDeCo)」への加入、あるいは、小規模企業共済の積み立てが必要になります。
もちろん、それらは全額自己負担になります。
したがって、フリーランスを安易に考えていると、老後の生活保障がなくなってしまいます。
また、フリーランスに定年はないので、70歳になっても今と同じ水準で稼げるならば別ですが、それができる人は本当に少ないです。
配偶者の扶養に入れば社会保険料の支払いを免除されるケースも
自分ですべて社会保険料を支払うので、フリーランスは非常に厳しいということがわかりました。
しかし、抜け道があります。
配偶者の方が会社員の場合、その人の扶養に入るという方法があります。
「主婦はパート収入を年間103万円以内にして夫の扶養に入る」と、よく言及される方法はフリーランスでも可能です。
扶養に入れれば、「社会保険」「介護保険」「年金保険」は配偶者&会社負担となり、自分で支払うことはなくなります。
なお、年金の場合、配偶者は厚生年金(2階建て)ですが、扶養に入る人は国民年金相当の1階建て部分しかもらえません(上の図の「3号被保険者」)。
配偶者よりももらえる年金額は大きく減りますので、支払い免除されている年金保険分をiDeCoや小規模企業共済で積み立てておくのが大切です。
なお、フリーランスで扶養に入る場合
◆売上-【最低限の経費】<130万円 かつ 配偶者の収入の半額以下
であれば社会保険関連の扶養に入ることができ、健康保険や年金保険の支払いがなくなります。
【最低限の経費】とは、フリーランスが確定申告をする際に計上する経費とは異なる可能性があり、配偶者の健保組合の案内を見てください。
【最低限の経費】は通常の経費よりも限定される傾向にあります。
売上が年間130万円未満であれば、経費関係なく、配偶者の扶養に入れます。
フリーランスが加入できる職域保険もある、国民健康保険などと比較しよう
フリーランスの方は、健康保険については「国民健康保険」へ加入することになると書きましたが、フリーランスを集めた「職域組合」が社会保険を設けていることがあります。
例えば、フリーランスのライターの方が加入できる「文芸美術国民健康保険組合」というところがあります。
もともと、映画関係者や作家、マンガ家、脚本家など「特別な人」たちの互助組合でしたが、WEBライターを中心にしたフリーライターも加入できるようになりました。
「日本デジタルライターズ協会」 への入会が必要ですが。実質会員の方(Facebookで募集しています)にお願いすれば入会できるようです。
特徴は、国民健康保険は年収に応じて保険料が決まりますが、この「文芸美術国民健康保険組合」の保険料は
- 組合員 1人月額 21,100円
(医療分 16,400円 後期高齢者支援金分 4,700円) - 家 族 1人月額 11,600円
(医療分 6,900円 後期高齢者支援金分 4,700円)
で一定です。
つまり、年収何億円も稼ぐマンガ家もこの健保組合ならば月額21000円の健康保険料しかかかりません。
これが国民健康保険ならばその数十倍は払うでしょう。
フリーランスで活躍していて、会社の負担分がない健康保険も、職域組合次第では大幅に社会保険料を削減できるかもしれません。
ぜひ、フリーランスの仕事に関係した職域健保組合がないか探してみてください。
労災保険は一部例外あり
最後に労災保険です。フリーランスの場合、労働者ではないので労災(労働災害)保険へは加入できませんが(フリーランスの仕事は「労働」ではないので)、一部仕事については、国の方で個人事業主、経営者向けの労災保険を設けています。
例えば、建設現場の「一人親方」は個人事業主であり、フリーランスです。
しかし、ケガをするリスクは他の職業の比ではなく、命に関わる事故や障害が残る事故に遭う可能性もあります。
生命保険、医療保険、傷害保険への加入は任意ではありますが、必要度は非常に高いです。
しかし、ケガのリスクが高い仕事をしている人は、特に傷害保険(ケガの保険)は加入できないこともあります。
ケガのリスクが高いフリーランスでも加入できる保険は保険料が非常に高くなるため、保険の総合窓口などで聞いてみるか、専門家のアドバイスを受けるといいでしょう。
そうしたこともあり、「一人親方労災保険組合」に加入しておきましょう。
通常労災保険は、雇用契約のある従業員(社員)向けで、独立した一人親方(個人事業主=フリーランス)は加入できません。
しかし、その仕事の特性上、ケガと隣り合わせの職業上、国の制度として、特例的に労災保険が設けられています。
通常の労災保険のようにケガの治療費無料、休業補償(1日4000円)、障害が残った場合の一時金、ご不幸があった場合の葬儀費用や遺族への年金支援もあります。
社員向けではなく、フリーランスのご自身向けに加入を検討してください(強制ではありません)。
一人親方や建設業以外のフリーランス向けの労災保険も徐々に整備されています。
「令和3年9月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります」|厚生労働省HP
- 1.芸能関係作業従事者
- 2.アニメーション制作作業従事者(声優は1のカテゴリ)
- 3.柔道整復師(整骨院)
- 4.原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物の運送の事業(ウーバーイーツなどの配達員)
労働者の労災保険加入は義務ですが、こちらの「特別加入」は任意です。
しかし、社会保険が薄いフリーランスにとってはありがたく、該当するフリーランスの方はぜひ加入を検討されてください。
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フリーランスの社会保険について相談は「経営サポートプラスアルファ」にお任せ
フリーランスになると、会社員と比べて社会保険の負担が大きくなります。
会社と折半にならない分、多く稼がなければならず、そのことが事業を行っていくうえで大きな重荷になります。
社会保険料の納付は義務であり、免除にならない状態で無視をすると、いざ自分が社会保険を受ける状態になった場合、受けられなくなります。
職域組合への加入や、配偶者の扶養になるなど、社会保険料を節約する方法はありますが、いまのみなさんにそれが適用できるのかわかりません。
そこで、社会保険に詳しい専門家(社会保険労務士)やコンサルタントに相談し、社会保険料の節約などができないか探ってみましょう。
社会保険料控除を利用すれば、節税にもつながります。
フリーランスとして事業を成功させるためには、上手に節税し、利用できる制度を見つけることが大切です。ただ、自治体や年金事務所から届く社会保険料を納めるのではなく、コスパがよくなる方法を見つけてみましょう。
「経営サポートプラスアルファ」はそのためのお手伝いをさせていただきます。社会保険や節税の詳しい専門をそろえていますので、ぜひご相談ください。
土日祝日夜間も対応します。また、遠隔地にお住まいの方は、LINEやZOOM、チャットワークなどでも対応できるのでご安心ください。
社会保険を通じて、フリーランスとしての働き方を考えてみましょう。